中堅・中小企業がSDGsを定量化する意味や活用方法
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

SDGsの取り組みを進める企業が増えている

今、SDGs(持続可能な開発目標)を事業戦略にとりこむ企業、SDGsに関連する新たな取り組みを進める企業が増加しています。この流れは中堅・中小企業にどのような影響を与えるのか、SDGsを事業に統合し定量化することにどのようなメリットがあるのかなどを解説します。

大企業で事業とSDGsの統合が進む

日本の大企業が一斉にSDGsと向き合いはじめた背景の一つに、2017年11月に実施された日本経団連の「企業行動憲章」改定があります。「Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成」を柱に実施された同改定や、ESG投資の広まりによる投資家から企業へのサステナビリティ対応要請の高まりなどにより、各社は経営戦略へのSDGs視点の反映や社会課題起点での事業の可能性を検討し、具体的な目標への落とし込みを実施しました。

さらに、富裕層やビジネスリーダー、社会課題への関心が高いミレニアル世代を中心に投資、消費、移住、就職などの判断にサステナビリティ視点を重視する人が増え、購買力のある彼らの価値観に合った商品・サービスの提供が新規マーケット開拓につながることも企業のSDGs推進に拍車をかけています。
その一方でトレンド化した“SDGs”というキーワードは世の中に溢れ、なんとなく環境に良さそうなパッケージやそれっぽいキャッチフレーズを謳った商品・サービスが散見されるようにもなり、消費者や生活者が雰囲気で判断せざるを得ない状況も生まれています。

中堅・中小企業がSDGsを定量化する意味や活用方法

中堅・中小企業が抱える悩み

中小企業は日本の産業の99.7%、従業員数の68.8%を占めています。SDGs達成には中小企業の力が欠かせないことは言うまでもありません。しかし大企業によるSDGsの取り組み状況と比べ、中堅・中小企業のSDGs浸透度はいまだ限定的です。

SDGsに取り組んでいない理由やSDGsに取り組む際に感じる課題を見てみると、

  • 取り組んでみたいが何をすればよいかわからない
  • 取り組みを行うための資金や人材が不足している
  • 取り組みについて相談できる場所や人がいない
  • 社外(親会社や取引先)からの要請がない
  • 取り組むメリットが見いだせない

などが挙げられています。すでに取り組みをはじめている企業では、

  • 自社の事業との関連、紐づけはできたものの、何をすればよいかわからない
  • 他社の取り組み状況や業界の中での自社の位置を知りたいがわからない
  • 長期視点なので当面の対費用効果を測ることも大事だが、それが難しい
  • トップや担当者の意識は変わったが、会社全体の理解がない
  • あるいは、逆にトップの理解がなかなか得られない
  • SDGsを推進していく人材がいない

などの課題を抱えています。

中堅・中小企業がSDGsを定量化する意味や活用方法

「SDGsの定量化」視点が中堅・中小企業の進化のカギになる

中堅・中小企業が抱えているSDGs取り組みへの課題のうち、資金面や相談者に関しては自治体や金融機関が支援窓口を用意しているので活用を検討するといいでしょう。「何をすれば良いかわからない」「社内の理解が得られない」といった課題に対しては先進企業の事例情報がたくさんあるので参考になります。

SDGsに取り組んでみたものの、企業価値の向上に活用できていない、前に進んでいる実感が得られない中堅・中小企業においては、「SDGsの定量化」という視点を持つことが次のステップへ進むカギとなります。

サステナビリティの成果を客観的に判断する指標により企業の非財務データの「見える化」が進めば、イメージだけに左右されずに真に「強くてやさしい企業」を消費者や生活者が見つけやすくなります。

社会価値や環境価値を生み出す企業が求められる時代が到来している今、中堅・中小企業の中の「強くてやさしい企業」に光を当て照らし出すためには、中堅・中小企業がSDGsやサステナビリティへの貢献度を定量化していくことが重要です。

中堅・中小企業がSDGsを定量化する意味や活用方法

定量化(見える化)で得られるメリットと活用例

SDGsへの貢献度を定量化(見える化)するには、まずSDGsの各指標と自社の活動に関する目標の対象範囲を特定した上で数値目標を設定します。たとえば事業活動で排出される温室効果ガス量やエネルギー・水使用量、女性管理職比率など計測する指標を決め、特定の時点(または特定の期間)のデータを定期的に収集することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 自社の取り組み状況が客観的に確認できる
  • 定点観測し、長期戦略の進捗と照合できる
  • 他社との比較検討ができる
  • 社内での情報共有がしやすくなる
  • 他部門への依頼や上長承認を得るための説得材料として活用できる
  • 自社サイトや報告書などで情報を追加することで、ステークホルダーへのESG情報開示が充実する

近年は持続可能なサプライチェーンを構築するため取引先を含むすべてのプロセスにおいて社会的責任を果たそうという動きも活発です。サステナブル調達の実現を図る既存の取引先からサステナビリティ情報の提出を求められ、それが取引継続の条件となる可能性もあり得ます。考えられうる取引先の要請に先回りして今のうちから準備しておく心構えも大切です。

さらにサステナビリティ関連の数値情報が自社の信頼感やブランドイメージアップに寄与したり、働きやすさやダイバーシティに関するデータが就活生や転職者を呼び込む際のアピール材料として活用できたりといった効果も期待できます。

他の中堅・中小企業がまだ着手できていない今だからこそ、定量化(見える化)したSDGs情報が差別化ポイントとなり、自社の持続可能性を高めることになるでしょう。

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サステナビリティ・トランスフォーメーションを促進する非財務ビッグデータ集団

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平瀬 錬司
平瀬 錬司
サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役 CEO

大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして携わる。これら領域において2社のバイアウト(事業売却)を経験。京都大学ESG研究会講師。

<会社情報>
サステナブル・ラボ株式会社
https://suslab.net/
設立:2019年1月
住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町2丁目6-2 日本ビル4階
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