グリーンコンシューマーとは?具体的な取り組みや事業者に与える影響を解説
(画像=LIGHTFIELDSTUDIOS/stock.adobe.com)

環境汚染や地球温暖化など環境をめぐる問題は年々深刻化している。そんな中で消費者が中心となって環境に配慮した消費活動を行う動き(グリーンコンシューマー活動)が拡大傾向だ。
そこで今回は、グリーンコンシューマーの概要や具体的な取り組み、企業の事業活動に与える影響などを詳しく解説する。

目次

  1. グリーンコンシューマーとは
    1. グリーンコンシューマーの意味
    2. グリーンコンシューマーの歴史
    3. LOHASとの違い
  2. グリーンコンシューマーの活動でもたらされる効果
    1. 温暖化の防止
    2. ゴミの削減
  3. グリーンコンシューマーの具体的な取り組み(10の原則)
    1. 1.必要なものを必要な分だけ購入する
    2. 2.長く使える商品を選ぶ
    3. 3.容器や包装がない商品、または再利用できるものを優先的に購入する
    4. 4.作るときや買うとき、捨てるときに、資源とエネルギー消費が少ない商品を選ぶ
    5. 5.化学物質による環境汚染や健康への影響が少ない商品を選ぶ
    6. 6.自然と生物多様性を損なわない商品を選ぶ
    7. 7.近くで生産または製造された商品を選ぶ
    8. 8.作る人への公正な分配が保証されている商品を選ぶ
    9. 9.リサイクルされたものやリサイクルシステムのある商品を選ぶ
    10. 10.環境問題に熱心に取り組み、環境に関する情報を公開しているメーカーやお店を選ぶ
  4. グリーンコンシューマーの活動が事業に与える影響
    1. 環境への配慮が欠けていると、売上の減少や賠償金の負担増加などのデメリットが生じやすい
    2. 環境に配慮することで、社会的信用力の向上につながる
  5. グリーンコンシューマーの活動によって支持される企業にしよう

グリーンコンシューマーとは

まずは、グリーンコンシューマーについて最低限知っておくべきことを整理しておく。

グリーンコンシューマーの意味

グリーンコンシューマーとは、環境を想起させる「Green(緑)」と消費者を意味する「Consumer(コンシューマー)」を掛け合わせた造語である。「環境に配慮した購入活動を行う消費者」といった意味で用いられるのが一般的だ。

環境省が公表している環境白書を参考にすると「環境への負荷が少ない製品・サービスを優先的に購入すること」が環境に配慮した購入活動と言える。

グリーンコンシューマーの歴史

グリーンコンシューマーという用語は、1988年9月にイギリスの作家が「グリーンコンシューマー・ガイド(The Greenconsumer Guide)」を出版したことがきっかけで広く認知されるようになった。「日常で購入する商品が使用後にどのような影響を環境に与えているか」などを紹介したこの書籍は、当時の人々の間で大人気となり第1版が30万部もの売れ行きとなった。

ヨーロッパはもちろん台湾や韓国などでも出版された結果、今やグリーンコンシューマーという考え方は世界中に広がっている。

LOHASとの違い

グリーンコンシューマーと近い考え方に「LOHAS」というものがある。LOHAS(ロハス)とは 「Lifestyles of Health and Sustainability」という用語の頭文字をとって作られた造語。

健康や環境、持続可能性を意識した生活スタイルという意味である。
一見すると似ている概念だがLOHASとグリーンコンシューマーは考え方が大きく違う。

LOHASは「環境に良い商品・サービスを積極的に消費する」という点を強調した考え方である。一方でグリーンコンシューマーは「本当に必要な商品・サービスだけを消費する」という考え方だ。
したがってLOHASと比べてグリーンコンシューマーの活動は「より環境を主体とした考え方」と言える。

グリーンコンシューマーの活動でもたらされる効果

グリーンコンシューマーの活動では「温暖化防止」と「ゴミ削減」という2つの効果が期待できる。この章では、それぞれの具体的な効果を詳しく見ていこう。

温暖化の防止

例えば省エネ性能が高いエアコンを購入するなどグリーンコンシューマー活動では「使用エネルギーに無駄が少ない商品の購入」を目指していく。日ごろから環境への負荷が小さい商品やサービスを購入するため、ダイレクトに温暖化の防止に貢献できる。

ゴミの削減

グリーンコンシューマーの消費活動においてもう一つ大きな特徴となるのが「捨てるものが少ない商品を選ぶ」という点だ。例えばチョコレートなどのお菓子ならば個別に一つずつ包装されているものではなく一つの袋に入っているものを購入することで、ゴミとして捨てる包装を減らせるだろう。

日ごろから捨てるものが少ない商品を選ぶことで捨てるゴミを削減し環境汚染などを防ぐ効果が期待できる。

グリーンコンシューマーの具体的な取り組み(10の原則)

グリーンコンシューマーの具体的な取り組みは、認定NPO法人環境市民が公表している「10の原則」という形で示されている。10の原則の内容は、それぞれ以下の通りだ。

1.必要なものを必要な分だけ購入する

地球上の資源には限りがあるため、一人ひとりの消費者は不必要なものを購入しないように努めなくてはならない。具体的には、積極的にレンタルのサービスを利用して購入を控えたり、あらかじめリストを作った上で食料品の買い物を行ったりするのが効果的だ。

2.長く使える商品を選ぶ

使い捨ての商品ばかり生産・消費していると各家庭が廃棄するゴミの量は増加し環境の悪化や資源の枯渇を招くおそれがある。そのような事態を防ぐためにもグリーンコンシューマーは長く使える商品を購入することが重要だ。

具体的には、流行に左右されずに耐久性に優れている商品を購入するのが効果的である。

3.容器や包装がない商品、または再利用できるものを優先的に購入する

ゴミを減らすには「容器や包装がない」「少ない商品」「再利用できるもの」などを優先的に購入することが効果的だ。例えば野菜を例にするといわゆるはだか売りされているものであれば容器や包装を捨てる事態を回避できる。

一方で飲料ならばビンに入っているものを購入すれば空いたビンを再利用することでゴミを削減できるだろう。

4.作るときや買うとき、捨てるときに、資源とエネルギー消費が少ない商品を選ぶ

商品を買う際には、製造や購入、捨てる場面などに少ないエネルギー消費で済むものを選ぶことが重要だ。例えば季節外れの時期にビニールハウスで作った野菜は、旬の時期に自然の中で栽培した野菜と比べてより多くのエネルギーが必要になると言われている。

そのためエネルギー消費の観点から見ると旬の野菜を購入したほうがより環境に優しい消費と言えるだろう。

5.化学物質による環境汚染や健康への影響が少ない商品を選ぶ

商品が作られてからゴミになるまでのプロセスでは、農薬や食品添加物、排気ガスといった有害な化学物質が使用または発生している。有害な化学物質は、深刻な環境汚染や健康被害の原因となりかねない。

そのためなるべく化学物質が使用・発生していない商品を購入し環境や健康への悪影響を軽減することが大切である。

6.自然と生物多様性を損なわない商品を選ぶ

グリーンコンシューマー活動では、自然や生物の多様性を損なわない商品を選ぶことも大切だ。例えば商品を作る際に汚水を川に流したり森林を伐採したりすると環境の汚染や生態系の崩壊につながりかねない。

こうした事態を防ぐには、なるべく自然や生物に悪い影響を与えずに生産・廃棄される商品を選ぶべきである。

例えばサステイナブルな森林の活用および保護を目指す「FSC森林認証」というラベルが付いた商品の購入が効果的だ。

7.近くで生産または製造された商品を選ぶ

自身が住んでいる地域から遠い場所で作られた商品は、輸送の過程で多大なエネルギーを消費すると同時に環境汚染につながる排気ガスを排出している。そのためグリーンコンシューマーを目指すならば極力近くで生産または製造された商品を選ぶことが重要だ。

近くで生産された商品を購入すれば環境の保護につながるだけでなく地域の活性化にも貢献できるだろう。

8.作る人への公正な分配が保証されている商品を選ぶ

商品が発展途上国で作られている場合、労働に対して適切な対価が支払われていない場合がある。そこでグリーンコンシューマー活動の一環として作る人たちに売上が公正に分配される商品を選ぶ活動が広がっている。

9.リサイクルされたものやリサイクルシステムのある商品を選ぶ

ここまで紹介したようにグリーンコンシューマー活動では「エネルギーの削減」や「環境の保護」が重視されている。エネルギー削減や環境保護の実現に向けては「リサイクルされたもの」「リサイクルシステムがある商品」を選ぶことも効果的だ。

具体的には、リサイクルコットンや再生紙などがリサイクル商品として有名である。

10.環境問題に熱心に取り組み、環境に関する情報を公開しているメーカーやお店を選ぶ

どれだけ熱心にグリーンコンシューマー活動を行っても企業がエコな事業活動を推進しないと抜本的な問題解決にはつながらない。したがって日々の購入活動を重視すると同時に環境問題に熱心に取り組んでいるメーカーや店舗を積極的に支持する姿勢を持つことも大切だ。

主体的に環境に配慮した事業を行う会社を選べば社会全体で環境に配慮した動きが加速していくだろう。

グリーンコンシューマーの活動が事業に与える影響

企業の経営者は、グリーンコンシューマーの活動が長期的にどのような影響を及ぼすかを知っておかなくてはならない。結論を言うと「環境への配慮ができているか」によって生じる影響は大きく変わってくる。

環境への配慮の有無でどのように影響が変わってくるかを踏まえて具体的なアクションにつなげていただきたい。

環境への配慮が欠けていると、売上の減少や賠償金の負担増加などのデメリットが生じやすい

環境への配慮が欠けている企業は、グリーンコンシューマーの批判や抗議を招き、売り上げの減少や賠償金の請求といった負担が生じるリスクが高い。事業の続行が困難となるという最悪のケースも想定されるため、事業者は環境への配慮を継続的に行う必要がある。

環境に配慮することで、社会的信用力の向上につながる

一方で環境に対して配慮を示している企業は、幅広い消費者から支持され社会的な信用力の向上につながることが期待できるだろう。例えばオーストラリアにある「good on you」というサービスでは「Planet(地球)」「People(人)」「Animals(動物)」という3つの指標で環境や社会への配慮度合いを評価する取り組みが行われている。

こうした動きは年々広がりを見せているため、信用力を高めたい企業は環境への配慮を強化することが必要だ。

グリーンコンシューマーの活動によって支持される企業にしよう

グリーンコンシューマーは、環境に配慮した消費活動を行うことで自然や生態系を守ろうとする取り組み、またはそれを行う消費者を意味する。グリーンコンシューマーの活動には、環境への配慮を企業にも求める意味合いもある。
したがって消費者から長きにわたって支持されるには、環境に配慮した事業活動に取り組む必要があるだろう。

文・鈴木 裕太(中小企業診断士)

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