日清フーズ「青の洞窟 牛肉と赤ワイン仕立てのボロネーゼ」
(画像=日清フーズ「青の洞窟 牛肉と赤ワイン仕立てのボロネーゼ」)

日清フーズの高付加価値ブランド「青の洞窟」。2021年で誕生から26年目を迎える。商品は常温と冷凍で様々な商品を投入し、ブランド名を冠したイベントも好評を得ている。利用者の多くは30〜40代だが、イベントなどを通じて若年層への広がりにも手ごたえを感じているようだ。このブランドはどのようにして誕生し、どのような変遷をたどったのか。

〈「青の洞窟」誕生の由来〉
「青の洞窟」はどのようなブランドなのか。日清フーズのプロダクトマネジメント統括部第三部ディレクショングループ主査の福井聡氏は「ブランドコミニュケーションでは、先進的で進化を続けている存在」と話す。実験的な取り組みも多く、他のブランドに成功事例を活用しているためだ。そんなブランドはどのように誕生したのか。

「青の洞窟」は、1995年に「グルメのためのパスタ&パスタソース」をテーマに誕生した。発売の背景には1980年代のイタリアンブームがある。福井氏は「ナポリタンやミートソースが多くを占める中で、ブームと共にカルボナーラやペペロンチーノも一般的に認知されるようになっていた。家庭でもイタリアンを楽しんで欲しいという意図で立ち上げたブランド」と語る。

高付加価値の商品群は「青の洞窟」以前から存在していた。しかし、時代背景もあり本格的な商品の需要は高まりを受けて、新ブランドの設立へと動く。

このブランドの名前に関して、福井氏は「洞窟は、全容を簡単にはつかめない奥深さの表現だった。強い登場感を持たせたるべく、地中海の深遠なブルーを表現する青をパッケージの色として選定した」とのこと。食品で当時少なかった青を基調にすることで、他の商品との違いを明確にしたかったという。この頃の食品のパッケージの多くは、赤や緑など食欲をそそるような色を使っていた。イメージを想起させるための調理写真も一般的だった。しかし、このブランドでは調理イメージを一切載せず、青を基調とし他の商品との差別化を図った。

当時の商品パッケージを見ると、普通ならば調理写真を載せるだろう場所に、洞窟をイメージした写真が使われている。

日清フーズ「青の洞窟」発売当時のパッケージ
(画像=日清フーズ「青の洞窟」発売当時のパッケージ)

こうして「青の洞窟」は、本場イタリアの味を表現したブランドとして誕生した。

最初に発売した商品は、「パスタ」「パスタソース」「オリーブオイル」の常温3種だった。その後、常温の「青の洞窟」は商品の拡大と共に認知も広がった。福井氏は「イタリアンは女性のイメージが強かったが、ブランドを通して男性の市場も開拓できた」と語る。

冷凍食品は2002年春に初めて投入された。今はないが、同年秋に冷凍ラザニアを、2003年秋に冷凍リゾットも発売している。しかし、冷凍パスタは常温のパスタより高価でトライアル利用は進まず、当時は苦戦した。

〈2010年に大幅刷新、2014年に初のイベント〉
ターニングポイントは、2010年の大幅リニューアルのときだ。発売から時間が経ち、ブランドの認知は広がっていたものの、独自性が薄れつつあった。よりイメージを明確にするために刷新に踏み切ったという。

ブランドテーマも変更し、「欲深い大人の濃厚イタリアン」と定めた。このテーマは現在も使われている。分かりやすいメッセージに変えたことで、「社内的にもイメージを共有しやすくなった」と福井氏は述べる。

刷新に伴い冷凍パスタも再登場している。「ブランド自体の認知が広がっていたため、今ならば購入していただけるのではと考えて、再登場に踏み切った」という。共働き世帯の増加など社会のニーズの変化や、簡便性、品質を求める声なども追い風となり、冷凍食品も徐々に認知を広げ始める。

2018年には青の洞窟の上位ブランド「GRAZIA(グラツィア)」シリーズを常温で投入した。冷凍食品は2019年冬に発売を開始している。

冷凍食品投入の背景を、福井氏は「とことんこだわったものを出したかった」と語る。「冷凍だからこそできる具材感を追求し、食材にはこだわった。製法も外食のシェフからアドバイスをもらいながら、時間をかけて今できる最高の商品を追い求めた」という。「ありがたいことに満足度は高く、リピート購入にもつながった」と胸をなでおろす。

もう一つの転機は、ブランド名を使ったイルミネーションイベントの開催だ。社内的にも潮目が変わった出来事だったという。

2014年に東京・中目黒で初のリアルイベント「Nakameguro 青の洞窟」を初めて実施した。ブランドのコアとなる客層は30〜40代。イベントはそれよりも若い人の参加が多かった。

その後イベントは2016年から場所を東京・渋谷に移して実施したほか、札幌や大阪、福岡でも開催し、多くの人が訪れた。2020年は新型コロナウイルスの影響でリアルイベントが中止となり、WEBでの配信イベントに協賛し、視聴回数は700万回に達した。福井氏は「イベントを始めたことで、ブランド認知が広がり、コアファンも増え、さらに魅力あるブランドになれた」との手ごたえも感じたという。

〈デジタルとの融合 ファン拡大へ〉
現在、ブランドで取り組むのは「デジタルとリアルの融合」だ。リアルは、イルミネーションイベントやキャンペーンなどに取り組む。デジタルはSNSやWEB広告などに力を注いでいる。タッチポイントを広げて、更なるファンの拡大を目指している。

商品面についても「パスタだけのブランドにしたいわけではない」と福井氏は話す。かつては、ラザニアやアクアパッツア用のソースなども投入している。「商品によっては今なら売れたかもしれない。しかし、やや発売時期が早すぎたものもあったのでは」と苦笑する。

ただ、こうした挑戦はブランド自体にファンがいるため、実験的に取り組みやすいという。成功事例は他のブランドでの活用も進めており、数あるブランドの中でも先進的な役割を担っているという。

今後の課題は、冷凍食品の更なる拡大だ。「冷凍の方が歴史は浅いものの伸びしろはある。常温の青の洞窟との同時購入のキャンペーンなどで訴求したい」と話す。

アナログな時代に生まれたブランドが、デジタル化の流れを取り入れて成長を続けている。福井氏は「飽きさせないような進化が常に必要。今ある商品をより高めて、パスタ以外も楽しんでもらえるようブランドを強くしたい」と意気込みを語った。

〈冷食日報2021年4月1日付〉