【第9回】会社を拡大していく中での中途入社社員への文化浸透のための方策は?

THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第9回目は「会社を拡大していく中での中途入社社員への文化浸透のための方策は?」という経営者のお悩みについてお答えします。

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【今回のご質問】
会社を拡大していく中で中途入社社員への文化浸透に苦戦しています。なにか特別な施策、もしくは採用の際に重視すべき部分や必ずする質問はありますか?

中小企業の成長のため中途採用はほぼ不可欠。では中途採用者に対し自社の企業文化をどう浸透させていくのか。難しいイシューですが、基本は極めてオーソドックスです。まず企業文化とは何かを理解した上で、自社にとってその中核となるべきは具体的にどういうものかを明確にしてから、制約を意識しながら現実的な対処法を考えるということです。

日沖 博道(パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長)
日沖 博道(パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長)
【略歴】アーサー・D・リトルでシニアマネジャー、日本ユニシスで統括パートナー、アビームコンサルティングでディレクターを務める。経営コンサルティングと事業会社経営(ベンチャー企業、合弁企業など)を交互に経験し独立、2012年より現職。
【学歴】一橋大学 経済学部卒、テキサス大学オースティン校 経営大学院修士(MBA)
【専門領域】事業戦略、マーケティング戦略、ビジネスモデル、BPRとBPM
【最新著】『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』
【パスファインダーズ社】少数精鋭の戦略コンサルティング会社として、新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供。
URL:https://www.pathfinders.co.jp/

企業文化というものを理解する

まず、企業文化とはどういうことかと改めて考えてみましょう。抽象的な概念なので色々な定義があり得ますが、端的に言えば「企業構成員の間で共有されている価値観(特に規範・信念など)、そしてそれらが反映される行動・思考様式のこと」を指します。要は、「何か問題や仕事テーマが発生したときに、その組織のメンバーは通常どういうスタンスでそれに取り組むのか」のパターンが企業文化だと言っていいでしょう。

その意味で企業文化というのはかなり幅広い要素を含み、しかも客観的には定義しづらい、非常に曖昧なものなのです。とはいえ、それぞれの会社の企業文化とか「カラー」とか言われるものは間違いなくあります。特に我々コンサルタントのように色々な会社に関わる職種の人間にはそれを感じる機会が少なくありません。同じ業界でありながら、会社Aは何でも慎重に事に当たる文化を持っているのに、会社Bはとりあえずやってみてから次にどうするか考えるという文化を持っている、なんてことはよくあります。

問題は、この企業文化というものは内部にいる人には(当たり前過ぎて)客観視できないのです。むしろ社外の人のほうがよく見えるものです。ちょうど自分の口臭は分からないけど、人の口臭には敏感になるようなものです。それでも他社の人から「お宅は××の傾向がありますね」と何度も指摘されると、それが自社の企業文化の一面だということには気づくものです。

でもそんなふうに外部からよく指摘されるようなものは一面に過ぎず、自社の企業文化のすべてではあり得ません。企業文化というものは多面的であると考えておくのが妥当でしょう。そして企業文化にはポジティブな面とネガティブな面の両方があることも(人間の性格と同様)、実感として理解できますよね。