俺の「ロッシーニ風ハンバーグ」
(画像=俺の「ロッシーニ風ハンバーグ」)

2020年4月に発令された緊急事態宣言で多くの飲食店は一時的な休業状態にあった。その中で、「俺のイタリアン」などを展開する俺の株式会社(東京都中央区)は、冷凍食品の提案を強めている。常務執行役員で社長室長兼経営企画本部新規事業開発部長の岩﨑菜乙美氏に聞いた。

――公式オンラインショップを2020年4月に立ち上げ、後に冷凍食品などメインメニューを大幅に拡充しました。きっかけは。

新型コロナウイルスが流行するはるか前の2016年に「俺のBakery(ベーカリー)」を立ち上げて「銀座の食パン〜香〜」の販売を開始しました。この商品は、加水率の高い商品だったため輸送に向いておらず、全国に向けて販売するためにと考えた結果、運搬にも耐えられる「クロワッサン食パン」を開発。2020年4月から自社EC(通販サイト)を作って販売を始めました。

冷凍食品は、緊急事態宣言でスタッフたちの働く時間が短くなる中で模索してきました。当社で運営の「俺のグランマーケット」というセレクトショップなどで惣菜を扱っており、惣菜業の免許を取得していました。そして2020年12月、ECを大幅に刷新し、セントラルキッチンで製造した冷凍食品の販売を開始しました。「ロッシーニ風ハンバーグ」を筆頭に、レストランだけでしか食べられなかった味を遠方に住む方でも食べられるようになり、評価を頂けました。

3月からはコースメニューの販売も開始しました。シェフたちの知恵を合わせて、開発は2週間ほどで行うことができました。どういった味が好まれるかという経験値が蓄積されていたことも大きいです。

――外食チェーンなどで冷凍商品の販売が広がっています。どのように考えますか。

これまで冷凍食品は、家庭のお弁当や夕飯で追加の一品になる商品などが多かったと感じます。ただ、レストランの味を届けるというのはここ1年で増えたと思います。もちろん、店舗に来ていただけることが最も嬉しいのですが、新型コロナウイルスの影響はいつまで続くのか、インフルエンザのように落ち着くかは全く分かりません。また、コロナウイルスの影響で、お客様も密接状態になることへの恐怖心もあり、客席数での売上の計算は難しい。デリバリーや冷凍食品などに注力するように多くの飲食店はなっていくのではないでしょうか。今できることは、いかにレストランの味を届け、会社をどう維持できるかだと思います。

――市場について、どのように見ていますか。

日常的には一般的な商品を使い、お祝い事のある時には付加価値のある商品を使うようになるなど、使い分けるようになるのではないでしょうか。冷凍食品はスーパーで販売のナショナルブランドや地方の名産品の取り寄せだけでない選択肢が増えました。日本は古くから贈り物の文化があり、当社の商品も出産祝いや記念日などのハレの日に選んでもらえました。

――商品で力を入れている点は。

冷凍食品で力を入れているのは、レストランの味にいかに近づけるかです。当社は創業から10年が経ちますが、変えてはいけないところもあります。当社商品の調理方法はレンジアップではなく、湯せんになっています。ソースとハンバーグを別の袋にするなど、ひと手間かかりますが、レストランの味を出すための最適な方法になっています。

――今後の取り組みをお聞かせください。

当社の店舗ではスペース的に難しいので、販売は自社ECとグランマーケットを中心に行っていきます。ブランドを壊さない範囲で広げられればと思います。また、店舗と連動したキャンペーンなどもできればと思います。冷凍食品は新しい柱となる事業に育てられればと思います。加えて、WEB広告やSNSの活用なども試行錯誤して取り組んでおり、効果を検証しながら進めていきます。名前は知っているがこれまで食べたことのない方にも、ぜひ召し上がっていただけたら嬉しいです。

〈冷食日報2021年3月24日付〉