オンキヨーの株価、1,620円が10円に!上場廃止の危機を乗り切れるのか
(画像=Ralf/stock.adobe.com)

東証JASDAQに上場している音響機器大手のオンキヨーホームエンターテイメントが、上場廃止の危機に陥っている。債務超過の状況となり、上場廃止の猶予期限が2021年3月31日に迫る。株価も一時期の100分の1にまで下落した。これからどうなってしまうのか。

債務超過によって上場廃止の危機

オンキヨーホームエンターテイメントは現在、経営再建中だ。同社では長年にわたって経営不振が続いており、その状況下で新型コロナウイルスの感染拡大により大きなダメージを受けたことで、2020年3月期において債務超過に陥った。

そのような中で、日本取引所グループは2020年9月、オンキヨー(※その後、2020年10月に「オンキヨーホームエンターテイメント」に社名を変更)が債務超過の状態であることを確認し、同社が上場廃止の猶予期間に入ったことを発表した。債務超過が解消させず、その道筋もつかないままでは、このまま上場廃止となってしまう可能性がある。

2021年3月期の決算状況は?

では、2020年3月期に続く今期2021年3月期の状況はどうなっているのか。

同社が2021年2月に発表した2021年3月期第3四半期の連結業績(2020年4~12月)によれば、売上高は前年同期比65.5%減の63億3,400万円、営業利益と経常利益、純利益は赤字のままで、それぞれ33億1,100万円、36億1,000万円、33億7,300万円となっている。

通期の業績予想については「資金調達のできるタイミングと金額が不透明であることに加え、一部の使用部品の供給納期についての確約がとれていないことから、現時点では仕入計画の不確実性が高く、連結業績予想の合理的な算出が困難」であるとし、「未定」としている。

そして肝心の財政状態だが、いまだ30億6,900万円の債務超過となっている。債務超過の金額は2020年3月末から2億8,600万円減ったものの、数字的に見ると債務超過の解消にはまだほど遠い状況である。

同社は、これまでに債務超過の解消に向けて資金を集めようとしたが、想定通りには資金調達が進んでいない状況だ。ただし、3月15日に新株発行を発表するなど、債務超過の解消に向けて今も必死に動いている。

株価はピーク時の100分の1以下に

オンキヨーホームエンターテイメントの株価は右肩下がりの状況が続いている。2017年6月に1,620円という最高値を出したときをピークに、2018年に500円台を割り、2020年には100円台も維持できなくなった。さらに2021年2月19日には株価が10円となり、ピーク時と比べると100分の1以下だ。

オンキヨーホームエンターテイメントは、かつてはオーディオ機器の名門企業として名を馳せた。レコードやCDが全盛だった時代、オンキヨーの音響機器は売れに売れた。しかし、スマートフォンが普及すると同社の音響機器の販売が低迷し始めた。人々がアンプやスピーカーを使わずに、スマートフォンから直接音楽を聴くようになったからだ。

そして、オンキヨーホームエンターテイメントは販売不振から抜け出せないまま、2014年3月期から赤字を計上し続け、取引先への支払いも滞るほど財務状況は厳しい状況となっている。そして、投資家もオンキヨーの株を手放し始め、同社の株価の下落に歯止めがかからない事態に陥ったわけだ。

事業成長に向けたオンキヨーの青写真は?

上場廃止を免れるためには、債務超過の状況を解消すればいい。もちろん、このこと自体も簡単ではないが、上場廃止を免れたからといって同社の赤字が解消されるわけではない。業績を回復させ、株価を再び上げるためには、事業を成功させるしか方法はない。

では同社は今後、事業を成長させるためにどのような青写真を描いているのだろうか。

2021年3月期第3四半期の決算資料によれば、「ホームAV事業」においては8K時代の映画やコンテンツを楽しむための新製品の投入、「ゲーミング事業」においてはe-Sports向けのヘッドセットやサウンドコントローラーなどの商品ラインナップを強化するとしている。

アニメ業界とのコラボも積極的に行っていく。これまでに人気アニメの「鬼滅の刃」や「エヴァンゲリオン」とのコラボに取り組んでいる。また「Sound & Science」をコンセプトに、振動とストレスの研究をビジネス化することにも力を入れていくという。

時代の移り変わりに合った商品で復活を

オンキヨーホームエンターテイメントにとって、この2021年3月は非常に重要な1ヵ月間となる。まずは、債務超過の解消が最優先事項だ。しかし前述の通り、それだけではV字復活は見込めない。消費者のニーズが変わっていく中、企業は展開する製品も柔軟に変化・進化させていくことが必要だ。同社が今後、時代の移り変わりに合った商品を展開し、復活を果たしていけるのか、注目が集まる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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