【第6回】スタートアップにとって人員強化のための採用タイミングは?
(画像=THE OWNER編集部)

THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第6回目は「シリーズA直前のスタートアップとしては人員強化のための採用はいつ頃に行うべきか」という経営者のお悩みについてお答えします。

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【今回のご質問】
シリーズA直前のスタートアップです。人員強化を目的として人事の採用はいつ頃に行うべきでしょうか?

スタートアップ最大の悩みは、資金と人材という2大リソースに関する制約。人員強化のための採用というのはこの先の成長に不可欠な手段であり、その両方の制約を睨みながらバランスをとって進めるべき重要なテーマです。まずは自社が今どういうステージにあり、そのために何をすべきなのか、から整理してみましょう。

日沖 博道(パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長)
日沖 博道(パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長)
【略歴】アーサー・D・リトルでシニアマネジャー、日本ユニシスで統括パートナー、アビームコンサルティングでディレクターを務める。経営コンサルティングと事業会社経営(ベンチャー企業、合弁企業など)を交互に経験し独立、2012年より現職。
【学歴】一橋大学 経済学部卒、テキサス大学オースティン校 経営大学院修士(MBA)
【専門領域】事業戦略、マーケティング戦略、ビジネスモデル、BPRとBPM
【最新著】『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』
【パスファインダーズ社】少数精鋭の戦略コンサルティング会社として、新規事業の開発・推進・見直しを中心としたコンサルティングを提供。
URL:https://www.pathfinders.co.jp/

現状ステータスと投資家の期待を確認する

質問者の業種はIT業界とのこと。もしかするとネット系サービスの企業かも知れませんし、ソフトウェア開発の会社かも知れませんし、半導体などのハードウェア系かも知れません。ただの「ベンチャー企業」ではなく「スタートアップ」と自称するからには、将来の目標は上場程度ではなく、急成長して特定業界での世界市場を狙う意気込みだと推察致します。

他の読者のために若干補足しますと、スタートアップにとっての「シリーズA」とは、成長段階ごとに出資金を募る「投資ラウンド」における3番目のステップです。エンジェル、シードと来て、シリーズAを経てその後シリーズB、C…と続いていきます。一般的には「シード(種)ステージ」に続く「アーリー(早期)ステージ」に位置していると考えられます。

一つ前のシードステージではα版プロトタイプしか出していなかったのに対し、このアーリーステージでは典型的に、アーリーアダプター向けに製品・サービスの初期プロダクト(α版、β版)をリリースして高評価を得ることが期待されます。そしてこの後の「ミドルステージ」におけるシリーズBの資金調達を得て、機能拡張したプロダクトによって一挙に市場認知と顧客層拡大を狙う、というのが望ましい成長シナリオです。

要はこのシリーズAというのは、市場に初めて打って出るための製品・サービスを完成させるため、そしてそのための体制を作り上げるために必要な資金を調達する、非常に重要なイベントです。

質問者の会社はそのシリーズA直前ということですから、シードステージで行うべき「プロトタイプによる製品(またはサービス)のコンセプト検証」は既に済み、既存投資家の納得を得られた状態にあるのだと考えられます。そして次のアーリーステージに向かおうとしている訳です。

事業計画における人員採用計画の立て方は?

こうしたステータスにおいて、人員強化を目的とした人事採用はいつ始めるべきか、というのが今回のご質問です。結論的に言えば、「シリーズAにて資金調達した後、事業計画に沿って」というのが基本原則です。

でも、もしかするとご質問の趣旨は「そのシリーズAに向けての事業計画を策定しようとしているのだけれど、その重要要素の一つとしていつ人事採用を始めることにすべきなのか、どういうロジックや手順でそのタイミングを決めるのかを知りたい」ということなのかも知れません。こうした場合、逆算で考えてみると大概は答が見えてきます。