会社経営を行う際に、財務諸表を見ることは多いだろう。経営上、それから財務分析を行うことで経営課題などを行うことも多い。ここでは、財務分析の意味や目的、関連する指標について解説する。
目次
財務分析とはなにか
財務分析とは、会社の財務諸表等の数値を元にして、各種指標などを算出して、会計上における経営状況を把握することだ。視点としては収益性、安全性、効率性などがある。
財務分析の目的3つ
ここでは財務分析を行う目的を3つ紹介する。
財務分析の目的1:自社の分析
財務分析を行う目的の一つとして挙げられるのが、自社の財務状態を分析することだ。分析の視点として主に時系列で見る視点がある。これは前期と今期の比較をして、その間の経営の変化を把握できる。
財務分析の目的2:他社との比較
財務分析で、自社と他社の経営状況を比較することもある。他社とは、特定の会社だけでなく同業他社の平均なども該当する。それにより自社の優劣を見つけ出し、経営の指針とすることができる。
財務分析の目的3:融資判断の目安のため
財務分析は、銀行などが融資の審査を行う際に、会社の状況確認のために使われることがある。この分析結果をもって、融資の可否の判断材料とすることが多い。ただし、財務分析の結果は判断の材料の一つに過ぎず、その他の要素によっても左右される。
財務分析に活用する指標3つ
財務分析の指標にはさまざまな種類があり、目的によって使う指標も異なる。ここでは、よく知られる「収益性」「安全性」「効率性」の3つについて説明する。
財務分析の指標1:収益性
収益性は、その会社が利益を効率的に稼ぐかを示す指標である。主な指標には、「売上高利益率」と「総資産利益率」がある。
・売上高利益率
売上高利益率は、売上に対する利益の割合を表す数値で、売上に対して効率的に稼ぐかを見る数値である。利益は当期純利益や経常利益などが使われる。その計算方法は以下の通りだ。
売上高利益率=利益÷売上高×100(%)
注意点は、業種間で差が出ることだ。
・総資産利益率
総資産利益率は、総資産に対する利益の割合を表す数値であり、資産からみた収益の効率性を見る。計算方法は、以下の通りだ。
総資産利益率=利益÷総資産(期末か期中平均)×100(%)
同業種であっても注意点は、業種間の差もあるが、資産の内容でも差が出やすいので見極める必要がある。
財務分析の指標2:安全性
安全性は、その会社の借入金などの支払能力を示す指標である。借入金等の負債金額との比較を見ることが中心となる。安全性の指標には、主に「流動比率」「固定比率」「自己資本比率」がある。
・流動比率
流動比率は、流動資産と流動負債の比率を表す指標であり、計算方法は、以下のとおりだ。
流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)
流動比率は、流動負債の返済が流動資産のみで可能かを測る指標である。一般的には、100%を下回っていると、それができないため危険とされる。
ただし、流動資産、流動負債ともに指標の趣旨から見て、滞留在庫など計算にいれるのに不適切なものもあるため内容を精査する必要がある
・固定比率
固定比率は、固定資産と自己資本との比率を表す指標で計算方法は、以下のとおりである。
固定比率=固定資産÷自己資本×100(%)
これは固定資産を全部自己資本で賄えるかの視点で利用する指標だ。
・自己資本比率
自己資本比率は、資産のうちどれだけ自己資本で賄われているかを示す指標であり、計算方法は以下のとおりである。
自己資本比率=自己資本÷総資産×100(%)
自己資本比率が低いほど、借入金の依存が高い可能性が高いが会社の財政状態に問題があるとは限らず、その他の指標を参考にして判断する。
財務分析の指標3:効率性
効率性は会社が保有している資産を効率的に使っているかを示す指標である。資産を有効に利用して初めて利益を生み出すことができるとの視点から見ている。主な効率性を測る指標としては、回転率がある。棚卸資産や売上債権に対して、どれだけ効率的に使われているかを示す数値である。
・商品回転率
商品回転率はどれだけ棚卸資産の出入りが多いかを示す数値で、計算方法は、以下のとおりだ。
商品回転率=売上高÷棚卸資産(回)
商品回転率が大きいほど、棚卸資産を効率よく動かしているといえる。なお、場合により、売上原価を使うこともある。
なお、この逆数で商品回転期間がある。これは期間の観点から見るものだ。
分析を行ってはじめて役に立つ
本稿では、財務分析の必要性やその目的、どのような視点で財務分析を行うのか、また、財務分析で使用する指標についても説明した。
財務分析を行うことによって、自社の経営に資することができる。本稿が、自社の財務分析による経営業態の把握に活用できれば幸いである。
文・中川崇(公認会計士・税理士)