2030年には認知症により200兆円規模の金融資産が凍結するといわれています。
その対策として有効なのが「民事信託」です。

そこで、これまで300件超の民事信託に対応してきた
司法書士法人トリニティグループの磨和寛氏に、
最新のマーケット動向と顧客へ提案する際のポイントを聞きました。

案件数300件超のスペシャリストに聞く! 民事信託の最新トレンド
(画像=プロパートナーONLINE)

中小企業のBCPは民事信託を入り口に

ブームが始まり、5年ほど経ちました。
マーケットには、どのような変化があると感じていますか?

民事信託が普及し始めた当初は、
相続税節税や遺留分請求を消滅させるスキームなど、
突飛なスキームが目立ちましたが、

2018年9月に家族信託の一部無効判決が出たことなどを要因に、
「安全性のある民事信託」が求められるフェーズに移行したと感じます。

また、当初からあるニーズですが、
認知症対策としての信託のニーズは普遍で、
直近でも熱を帯びているように感じます。

セミナーなどでも「認知症対策」と打ち出すと非常に反響があります。
民事信託はさまざまなスキームがある分、
いろいろな打ち出しができますが、入り口を難しくしないことが重要です。
その点認知症は誰にでも起こりうることで、想像しやすいのです。

この数カ月はコロナ禍で不安感が高まったこともあり、問い合わせは増えています。
当社はオンライン面談でも対応しているため全国から相談が来ていて、
6〜7月は過去最高の問い合わせ数でした。
特に中小企業の経営者からの相談が増えています。


経営者の場合、どのような切り口で提案するのでしょうか?

経営者に関しても認知症対策です。
特に、BCP(事業継続計画)の入り口として、
まずは「経営者自身の認知症対策」を提案しています。

中小企業はBCPを策定しているところは少ないのですが、
コロナ禍を機に必要性を感じている経営者は多くいます。
トップのマンパワーが大きい分、
経営者に万が一のことがあったときのダメージも大きいですから。

そこで、民事信託と保険を組み合わせたBCPを提案しています。
まずは、経営者個人のリスク対策としての民事信託。
その後、IPOやM&Aの準備、事業承継での出口戦略へとつなげます。

これから民事信託に取り組む士業事務所であれば、
まずは顧問先の経営者、特に 歳以上の経営者に案内するのがおすすめです。

また、2019年頃から認知症保険の販売が始まったこともあり、
保険の営業マンから「民事信託とセットで提案したい」という声も増えています。
民事信託と保険は万が一の「対策」という意味で、とても親和性が高いと思います。

インフラの整った今こそ参入のチャンス

民事信託はさらに広がっていくと思いますが、
士業事務所が取り組むうえで気をつけなければいけないことはありますか?

受託者が信託の目的に従い、
受益者のために財産管理をすることが民事信託の目的です。

ですから当社では、
民事信託本来の目的から外れるもの、
例えば相続税の節税を目的とした受益権の複層化、
差押回避目的や遺留分の回避などを目的にした信託はお受けしません。

これらは税務署や裁判所に否認され、
クライアントに損害を与えてしまうからです。

こういった点からも、
法務と税務どちらの領域も理解したうえで提案することが重要です。
だからこそ、専門分野を持ち、
倫理観の高い士業が積極的にサポートするべきだと考えています。

民事信託は提案型のサービスです。
市場での認知度が上がり、ニーズはありますから、
きちんと提案できるプレーヤーがいれば案件を増やすことはできます。
地方でまだ民事信託案件が少ないのは、
ニーズがないからではなく、提案できる人が少ないからです。

また、顧客と継続的な関係を築けることで、
不動産の売却など関連した提案も出てきます。
こういったクリエイティブな提案を楽しめることも重要だと思います。

スキームも増え、委託者が亡くなり
相続が発生した事例も出始め、行政の対応も見えてきました。
ある程度インフラが整った今こそ、参入のチャンスといえます。

そのためには、実務を体系的に学ぶ場を用意することも必要です。
民事信託を事務所の強みの一つにできれば、
さらにお客様のニーズに応えられるようになるはずです。

※月刊プロパートナー2020年10月号より抜粋


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プロフィール
磨 和寛氏
磨 和寛氏
司法書士法人トリニティグループ 代表社員 司法書士
2009年に前身となる司法書士事務所を設立。2012年法人化。民事信託の相談件数は業界トップクラスの300件超。
一般向け、士業向けなど自社でセミナーを開催し、他士業との連携を図りながら民事信託の普及に努めている。
プロパートナー
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