バイデン政権誕生で中国はますます苦境に? バイデン政権「中国とは熾烈な競争になる」
(画像=peterschreiber-media/stock.adobe.com)

米国の政権交代により、対中関係緩和への期待感が高まったのも束の間、バイデン政権は同盟国の結束のもと、さらに強硬な立場をとる構えだ。発足わずか2週間という短期間で、米国の立ち位置と中国へのスタンスを明確にし、中国側が望んでいる両国間の関係改善には、まだまだ解決すべき課題が山積みであることを示した。両国のこれまでの言動から、波瀾万丈の米中関係の見通しについて考察する。

米、同盟国の関係強化に注力 「中国は最も手強い競争相手」

中国にとって、同盟国に協力を求める新政権の対中姿勢は、単独で中国を封じ込めようとしたトランプ政策より、遙かに大きな脅威となる可能性を秘めている。バイデン大統領は2021年2月7日に放映されたCBS のTVインタビューで、「中国とは熾烈な競争になる」と強硬な姿勢を維持する意向を示す一方、「トランプ前政権とは一線を画し、国際ルールに従って中国と向き合う」考えを示した。

実際、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、日本、韓国、オーストラリア、NATO事務総長の指導者と電話対談を行うなど、同盟国の関係強化に精力的に取り組んでいる。さらにロシアのプーチン大統領にも、働きかけているという。

オバマ政権の副大統領時代から、習近平国家主席と面識があるバイデン大統領は、「習近平国家主席のことはよく知っている」「非常に聡明かつ屈強な人物で、民主的な見解はもち合わせていない」と指摘した。2月4日の外交演説では、中国を「米国にとって最も手強い競争相手」とし、「中国の経済的虐待に立ち向かう」と対抗姿勢を鮮明にした。

米議会内で高まる中国の権威主義体制への批判

バイデン大統領の言葉が単なる虚勢でないことは、具体的な活動を見ると明らかだ。米議会内では、民主党、共和党を問わず、習近平政権の権威主義体制を非難する声が高まっている。

直近では、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が1月29日、「中国による香港や新疆ウイグル自治区のウイグル人イスラム教徒に対する弾圧、台湾への脅威に対し、米国は制裁を課す準備をする必要がある」と述べた。米国同様、中国による「貿易や技術の乱用」に懸念を示している欧州と協力関係を結び、中国への圧力を強化する方針だ。

また、トランプ政権下で発足した対中国圧迫協議体「Quad(クアッド)」を、さらに発展させる意向も示した。Quadは2019年に発足した、米国・日本・オーストラリア・インドが参加する集団安保協議体である。

1月20日に開催された大統領就任式には、初の台湾代表としてシャオ・ビキニ駐米大使を招待した。その3日後には中国に対し、「台湾への軍事的・外交的・経済的圧力を停止し、民主的に選出された台湾の代表者と有意義な対話を行うよう促す」との声明を、国務省が発表した。さらにアントニー・ブリンケン国務長官は、1月19日の上院聴聞会で、「トランプ前大統領による中国への強硬なアプローチには、多数の領域で賛同しかねたが、基本的な方向性は正しかった」と述べた。

JPモルガン「貿易面では競争的だが対立的にはならない」

バイデン政権の強硬なアプローチが、両国の貿易摩擦やビジネスに与える影響も気になるところだ。一部の専門家は「バイデン政権にとって、貿易問題の解決は優先課題ではない」と見なしているが、米国は1月下旬以降、新疆ウイグル自治区での拘留者や刑務労働者などによる強制労働を理由に、同自治区からの綿とトマトの輸入を留保している。しかし、この措置は人権問題に対する制裁であり、トランプ政権下で報復合戦となった制裁関税や貿易摩擦には発展しないとの見方もある。

JPモルガン・チェースのグローバルリサーチ部門のジョイス・チャン理事兼会長は、「バイデン政権は対中貿易より、人権や民主主義の弾圧問題に焦点を当てる可能性が高い」とし、「既存の中国への課税が、今すぐに撤廃される可能性は極めて低いが、関税が引き上げられることもない」「貿易面では競争的ではあるが対立的な関係にはならない」と予想している。

中国「再び健全で安定した軌道に戻ることを望む」

現在のところ、中国側はバイデン政権の誕生を機に、両国の関係が「再び健全で安定した軌道に戻る」ことを望んでいる。中国外務省の華春瑩報道局長は、1月22日の記者会見でバイデン大統領の就任に祝意を示し、トランプ政権下で著しく悪化した両国の関係の改善を呼びかけた。

また、客観的かつ合理的なやり方をもって、両国民の幸福と世界が直面している問題に共に取り組むために、「建設的な対中政策をとってもらいたい」とも述べた。しかし、それはあくまで両国が協調し合う姿勢を見せるという前提であり、バイデン政権の対中政策の出方次第では対立が悪化する可能性については否定しなかった。

米国側は地球温暖化対策など両国が関心のある分野については、中国と協調して取り組む意向だが、中国側はこれを「新疆ウイグル自治区などに対する、米国の圧力を跳ね返す切り札にする」との指摘もある。

依然として緊迫した米中関係が継続すると予想される中、世界の2大経済大国の対立が、他国の対外交政策などに及ぼす影響も懸念される。バイデン政権が具体的にどのような対応策を打ち出していくのか、今後の動向に注視したい。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

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