スマホゲーム市場,2018年
(写真=Chayantorn Tongmorn/Shutterstock.com)

2017年度のスマホゲーム国内市場規模は前年度比8.9%増の1兆290億円と拡大

~既存タイトルのほか、複数の新規タイトルが市場を押し上げる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内スマホゲーム市場を調査し、市場における最新動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

スマホゲーム国内市場規模推移

スマホゲーム国内市場規模推移

1.市場概況

2017年度のスマホゲーム国内市場規模(メーカー売上金額ベース)は、前年度比8.9%増の1兆290億円で市場拡大が続く見通しとなった。複数の有力IP(知的財産)を搭載したタイトルが常にアプリストアのランキングで上位に位置し、長期にわたり人気を持続させているほか、有力国内ゲームメーカーによる継続した新規タイトルの投入や海外ゲームメーカーの本格的な参入などによって市場が伸長している。既存有力タイトルの収益が高止まり傾向にあるなかで、「ファイヤーエムブレムヒーローズ」を筆頭に「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」、「A3!(エースリー)」、「放置少女〜百花繚乱の萌姫たち〜」など複数の新規タイトルも健闘したため、市場規模を全体的に押し上げる結果となった。

その一方で、スマホゲーム市場はここ数年で市場全体が急速に成熟し始めており、これまで以上に開発期間とコストを掛けて新作タイトルをリリースしても、十分な人気を獲得できないケースが増えている。現状ではリリースから数年経過している既存タイトルへの人気が継続する傾向にあるため、有力なIPを使用した新規タイトルであっても人気を獲得することは難しく、ヒット創出の難易度が高まっている。

2.注目トピック

新たなゲームシステムの導入やeスポーツに注目集まる

最近では、従来の課金システムを搭載しないゲームの大ヒットが続いている。「ポケモンGO」ではこれまで市場に登場してこなかったAR(拡張現実)機能と位置情報を組み合わせた斬新なゲームシステムで、老若男女問わずこれまであまりスマホゲームに馴染みのなかった層を中心に社会現象となるほどの人気を獲得した。一方、中国メーカーが2017年に国内へ投入したバトルロイヤルゲーム「荒野行動」では、数十人から100人程度でゲームフィールドをリアルタイムで共有し、時には1人で、時にはチームを組んで相手を倒しながら最後の1人まで生き残りを賭けた戦いを行うというゲームシステムで、仲間とボイスチャットなどでコミュニケーションを取りながら目的を共有して遊べることが受け、市場拡大に貢献した。

また、2018年に入り、家庭用ゲームやPCオンラインゲームのほか、スマホゲームでもeスポーツに参入するタイトルが出始め、注目を集めた。「パズル&ドラゴンズ」や「モンスターストライク」の2大ゲームを中心にプロプレイヤーによる賞金制イベントが実施されるなど、プロスポーツを目指す取り組みも行われるなか、eスポーツへの登用や認知向上によってスマホゲームユーザーのさらなる拡大が期待されている。

3.将来展望

2018年度のスマホゲーム国内市場規模(メーカー売上金額ベース)は、前年度比で3.0%増の1兆600億円を予測する。2016年から本格的な市場参入を果たした家庭用ゲーム大手の任天堂による積極的な有力タイトルの展開や、これまでの日本国内での実績から中国や韓国などの海外メーカーによるクオリティの高いタイトルの継続した投入が期待されるため、2018年度も安定的な成長を予測する。
また、国内メーカーでは有力IPを使用した協業での取り組みでリスクを分散しながらヒットタイトル創出を目指す動きが活発化し、今後も多くのIPタイトルが市場に投入され、安定的な人気を獲得するタイトルが増えていくと考える。海外メーカーによる国内市場への本格参入もさらに進むことから、市場環境は厳しさを増していくが、良質なタイトルの継続した投入やスマートフォンのハードウェアの性能の向上とともにネットワーク環境がより整備されることもあり、国内市場全体では緩やかに拡大していくと考える。