UPS市場,2019年
(写真=Yentafern/Shutterstock.com)

既存需要は堅調ながら、不安材料もあるUPS市場

株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、UPS(Uninterruptible Power Supply :無停電電源装置)国内市場を調査し、製品セグメント別動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

UPS国内市場規模推移と予測

UPS国内市場規模推移と予測

1.市場概況

2017年度のUPS国内市場規模はメーカー出荷金額ベースで、780億2,700万円と前年度比で1.9%減と縮小するものの、2018年度は同1.7%増の793億7,700万円と僅かに拡大する見込みである。

なかでも100kVA以上帯の大容量機について、2017年度はデータセンター向け更新需要が一段落するものの、データセンターの新設計画が相次いでいることから新規需要が見込まれる。2018年度はデータセンター向け需要が引き続き好調で、出荷量の増加と大容量機への移行が進むことから市場は拡大するものと考える。

2.注目トピック

大容量機の付加価値は高効率と長寿命

UPSの製品性能の一つにその電力損失の少なさ(変換効率の良さ)があり、とくに大容量のUPS になるほど大きなコスト差となる。
100kVA以上帯では、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に代わり、低損失が望めるSiC(シリコンカーバイド)を採用することで高効率化を図った製品がある。一方でコスト高になることから、コストと効率(製品性能)のバランスをどう両立させるのかが課題である。

また、特に100kVA以上の大容量機では、周辺盤や設置工事など付帯コストもかかることから、初期費用を抑えたいユーザー企業にとっては製品価格を少しでも抑制したいニーズは強いものがある。こうしたなか、部品の耐用年数を長寿命化し、メンテナンスコスト削減を図った製品も増えている。

3.将来展望

UPS国内市場規模は2021年度にはメーカー出荷金額ベースで、776億円と縮小傾向を予測する。100kVA以上帯の大容量機では、容量ベースで横ばいとなることから、金額ベースでの縮小は避けられるが、他の容量帯の縮小を補うほどの効果はなく、全体では縮小するものとみる。

UPS国内市場は既存需要は更新需要も含めて安定しているが、長期的にみると、成長につながる新規用途が見通せないことが課題である。キャッシュレス化の推進やIoT普及の進むなか、今後の新規需要が期待される。