採用面接は、入社希望者と対話しながら会社に必要な人材を見抜く場である。企業が採用面接で成果をだすには、選考基準の設定や質問事項の検討などの事前準備が不可欠だ。今回は、採用面接における質問事例や禁止事項(タブー)などについて説明する。
目次
採用面接の心得
新卒採用や中途採用に向けた採用面接は選考で最も重要であり、具体的な目的は下記の通りだ。
・履歴書や職務経歴書、学科試験の結果などを踏まえた総合評価を行う
・受験者が求める就労条件と会社が提示する条件のすり合わせを行う
・受験者の能力や会社に対する適正を判断する
つまり採用面接は、会社と応募者の相性を確認する場であると、面接官は心得ておくべきだ。
採用面接では、受験者本人が持つ適正や能力を公正に評価しなければならず、本人に直接関係のない事由を採否決定に用いてはならない。
そのために企業は選考基準を定めて、受験者が普段の自分を表現できる質問を準備する。
また採用面接では、法律に抵触するような質問は禁じられている。会社の信頼を損ないかねないので、事前に把握しておかなければならない。
採用面接の質問事例5つ
採用面接では、受験者の適性を限られた時間で判断する。そのため、自社に必要な人材を見抜けるよう、事前に質問を準備しておく。
早速、採用面接において最低限確認しておくべき質問事例を紹介する。
質問事例1.会社と応募者の相性
採用面接で会社と応募者の相性を確認する質問事例は下記の通りだ。
・当社への就職を志望した理由は何か?
・当社の提供するサービスの中で特に気になるものは何か?また、その理由は?
・当社の理念について、どのように感じたか?
採用面接後に自社で活躍してもらうには、業務適性だけに目を奪われてはならない。会社の風土や文化はもちろん、会社側のありたい姿を示す理念に対しての共感性も重要である。
志望理由を確認すると同時に、会社の雰囲気に対する順応性まで確認しよう。例えば、会社のサービスや製品すら把握していない応募者は、自社での就労意欲が低いと判断できる。
質問事例2.職場でのコミュニケーション力
採用面接で職場におけるコミュニケーション力を確認する質問事例は下記の通りだ。
・あなたが働くうえで重要とするポリシーは何か?
・あなたの長所は何か?また、それを表す具体的な出来事は?
・職場でのチームワークに必要なものは何か?
職場におけるコミュニケーションでは、関係者の意図を理解するだけでなく、自分の意見を相手に理解してもらわなければならない。
同僚との協調性はもちろん、他社を巻き込むリーダーシップも求められる。採用面接では、意思疎通を速やかに行える対話力を評価するために、自分の考え方を人に伝える能力を確認することが重要だ。
質問事例3.業務遂行能力の有無
採用面接で業務遂行能力を確認する質問事例は下記の通りだ。
・前職で苦労して達成した事柄はあるか?その課題をどのようにして乗り越えたか?
・折衝の経験はあるか?折衝の際に心がけていることは?
採用面接において、業務遂行能力の評価は特に重要だ。業務遂行に必要なスキルや経験などを確認しなければならない。
その際、単純な職務経歴や資格などの確認だけではなく、応募者に経験を語ってもらう。
具体的には、学校や職場で直面した困難な課題や失敗体験、その解決方法などについてだ。経験からは嘘を語りづらいため、応募者の本質を見抜くのにも効果的だろう。
質問事例4.ストレス耐性の度合い
採用面接でストレス耐性を確認する質問事例は下記の通りだ。
・自分がストレスを感じる状況は?
・ストレスを発散するために何をしているか?
・学生や社会人になってから精神的負担を感じた出来事はあるか?
職場で働く以上、勤務環境や人間関係などでストレスを抱えることもある。採用面接においては、応募者のストレス耐性を確認することも重要だ。
ストレスの要因や解消法を具体的に探っていくとよい。
質問事例5.職務内容や待遇のすり合わせ
採用面接で職務内容や待遇のすり合わせをするときの質問事例は下記の通りだ。
・休日出勤が月に数回あるかもしれないが大丈夫か?
・他の地域への転勤もありえるが問題ないか?
・海外出張もあるが渡航は苦にならないか?
採用面接の最後には、職務内容だけでなく残業や休日出勤、雇用形態、転勤の有無などの項目についてもすり合わせる。また、応募者から雇用の疑問点について質問を促すことも重要だ。
採用面接で禁止されている質問
採用面接において受験者本人以外を評価対象とし、就職差別をする質問はタブーとされている。関連の薄い質問が、相手に対する差別につながる恐れがあるのはもちろん、余計なプレッシャーを与えかねないからだ。
ここからは、採用面接で注意したい不適切な質問について紹介する。不適切な質問について、受験者が自発的に語ることがあるかもしれない。
その場合は話す必要がなく、採否には関係しない旨を伝えておくことが望ましい。
不適切な質問事例1.法律に抵触する内容
採用面接で男女雇用機会均等法に抵触しかねない質問は下記の通りだ。
・彼氏や彼女はいるか?結婚の予定はあるか?
・結婚しても仕事は続けられるか?
・子供が産まれたら、育児休暇を取得したいと思うか?
雇用において男女の性差があることは禁止されており、採用面接においても同様だ。SDGsでジェンダー平等が提示されていることも忘れてはならない。
彼氏や彼女の有無をはじめ、結婚の予定や出産に関する考え方などは、長期雇用を前提とする会社としては質問したいかもしれないが控えるべきだ。
また、育児休暇を男性が取得する事例も増えている。女性だけでなく男性の受験者に対しても質問に注意したい。
不適切な質問事例2.本籍や住環境に関する内容
採用面接における本籍や住環境に関する不適切な質問事例は下記の通りだ。
・あなたの本籍地はどこか?
・生まれてから現住所に変更はないか?
・あなたの住んでいる地域の環境を教えてください
本籍地や住所などの質問は判断を誤ると、同和関係者や在日外国人、生活水準に関する憶測を生じさせる。就職差別による公平性違反につながる恐れがあるため、応募者の出身に関する質問には注意してほしい。
不適切な質問事例3.家族の職業や地位に関する内容
採用面接における家族の職業や地位に関する不適切な質問事例は下記の通りだ。
・両親が勤務している会社は?
・家族の収入について教えてください
・両親は共働きですか?
本来、採用面接では受験者の能力や適正などを評価する。受験者の家族の職業や地位などを確認するのは、環境要因を採用の判断に持ち込むことになる。
公平性の観点から本人の努力や行動と無関係の質問は避けるべきだ。
不適切な質問事例4.個人の思想に関する内容
採用試験における個人の思想に関する不適切な質問事例は下記の通りだ。
・あなたの信条とする言葉は?
・学生運動についての考えを聞かせてください
・尊敬する人物は誰か?
所属宗教や支持政党などに関する質問はもちろん、尊敬する人物についての質問も採用面接では好ましくない。
個人的な思想に関する質問は、採否の判断にバイアスがかかりやすいからだ。
採用面接でチェックすべきマナー4つ
採用面接では、社会人としての基礎的なマナーも確認しなければならない。マナーのない社員を採用すると、社内外で問題を起こす可能性もあるからだ。
採用面接で最低限確認しておくべきマナーのチェックポイントを紹介する。
チェックポイント1.時間
通知された採用面接の時間に遅刻する受験者は、事前準備を怠っており論外である。また、受験場に来るのが早すぎるのも配慮が足りない。
もちろん、やむを得ない理由で遅れる場合もあるだろう。そのときに連絡がない受験者も社会人としてのマナーが備わっていない。
チェックポイント2.挨拶
採用面接での入退場時はもちろん、面接官以外に対する挨拶も確認が必要である。
挨拶は、他人に配慮できる人物を探るときの判断基準になる。雇用した社員は、社外に対して会社を代表する人物でもあり、挨拶ができないと会社の評判を下げかねない。
採用面接では丁寧に応対しているのに、受付や社員に挨拶をしなかったり、ぞんざいな態度をとったりする受験者は論外である。
チェックポイント3.身だしなみ
受験者にとって採用面接は、会社に自分をPRする機会でもある。服装や身だしなみに気を配らず、清潔感のない格好で受験する人物は社会的なマナーが備わっていない。
チェックポイント4.コミュニケーション
採用面接の受け答えで、相手が話している途中で話し出す受験者や、質問の意図をくみとらずに回答する受験者は、コミュニケーション能力が低いと判断できるだろう。
目を見るのが苦手な受験者もいるだろうが、話を聞いている姿勢を示せない受験者は相手への配慮が足りないといえる。
採用面接では経験や考え方を重視
採用選考は公正に実施されるべきであり、採用面接も例外ではない。採用面接によって自社が望む人材を雇用するには、事前に選考基準や質問内容を決めておくべきだ。
採用面接では、相手のことをさらに深掘りしたいあまりに、男女雇用機会均等法などの法律に反した質問をしてしまうこともある。
採用面接は一緒に働く仲間を見定める場である。お互い不快な思いをしないよう、受験者の経験や考え方にフォーカスすることを忘れてはならない。
文・隈本稔(キャリアコンサルタント)