WORDS by EXECUTIVE
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「大規模ソフトウェア開発を24時間体制で」——。

自動車部品サプライヤーとして世界のトップ企業の一社に君臨するデンソー。2019年10月24日に東京ビッグサイトで開幕された「第46回 東京モーターショー」の記者会見で、ソフトウェア開発に臨む姿勢について有馬浩二社長はこう力強く語った。

自動車業界ではいま「CASE」というキーワードがよく聞かれる。「コネクティビティ」「オートノマス(自動運転)」「シェアリング」「エレクトリック(電動化)」の頭文字をつなげた言葉で、次世代のモビリティ業界ではこの4つが変革の主役になると言われている。そしてこの4つの領域すべてでソフトウェアの開発力が企業競争力に大きく影響する。

連載「経営トップ、発言の真意——WORDS by EXECUTIVE」、今回はデンソーの有馬浩二社長の発言を取り上げ、変革が起きつつあるモビリティ業界におけるデンソーの事業戦略の方向性を探る。

CASEにおける「電動化」とデンソー

デンソーはトヨタグループだ。そしてトヨタはいま、自動運転への対応を急いでいる。海外拠点と日本拠点などで多くのベンチャー企業やスタートアップ企業と手を組み、先端技術の取り込みにも余念がない。

そんな中、トヨタグループの中核であるデンソーも同領域における対応を急ピッチで進めている。自動車の構成要素としてはこれまでは物理的な「部品」がメインだったが、自動運転領域では「ソフトウェア」の開発が花形となる。冒頭の有馬社長の発言はこうした背景があってのものだ。

「世界全体でソフトウェア人材を1万2,000人まで拡大する」。有馬社長は2025年までの人材強化策としてこのような見通しも述べた。現在デンソーで働くソフトウェア開発人材は約9,000人と言われている。ここからさらに3,000人を増やす計画だ。

そしてインドやベトナムなどの日本と時差がある海外拠点を活用することで、24時間体制の「眠らないデンソー」も実現する。自動運転機能はその一部が日本で間もなく解禁され、2020年代後半には日本を含む世界に実用化の波が来ると言われる。残された時間を最大限活用することで、トップサプライヤーの座を堅守したい考えのようだ。

強みである「熱マネジメント」の技術で

CASE関連で言えば、「電動化」領域におけるバッテリーについても有馬社長は記者会見で言及した。

バッテリーを制す者がEV(電気自動車)向けサプライヤーとしての頂点に立つ——。こう言っても過言ではないほど、バッテリーは海外の自動車部品サプライヤーも競って開発に力を入れている分野だ。

有馬社長はバッテリーの進化のためには「熱マネジメント」技術が不可欠であることに触れ、バッテリーのエネルギー効率を高めてEVの航続距離を伸のばすことに強い意欲を示した。デンソーは熱マネジメントについてはカーエアコン開発で高い技術力を確立しており、この武器を最大限活かしたい考えだ。

バッテリーの充電時間を短縮させたり寿命をのばしたりすることができれば、デンソー製バッテリーのスペックはさらに高まり、トヨタだけではなく世界のメーカーから引っ張りだこになる。有馬社長は記者会見で具体的な数値目標として「航続距離25%延長」「充電時間を3分の1」「バッテリー寿命20%延長」と掲げた。

今後しばらくはこの数値目標の達成に、デンソーの技術者たちは躍起になるのだろう。

CASEの「S」や「C」でも余念なく

デンソーはCASEの「S」、すなわちシェアリングの領域にも目を向けている。今年5月にはマイクロモビリティのシェアサービスを提供する米Bond Mobility社に出資を行ったことを発表している。もちろん「C」、すなわちコネクティビリティ領域での取り組みも余念がなく、次世代のコックピットシステムなどの開発にも力を入れている。

自動車業界のデジタル化が進む中、IT企業も続々参入している。デンソーの競争相手は確実に増えている。人材の層を厚くして業界トップ企業の座を維持できるか、注目が集まる。

経営トップ、発言の真意
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