2030年の次世代高機能材料世界市場規模は32兆1,794億円を予測
〜科学および工業の発展を支える新機能デバイスの出発点として成長~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、次世代高機能材料の世界市場を調査し、対象となる7材料区分別、参入研究機関や企業各社の動向、将来展望などを明らかにした。
次世代高機能材料の世界市場規模予測
1.市場概況
2020年の次世代高機能材料世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで、7兆1,914億円を見込む。
機能材料といえば、通常、電気、磁気、光、熱などの物理量が関係する材料群を対象にしていることが多い。このため、その定義はかなり広く捉える必要があるが、次世代に有望な機能材料(次世代高機能材料)に目を向けるとそれぞれ特徴的な機能を有し、科学および工業の発展に注目すべき材料であることがわかる。本調査では、電気・電子機能材料、光機能材料、量子機能材料、セラミックス機能材料、高分子機能材料、バイオ機能材料、エネルギー機能材料の7区分を対象としている。
このうち、電気・電子機能材料は電力機器や電子機器などに用いられる材料で、具体的にはPCや携帯電話、液晶TVなどの電気・電子製品を構成する部品・デバイスの材料となる。最先端の半導体用材料やディスプレイ関連材料から新エネルギーの代表である太陽電池用材料など、その範囲は非常に幅広いので、2020年の世界市場規模(見込)に占める材料区分別の割合は最も高い。
また、量子機能材料については、基本的に量子科学技術的な振る舞いをする材料、あるいは、そのような量子科学技術をプロセスとして駆使して創製された材料であり、すでに多くの材料が実用化しているが、次世代に向かってさらに新しい量子機能材料が続々と誕生している。量子科学技術においては、自然界を理解するためでなく、量子力学を量子の振る舞いや影響に関する科学として推進し、積極的に量子の操作を行うことによって、学術分野をはじめ、産業界における多岐にわたる分野においても役立てようとしている。
2.注目トピック
高分子機能材料は情報や分子を認識・伝達・変換したり、自己修復するなど様々な高機能を発揮
高分子化合物の多くは合成樹脂、合成繊維、合成ゴムなどの原材料として使用される高分子汎用材料である。これに対して、通常、少量しか使われず、特殊な機能を持つ高分子を高分子機能材料と呼んで高分子汎用材料と区別している。
高分子機能材料は一般に物質、エネルギー、情報を伝達、変換または貯蔵する作用を持つ高分子、および、その複合材料を指す。さらに具体的にいえば、化学反応活性、感光性、導電性、触媒性、生物相容性、薬理性、選択分離性、エネルギー変換性、磁性等の様々な機能を備えた高分子及びその複合材料を指す。
高分子機能材料のうち、刺激応答性高分子は外部の刺激に応答して可逆的にその性質を変化させることができることから、次世代の高分子材料などとして注目を集めている。
刺激応答性高分子は、温度応答性、pH応答性、電荷応答性などがあり、こうした外部刺激応答性高分子を新たに創製し、医療分野をはじめとする様々な分野への応用を目指している。一例として、がん部位を局所加温することによって治療するがん温熱療法において、温度応答性高分子を組み合わせて用いるなら、より高い治療効果を得ることができる。この際、温度応答性高分子には厳密な応答温度特性のみならず、生体適合性が要求されるのは言うまでもない。
3.将来展望
2030年の次世代高機能材料世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで、32兆1,794億2,000万円を予測する。
材料区分別でみると、2030年に最も高い構成比を占めるのは高分子機能材料で、このうち高分子フィルムや表示用高分子、半導体用高分子の市場規模(出荷金額ベース)が上位を占める。
一方、2030年の材料区分別世界市場規模(予測)のうち、2020年比で最も高い成長率を示しているのがバイオ機能材料である。そのなかでも生体適合材料やドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)※用材料、再生医療用材料はいずれも2020年比で1,000%(=10倍)以上となっている。これらは技術進歩が極めて著しく、従来の医療を激変させるインパクトを持つ領域であることがその背景にある。
※ドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)とは体内の薬物分布を量的、空間的、時間的にコントロールする薬物伝達システムのことである。
調査要綱
1.調査期間: 2020年1月~8月 2.調査対象: 次世代高機能材料関連の技術研究機関、生産・販売・取扱企業等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、ならびに文献調査を併用 |
<次世代高機能材料市場とは> 本調査における次世代高機能材料市場とは、次世代に有望な特徴的な機能材料として、①電気・電子機能材料、②光機能材料、③量子機能材料、④セラミックス機能材料、⑤高分子機能材料、⑥バイオ機能材料、⑦エネルギー機能材料、その他を対象とし、世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで算出した。 |
<市場に含まれる商品・サービス> ①電気・電子機能材料:半導体材料、磁性材料、ニューカーボン、誘電体材料、②光機能材料:シリコンフォトニクス、光触媒材料、フォトニック結晶、光記憶材料、メタマテリアル、 ③量子機能材料:超伝導材料、量子閉込構造材料、強相関電子系材料、④セラミックス機能材料:電子セラミックス、繊維強化セラミックス、炭化ケイ素、自己治癒セラミックス、 ⑤高分子機能材料:高分子フィルム、表示用高分子、半導体用高分子、導電性高分子、接着剤、イオン交換樹脂、自己修復高分子、水溶性ポリマー、 ⑥バイオ機能材料:生体適合材料、DDS(Drug Delivery System)用材料、再生医療用材料、機能性化粧品、バイオセンサー、⑦エネルギー機能材料:蓄電池用材料、太陽電池用材料、燃料電池用材料、熱電材料、人工光合成 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 次世代高機能材料の現状と展望 |
発刊日 | 2020年10月28日 |
体裁 | A4 258ページ |
定価 | 150,000円(税別) |
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