資金調達,クラウドファンディング
(写真=Prostock-studio/Shutterstock.com)

やりたい事業があるが、それを実現するにはまとまった資金が必要だ。しかし融資してくれる金融機関もなければ出資者も見当たらない。そこで検討したいのがクラウドファンディング。ただクラウドファンディングで企業は資金調達をできるのだろうか。今回はその方法とメリットやデメリットについて解説する。

クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングとはクラウド(群衆)とファンディング(資金調達)が合わさった造語である。インターネットを通して自分、もしくは企業の活動や作りたい商品・サービスを発信することで、それに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募る仕組みだ。資金が集まれば、運営側に一定の手数料を支払い、残りをプロジェクトの運営資金として使用することができる。

矢野経済研究所「2017年度版国内クラウドファンディングの市場動向」によると、2014~2017年度の5年間でクラウドファンディングの市場規模は約7.7倍に広がった。2016年の新規支援額ベース額は約745億5,100万円で前年比96.6%増という驚異的な伸び率となっている。参加の方法は2つで一つは出資を募る側、もう一つは出資者として参加するものだ。

個人や企業が不特定多数の人から直接資金を調達するということを可能にしたのがクラウドファンディングの特徴。出資を募るのを「起案者」といい、投資として参加する立場を「出資者」と呼ぶ。

クラウドファンディングの流れ

「起案者」「出資者」の簡単な流れを以下に説明しておこう。

【起案者(出資を募る)側】
1自分の考えるプロジェクトにふさわしいクラウドファンディングサイトを探して決める
2サイトの運営者などに自身のプロジェクト内容を説明・申請する
3指示に従いプロジェクト案を起案。その後サイトの審査を受ける
4審査に通れば公開。ファンディングスタート
5サイト側の公開だけに頼らず、自身の発信でプロジェクトを宣伝・拡散する
6目標額に達成する(目標額に達成しなくても資金を受けるコースもある)
7運営側に手数料を支払い、プロジェクトを実施
8リターンがある場合は出資者へリターンバック

【支援者(出資者)側】
1いろいろなサイトでクラウドファンディングのプロジェクト案を探索
2内容を吟味確認。とくに投資色を強めたい場合はリターンをしっかりと確認する
3募集期間中に支援する(サイト内で決済する)
4募集期間終了後は起案者の活動報告などを見て、プロジェクトの実行度合いや、進行度合いをチェックする
5リターンを確認

クラウドファンディングの4つの種類

実はクラウドファンディングには、その内容から4つの種類(タイプ)に分けられる。ここでは順にその種類を解説していく。

寄付型クラウドファンディング

一般的にクラウドファンディングのイメージとして一番強いのがこのタイプだろう。いわゆる「プロジェクト」の趣旨に賛同する人たちに、自身の夢や目的、あるいはその意義を訴えて共感してもらい資金を拠出してもらうというもの。出資者の見返りは実利的なところはほとんどないかもしれない。つまり起案者にとってはリターンを用意する必要がないということになる。

出資者は、このプロジェクトに参加したという自己肯定感を求めるのが一般的だ。そのためプロジェクトの実行者は、例えば出資者の名前をどこかに掲載するなど、プロジェクト実施後の内容報告をしっかりと出資者に発信するなどの「気持ちで返す」というものが必要になるだろう。

購入型クラウドファンディング

リターンという見返りがない寄付型から一歩進めたタイプがこの購入型である。このタイプにはさまざまなリターンが考えられ、ある意味クラウドファンディングの醍醐味を一番感じられるものといえるだろう。起案者が自分たちのアイデアや夢を語り出資を募るのは寄付型と同じだが、そのリターンの内容でよりそのプロジェクトの魅力を増幅させるという形だ。

例えば自身が手掛ける映画製作と上映、自身が制作する絵本展示会、マニアにはたまらないコミュニティスペースの設置などの商品を他者に先駆けて提供するリターンなどは、出資者に金銭以上の満足感を与える。大規模なイベントや施設の立案であればその入場資格やプレオープンへの招待、また限定品の優先提供やナンバリングされたレアな製品の提供などもその例の一つだ。

融資型(ソーシャルレンディング)クラウドファンディング

先の寄付型や購入型のクラウドファンディングは非投資型クラウドファンディングと呼ばれる。それに対して文字通り投資として存在するのが融資型と呼ばれるクラウドファンディングだ。日本ではソーシャルレンディングと呼ばれるほうが多いかもしれない。リターンは明確に金銭であり、利率や条件で出資者が選んでいく投資商品である。

仕組みは、小口の出資金をまとめる事業者Aが存在し大口資金として事業者Aがその資金を必要とする企業に貸し付ける。直接のリターンは事業者Aが受取、それを小口出資者ごとに分配する。クラウドファンディングという名前ではあるが、完全に投資商品であるので当然金融庁の監視下に置かれる。

ここで留意しておきたいのは、この事業者Aは起案者ではないということだ。起案者は別にいる。融資型が寄付型や購入型のそれとは全くことなるのは、出資者は起案者の顔が見えないということだ。

株式投資型クラウドファンディングの仕組み

投資型のクラウドファンディングの中でもう一つあるタイプが株式投資型である。クラウドファンディングの株式投資型クラウドファンディングの中心は、ベンチャー、あるいは小規模の企業・個人・団体の将来性豊かな投資物件について投資しリターンは「未公開株」であるというものだ。この未公開株が上場したり、M&Aによって売却益が発生したりした際は株保有者もその「見返り」を手にすることができる。

ある意味、購入型の「夢」と投資型の「高利回り」の双方の「いいとこ取り」を狙った商品だ。ただし、そのベンチャーに出資するのはあくまでクラウドファンディング事業者であるので、株式といっても実際は直接の投資ではなく、区別でいえばやはり間接投資の類となる。

知っておきたいクラウドファンディング3つのメリット

クラウドファンディングのメリットは具体的に何なのだろうか。クラウドファンディングを使うために知っておきたいメリットを確認していこう。

メリット1:気軽さとハードルの低さ

・アイデアは面白いはずなのに実績がないので信用がない
・資金もないし賛同者も周りにいない
・銀行はリスクを極端に嫌うし共感者がどこにいるかは分からない

このようなことで事業のスタートアップまでいたらない人たちは今まできっと数えきれずいただろう。クラウドファンディングの大きなメリットの一つはとにかく気軽に始められることだ。サイトに起案を登録して全世界に自身のアイデアを披露および発信する。事業計画書を作ることが絶対条件でもないし金融機関が求める審査用の収支計画も不要だ。

メリット2:ローリスク

非投資型のクラウドファンディングは「寄付型」と「購入型」があるというのは先に説明したとおりである。寄付型は当然であるが、購入型にとっても出資を募る行為、出資を実現させるまでにほとんどコストがかからない。

【購買型の2つのタイプ】
・All or nothing(目標金額が達成後にプロジェクトを実行するタイプ)
・All-in(目標金額の達成にかかわらず期間内に集まった金額でプロジェクトを実行するタイプ)

All or nothingは目標額に達しなければプロジェクトを実行する必要はない。つまりお金が集まってからアイデアや企画の実現となるわけである。逆にいえば目標額の99%が集まってもプロジェクトは実行できない。多くのクラウドファンディングサイトは目標額が未達成であれば、手数料さえ要求しないのだ。起案者は低いリスクで大きな金額を手にすることができる可能性もある。

メリット3:つながる魅力

起案者と出資者の関係で見ると従来はかなり希薄な関係である。そのため商品開発は株主には意見を聞かずに専門家を使い、アイデアの是非は企画会議で決めていた。出資者が商品開発にかかわったり、同じ想いを持ったりして商品を開発するということはまずない。ところがクラウドファンディングは「出資者=支援する人」という構造だ。

そのため商品の企画・アイデアに共感・共鳴する人が出資するという構図となる。結果的に出資を募る段階で多くの共感者やファンといえる人たちとつながることができ、かつ出資者自らがSNSなどで自身の周辺に広告活動をしてくれる可能性がかなり高いのだ。

クラウドファンディングで資金調達するデメリットは?

聞けば聞くほどいいこと尽くめのようなクラウドファンディングだが、果たしてデメリットはないのだろうか。ここでは、代表的なクラウドファンディングのデメリットを4つ紹介する。

デメリット1:誰でも見放題?アイデアが盗まれるリスク

クラウドファンディングには多くの募集案件が掲載されている。画期的なアイデアの商品開発、地元の資産を有効活用する企画、個人的な趣味や、社会的意義を問う案件など。出資側に回らずとも、それを閲覧するだけで人間の創意工夫、想像力の豊かさに触れることができて楽しいだろう。しかし同時にこれは起案者側にはデメリットにもなりうる。

人々のアイデアが見放題ということは、それを誰かが模倣することもアレンジすることも自由なのだ。つまり“アイデアを盗まれる”リスクがあるというわけだ。

デメリット2:時間が読めないリスク

クラウドファンディングでは資金調達ができる正確な日時は不明である。そもそもAll or nothingであれば、期間内に目標金額が達成しなかった場合、入金額は0円である。All-inであっても「どのくらいの金額が手に入るのか」については誰にも分からない。このような条件で企画を実現するためのさまざまな準備を進めなければならない点はリスクとも取れる。

デメリット3:キャンセル不可のリスク

当たり前ではあるが、資金が集まればプロジェクトは実行しなければならない。「やっぱりいろいろ問題があることが分かったのでこの案は取りやめます」とはいえないのだ。「お金を集めて実行しない」のは詐欺行為である。逆に出資する側からも「やっぱりあの出資は取り消したいので返金して欲しい」という要求も基本は不可だ。

デメリット4:宣伝しなければ資金は集まらない

クラウドファンディングを使えば、信用力のない個人や団体、組織でも容易にある規模の資金が調達できる。しかし実際はそこには忘れてはならない前提がある。知ってもらうための活動が必要なのだ。自身の起案をクラウドファンディングにアップしただけでは十分ではない。それを宣伝・告知する努力は必要なのである。

クラウドファンディング事業者は各案件に担当者をつけるのが主ではあるが、「その案件のために全力投球」というわけにはいかない。「自分の起案を宣伝するのは自分」「お金を集めたければ自身の活動でクラウドファンディングに掲載されていることを告知する」ということを前提において進めよう。

資金調達をクラウドファンディングで行う方法

クラウドファンディングとは何かが理解できてきたら、あとは実行あるのみだ。実際クラウドファンディングを行う(資金を調達する)場合はどのような手順で進めればいいのだろうか。ここでは代表的な手順を6つ説明していこう。

クラウドファンディング簡単手順ガイド1目標の設定

まずはプロジェクトの内容を決めよう。自分がやりたいプロジェクトや事業に必要な金額から、調達希望額を決めるのだ。また達成したい期間やどのタイプのクラウドファンディングを利用するかもあらかじめ決めておきたい。厳しい銀行融資を受けるわけではないが、だからといってノープラン、ノーアイデアでいいというわけではないのは当然のことだ。

クラウドファンディング簡単手順ガイド2利用サイトを決める

いざクラウドファンディングを行おうとすると、そのサービス事業者の多さに驚くはずだ。有名なサイトもあるし、新興サイトは各自差別化のために工夫を凝らして特徴を押し出している。各サイトでの強みはどうか、手数料の違いなど細かい条件をチェックしてプランを載せるサイトを決めよう。

クラウドファンディング簡単手順ガイド3プロジェクト案の登録

利用サイトが決まったら次は「どのように訴えるか」だ。タイトルやトップビジュアルのインパクトをどこまで強めるかによって調達金額も変わってくるかもしれない。動画編集もありだろう。「どのように訴えるか、進めるか」についてはプロジェクトごとに担当者がついてくれるため、相談しながら進めるのもよいだろう。

クラウドファンディング簡単手順ガイド4審査を受ける

案件の内容やビジュアルが決まれば、次は運営サイトからの審査を受けることになる。運営サイトとしても、かかわる案件が「公序良俗に反することにならないか」などは、当然チェックするところだ。またこの審査の段階で審査するサイト側から「ここをこうすればもう少し集金力が上がりそう」「この部分を変更したほうが良いのでは」というアドバイスを受けることもある。その際は積極的に応じよう。

クラウドファンディング簡単手順ガイド5プロジェクト開始

ここでようやくプロジェクトの開始となる。いよいよ資金集めのスタートだ。ここからは不安と期待の日々がしばらく続くことになる。その日の集金額に一喜一憂することもあるだろうが、それよりもプロジェクトをより多くの人々に知ってもらうことにエネルギーを使いたい。

クラウドファンディング簡単手順ガイド6広報活動・活動報告

プロジェクトが開始したら自身の周辺にいろいろな形で広報していくことが必要だ。今の活動報告でもいいし、ダイレクトにクラウドファンディング掲載中という告知でもよい。いくらの金額が集まるかは、このような地道な草の根活動の積み重ねで決まると思っておきたい。

うまくいくクラウドファンディング4つのコツ

クラウドファンディングはアイデアと創造力、想いや夢を語ることで誰でもが気軽に資金調達が可能となる理想のプラットフォームである。目標資金額の調達達成(成功)と調達未達成(失敗)の違いは何か。成功するためのコツを知っておこう。

事前準備が勝負の決め手

クラウドファンディングを成功させるためには、公開してから「クラウドファンディングをやっている」と訴えるようでは遅い。そのため広報・告知活動を公開前に行うことを心がけよう。始まる前から大々的な宣伝活動をやる必要はないが、支援してくれそうな知人や友人に声がけをしておくのは有効だ。

期間はできるだけ長く

一般的にクラウドファンディングは短期勝負だといわれる。スタート時点で実績が上がればより広めやすいし、運営サイト側からもプロジェクトの評価が上がり、サイト上でもユーザーの目に止まりやすい場所を確保してくれる。だからといって期間を短くする必要もない。徐々に評判を得てジワジワと広がるパターンもあったり、出資者の財布事情もあったりする。やはり一定期間以上の募集期間は確保しておきたい。

共感者を巻き込もう

クラウドファンディングは“お金を集めるもの”というのは事実だ。しかし実際はお金でははく“共感者”を集めなければならない。その結果が出資金という形で現れるというふうに考えよう。SNSなどがあれば出資してくれた人、つまり共感者を巻き込んで、その人たちにプロジェクトを宣伝してもらうこともできる。お礼とお願いと感謝を基本に協力を仰ごう

差別化とユーモアを忘れない

クラウドファンディングのプロジェクトでユーモアというのは非常に大事な要素である。「あの面白いプレジェクトに参加した」と出資者が人に自慢できるようなプロジェクトにしよう。人にシェアしたい存在になることはどこの世界でも成功する鍵だ。

クラウドファンディングサイトをケース別に紹介

クラウドファンディングのメリットは資金調達以外にもある。ここではそのタイプ別の代表的なサイトを紹介しよう。

資金調達+ブランド力を高めたい「Makuake(マクアケ)」

オリジナリティーでは誰にも負けないという自負があって、自信の会社のブランド力を高めたいときにおすすめなのが、サイバーエージェントが運営するクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」だ。Makuake はいわゆる購入型クラウドファンディングが主で映画や自社開発商品などを制作するために資金調達しているプロジェクトが多い。

アメーバブログの運営も行うサイバーエージェントならではの宣伝力で、自社開発商品を口コミで広げられるなども期待できるだろう。

Makuake(マクアケ)

資金調達+共感者を見つけたい「GoodMorning(グッドモーニング)」

現在検討しているアイデアが社会問題に対峙するためのものであるならば、「GoodMorning(グッドモーニング)」はおすすめのクラウドファンディングサイトだ。GoodMorningはクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイア)」の子会社であり、課題解決のためのクラウドファンディングに特化している。ユーザーも社会問題への関心が高く、共感者を集めるためにはもってこいだろう。

GoodMorning(グッドモーニング)

資金調達+手数料が気になる「Kibidango(きびだんご)」

クラウドファンディングでは目標の資金調達額を達成した場合、調達金額の10~20%を手数料として運営側に支払う必要がある。調達金額の総合計にもよるが、手数料が最も低いサイトと最も高いサイトではかなりの金額の差が出るだろう。「Kibidango(きびだんご)」は手数料が10%という業界でも低めのクラウドファンディングサイトだ。掲載プロジェクトのうち、8割が目標金額を達成していることも魅力的である。

Kibidango(きびだんご)

クラウドファンディングは最強の資金調達パートナー

クラウドファンディングでは、アイデアに自信があり仲間へ呼びかける強いメッセージがあれば、それを届けて資金を集めることができる画期的な手法だ。資金調達に困ったら一度クラウドファンディングという資金調達方法を検討してみてはいかがだろうか。

文・橘高唯史(中小企業診断士)