今から一昔前、フランチャイズ業界で最も勢いのあったデイサービスチェーン。しかし、3年に一度の介護保険制度改正による報酬単価の減少や消防法改正、施設の乱立によって、いつしかそのビジネスの優位性は薄れていった。そんな中、Care Nationが展開する「ブルーミングケア」は、競争力の高いモデルとして注目されている。同社の礒部孝浩社長は、今後もFCによる出店を加速させていくと話す。

(※2020年12月号「特集●コロナ禍でも強い地方・郊外型FCビジネス」より)

礒部 孝浩社長
(画像=礒部 孝浩社長)
礒部 孝浩社長(43)
礒部 孝浩社長(43)
いそべ・たかひろ
ホテル業界に勤務して接客業を学び、接客業で学んだことを活かし不動産会社にて勤務。その後、高齢者事業に携わることを志し、民家改修デイサービスの職員からスタートする管理者や事業所展開及び運営責任者、高齢者向けの配食事業や他介護法人のコンサルタント業務などを行う。2017年にお泊まりデイサービス最大手の取締役を経て、2018年5月より株式会社CareNation代表取締役に就任。現在に至る。

━━Care Nation は介護ブランドのチェーンとしては大手に当たる、全国で約250カ所の事業所を展開しています。いくつかのブランドで構成されているということですが、内訳を教えてください。

礒部 拠点数として一番多いのが、地域密着型通所介護事業の「ペルメールケア」というブランドです。民家を改修し宿泊も可能な事業所で、現在204拠点で展開しています。そして同じく、民家改修型の事業所として「ケアフィットルーム」は、宿泊がないパターンで、自立支援特化型デイサービスとして展開しています。

そしてもう一つが2018年の7月から手掛けている「ブルーミングケア」です。ブルーミングケアは新築で全室個室、バリアフリーやスプリンクラーなども完備しており、24時間夜間対応型の事業所となっています。ハード面のクオリティはもちろん、スタッフのサービスメニューも充実させた民家改修型とはコンセプトが異なったデイサービスとなっています。現在、このブルーミングケアは全国で約50拠点あり、当社の中でも一番積極的に増店しているブランドになります。

━━民家改修型の施設であれば住宅街に立地しているのは分かりますが、ブルーミングケアはどのような立地に出店しているのでしょうか。

礒部 いわゆる郊外であったり、駅から少し離れた住宅街などが多いです。実際、東京23区では1拠点しかありませんし、東京全域でも2拠点しかありません。ほとんどが地方での出店ですね。立地選定については、事業者様が希望するエリアの人口数と特別養護老人ホームの待機者数、そしてデイサービスの数を踏まえて行います。また、若い世代が低いエリアの場合は、人口流入・流出の数も調べます。これは事業者側の採用問題に直結してくるからです。

━━地方は高齢化のスピードも速いですから、利用者の需要と照らし合わせても相性がいいですね。

礒部 現在、ある加盟店が近々2店舗目を出店する予定なのですが、その方が現在出店しているエリアは相当な高齢化が始まっています。全国的には2040年に高齢者比率30%越えが多くなると言われている中で、この地域は既に35%を超えています。そのため介護施設も不足しているのです。

━━増店はオーナーにとっても嬉しいことですが、本部側も勝手が分かっている方にお願いした方が安心です。

礒部 今年オープンする加盟店も、元々はペルメールケアを運営しているのですが、増店を決めました。民家改修型とはまた違った、幅広いニーズに対応していきたいという意向でした。またコロナ禍だと、ケアマネージャー側もご利用者の感染を警戒しています。現在利用してる施設からわざわざ新たに出店する事業所に紹介するには、全室個室完備というのは大きな安心材料になります。

━━施設のハード・ソフトの両面で差別化できるということですが、その分、初期投資も高くなりますよね。

礒部 ブルーミングケアの出店形式は、一般的なフランチャイズと少々異なります。当社の場合、まず地主さんに施設を建設してもらい、それを当社グループ会社で一括借り上げをします。その上で加盟店に転貸し、それを運営していただく形です。開業資金自体は1800万円弱で、開業後から安定稼働までの運営資金を入れても総額約2500万〜3000万円で済みます。

━━FCは店舗型のビジネスが多く、その多くのブランドが今回の新型コロナウイルスによる打撃を受けています。御社への影響はいかがでしょうか。

礒部 今回のコロナウイルスの騒動下、些細なことでも社内と加盟店問わず迅速に共有しました。感染者が発生してしまった場合の対応方法や連絡先、コロナウイルスに感染した場合どれくらいの期間で普及できるのかという情報をリリース。また、厚労省が出した見解をマニュアル化した上で、社内の「ナレッジ戦略教育訓練部」という部署でインプットとアウトプットを繰り返し行いました。

━━ナレッジ戦略教育訓練部は、コロナによって作られた部署ですか。

礒部 いえ、この部署は当社設立時から設けている部署で、これまでも直営で培ったノウハウを加盟店と共有する部署として活動しています。これまでは法改正についてのレクチャーや介護技術の統一化ということで介護技術の試験を社内で行っていましたが、現在は現場向けに制作物等をクラウド上で共有したりしています。たとえばケアマネージャーさんへの営業資料をテンプレートで作成したり、Zoom での内覧会や現在のコロナ対策のチラシなどをダウンロードして使えるようにしたりしています。

━━感染後の重症化リスクが高い高齢者を対象としているため、本部としてもより慎重にならざるを得ませんからね。

礒部 今回、同じデイサービスでも施設によっては相当苦しい状況になっているという話も聞きます。これは「コロナの中、わざわざ行かなくてもいい」というように、本当に必要なサービスかどうかということがコロナの中で選別されたのだと思います。極端ですが、居場所づくりのデイサービスであれば行かなくてもいい。むしろ当社のように宿泊まで提供している事業所は、必要に駆られていらっしゃる方も多い。これはご利用者もそうですが、ご家族にとってもそうです。預ける先がなければ、ご自身の仕事にも影響が出てきてしまいます。実際、他の施設に入居しようとして断られた方々を、当社の事業所で受け入れも行いました。

▲コロナ禍では他施設の受け入れ先としても機能
(画像=▲コロナ禍では他施設の受け入れ先としても機能)

━━デイサービスはケアマネージャーを経由して利用者を獲得するビジネスモデルなので、施設側でなかなかコントロールできない点が課題です。

礒部 通所のみのデイサービスだと難しいですが、ブルーミングケアになってできるようになったのが、病院からのご紹介が増えたことです。

病院も警戒してしまって退院患者を送客できない。ただ病院側も患者を退院させないといけない。ですから自宅に送り返すのがまずいと分かりながら行っていました。しかしブルーミングケアはバリアフリーですし、スプリンクラーやナースコール、介護ベッドなどの設備も整っています。また日中は看護師の配置義務もあるので、ご相談いただければ看護対応も可能です。

━━奇しくもコロナを機に、御社のビジネスモデルが注目される結果となりましたね。

礒部 医療分野だけではなく、介護の領域も日々の生活で非常に重要なものであり、新たなライフラインとして理解してくれる人も多くなったことは大きいと思います。