トヨタ
(画像=wolterke/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな企業の業績に甚大なダメージを与えている。自動車業界も例外ではない。そんな中でトヨタ自動車は黒字を維持し、大きく注目された。一方、同じ自動車業界でもマツダは赤字を計上した。黒字を維持したトヨタと赤字となったマツダ。両社の差は何なのだろうか?

トヨタの2021年第2四半期の連結業績は?

まず、トヨタの決算発表の数字からみていこう。トヨタは2020年11月6日、2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)を発表した。最終損益は6,293億6,800万円のプラスで、前年同期比で45.3%減となったものの、黒字を維持している。

2021年3月期の通期の連結業績(2020年4月〜2021年3月)の予想も発表しており、最終的には前期比30.3%減の1兆4,200億円に着地する見通しだという。この数字も、前期比減ながら黒字だ。

トヨタは、2020年8月の通期予想では最終損益は7,300億円の黒字になる見通しだとしており、2020年11月の発表ではその数字を1兆4,200億円まで上方修正した形となる。自動車の販売台数の見通しが、2020年8月の通期予想よりも増えたことなどが理由だ。

トヨタの豊田章男社長は決算説明会のスピーチで、通期見通しの上方修正について、コロナ禍での取り組みもさることながら、自信が社長就任してから11年間の取り組みによってトヨタが少しずつ強くなったからであろうと述べている。

マツダの2021年第2四半期の連結業績は?

一方のマツダはどうか。2020年11月9日に発表した2021年3月期第2四半期の連結業績では、最終損益が930億2,800万円のマイナスとなっている。前年同期は166億1,700万円の黒字を計上していた。

トヨタとは異なり、2020年11月の発表に合わせて通期の連結業績予想を上方修正することはなく、通期の最終損益は900億円の赤字となる見通しだ。マツダの役員は決算説明会で、経営環境は厳しいが、販売量の回復と固定費の削減等の効率化をさらに推進して、通期見通し達成に向けて取り組むことを強調した。

トヨタは「原価低減」による底力を見せた

同じ自動車メーカーながら、ここまでトヨタとマツダで明暗がはっきりと分かれた理由は何か。企業の業績は、さまざまな数字の合算値が決算の数字となって示される。そのため、その理由を1つに絞ることは難しいが、ビフォーコロナからの経営状況が影響していることは明白だ。

トヨタが「世界のトヨタ」と呼ばれるようになったのには、「原価低減」の強化が理由の1つであると言われている。トヨタグループの創始者である豊田佐吉が徹底的に追求した考え方で、現在のトヨタでも継承されている。

原価低減とは、簡単に言えば無駄を徹底的に排除していくことだ。製品の質は落とさないことを前提に、トヨタは作業の工数を減らして生産性を高め続けてきた。こうした努力は不況時に特に生きる。売上が落ちても、コストの負担があまり重くのしかかってこないからだ。

また、トヨタの販売部門が必死になったことも大きい。リーマン・ショック時のトヨタの販売実績は市場を4%下回っていたが、2020年はコロナ禍にも関わらず、市場を3%上回るペースで回復している。

販売減が業績に大ダメージとなったマツダ

一方、赤字を計上したマツダは、自動車の販売数減少で収益が圧迫され、結果として赤字となっている。2021年第2四半期においては、固定費の抑制や販売回復がこれまでの想定以上に進んでいるものの、最終的に通期の見通しを黒字と修正できるまでには至っていない。

新型コロナウイルス感染拡大は、どの企業にとっても予測できないものだった。もちろん赤字についてはマツダが直接的に悪いわけではないが、トヨタのような原価低減に徹底的に普段から取り組んでいたとすれば、コロナ禍による業績へのダメージはもう少し小さかったかもしれない。

コロナ禍を機会に各社が経営体質強化に取り組む?

日本国内の主要な自動車メーカー7社において、2021年第2四半期の連結業績の営業利益で黒字を計上できたのは4社、赤字を計上したのは3社だ。

黒字組は前述のトヨタのほか、ホンダとスズキ、スバルとなっている。一方の赤字組はマツダのほか、日産と三菱自動車である。そして、第2四半期に黒字を計上したメーカーは通期見通しも黒字で、赤字を計上したメーカーは通期見通しも赤字となっている。

新型コロナウイルスのワクチン開発が進み、世界中に普及されれば、自動車需要も徐々に元に戻っていくであろう。そのため、コロナ禍以降で黒字組と赤字組にくっきり二分される状況は今だけと言えるかもしれない。

ただ、新型コロナウイルスは各自動車メーカーの経営体質や課題を浮き彫りし、特に赤字組の企業の経営陣は、これから何をすべきかはっきり見えたのではないだろうか。コスト削減や経営の合理化の取り組みは、通常時の業績にも良い影響を与える。各社がコロナを機に、どのように経営体質を改善・強化させていくのか、注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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