マスク
(画像=maicasaa/stock.adobe.com)

マスク市場では夏のマスク商戦が始まっており、異業種やスポーツメーカーなど今までになかった企業の進出が進んでいる。新型コロナウイルスの収束が不透明な中、グローバル規模でパンデミックは拡大している。今回は、ウィズコロナの時代に生まれた新たな市場であるマスク市場に参入した異業種や珍しい業界に焦点を当て紹介する。

目次

  1. マスク市場はウィズコロナの時代の新たな市場
    1. マスク不足はなぜ起こったのか
    2. マスクの需要によって生まれた新たな市場
  2. 米国や欧州でもみられたマスク市場への異業種参入
  3. 夏にマスクをしなければならないことで高まる高性能モデル需要
  4. 異業種や珍しい業界など今までになかった企業の進出
    1. アパレル産業からの参入
    2. スポーツブランドからの参入
    3. 技術を活かした下着産業からの参入
    4. 家電・生活用品メーカーからの参入
    5. 格闘用具メーカーの高性能マスク製造
  5. 地方活性化を期待できる夏マスク市場
  6. ウィズコロナのマスク市場はますます成長が期待される

マスク市場はウィズコロナの時代の新たな市場

新型コロナウイルスの感染が日本で本格的な拡大が確認できた2020年3月以降、深刻なマスク不足が起こったことは誰しも記憶に新しいはずだ。日本全国でマスクが不足し、マスクの着用が必要不可欠な医療機関においても医療用マスクが足りず、大きな問題として取り上げられた。

マスク不足はなぜ起こったのか

日本においてマスク不足が起こった大きな原因は、生産を中国に頼っていたことにある 。日本に出回っていたマスクは、7~8割が中国製であった。新型コロナウイルスの拡大が、世界に先駆けて始まっていた中国からの輸入が止まったことで、マスク不足の土壌が出来上がったのだ。

日本中 のほぼすべての人がマスクを着用するようになった。 国や地方公共団体、交通機関、店舗、企業など日常生活のどの場面でもマスク着用が叫ばれ、マスクの需要はさらにスピーディーに上昇していったのである。

マスクの需要によって生まれた新たな市場

新型コロナウイルスによって起こったマスク不足は、一方で新たな市場を登場させるトリガーとなった。異業種からのマスク市場への参入でインパクトが大きかったのが、いち早くマスク生産を開始した家電メーカーのシャープだろう。

そして、新型コロナウイルスの収束が不透明なまま、暑い夏のシーズンにマスクを着用しなければならなくなった。その 状況を踏まえて、多くの企業が夏マスク市場に名乗りを上げている 。

米国や欧州でもみられたマスク市場への異業種参入

米国のラルフ・ローレンやイタリア のプラダなどのグローバルなファッションブランドが、いち早く医療用マスクの生産を始めた。米国の自動車業界を代表するメーカーのひとつであるフォードは、ゼネラル・エレクトリックとスリーエムと共同して、医療現場で必要とされている人工呼吸器や防護用マスクに自動車部品を転用した。マスク市場はグローバルで急速に拡大することが予測されている。

夏にマスクをしなければならないことで高まる高性能モデル需要

日本においては、インフルエンザや風邪が流行する秋冬は気温も低いので、マスクをすることによって生じる暑さや蒸れは それほど気にする必要はなかった 。しかし、梅雨のシーズンから夏にかけては、湿度が上がり暑さも尋常ではない。

夏の環境に適した、高性能マスクの必要性が高まっている 。コスパの良さで人気のアパレルメーカー、 ユニクロが開発した高性能の夏用マスク「エアリズム」は、発売日に長蛇ができたことで大きなニュースとなった。

異業種や珍しい業界など今までになかった企業の進出

夏にもマスクをする需要が高まったことで、本来の事業で高い技術を持った企業や持ち前のセールスポイントがある異業種、 珍しい業界の企業の中から、マスク市場へ参入する例がみられている。ここではその中のいくつかを紹介する。

アパレル産業からの参入

アパレル業界は、本来業務で素材を加工して衣料を製造する技術を持っているので、マスク市場へも多くの企業が参入を果たしている。前述のユニクロ以外にも無印良品やAOKIなども夏マスクを販売し好評を得ている。

スポーツブランドからの参入

スポーツブランドも、アイテム開発のために研究開発を重ねてきた業界である。その技術を生かしたマスクの提案が、消費者ニーズを満たし、マスク市場参入に成功している。ヨネックスが開発した涼感素材の夏マスクは、オンライン販売を始めるやいなや即時売り切れで、追加販売、抽選販売を継続中である。

技術を活かした下着産業からの参入

下着産業の中には、高い技術を持った職員のリソースを抱えている企業がある。長崎にある下着メーカーの老舗である渡辺商店は、職人による手作り 下着 で培った技術と人材を 生かして、高品質の綿100%マスクを製造している。

家電・生活用品メーカーからの参入

シャープ、パナソニック、三菱電機などの有名家電メーカーがマスク製造に乗り出したとともに、生活用品全体を提案するアイリスオーヤマでは、中国の工場で生産していたマスク製造だけでなく、日本国内でも生産ができるように設備を整えた。 素材についても中国に頼らず、国内供給が可能な対応を整えている。

格闘用具メーカーの高性能マスク製造

プロレスラーのコスチューム に使う素材の伸縮性を生 かして、丈夫で蒸れにくいマスクを製造しているのは、浜松市にあるPUKUPUKU工房だ。耳にかけるマスクのひもの部分が調節でき耳の負担を緩和する。

地方活性化を期待できる夏マスク市場

前述で紹介した長崎にある下着メーカー渡辺商店や浜松市にあるPUKUPUKU工房の例のように、夏マスク市場は地方に拠点を置く高い技術力のある企業に新たな可能性を与えている。地方企業が元気になることで、地方活性化が期待されている。

ウィズコロナのマスク市場はますます成長が期待される

マスク市場では夏のマスク商戦が始まっており、異業種やスポーツメーカーなど今までになかった企業の進出が進んでいる。マスク市場はコロナによって生まれた新しい市場だ 。本来の業務で高い技術力や人材、設備を持っている企業は、夏のシーズンに適した、高性能で高品質の夏マスクを提案している。ウィズコロナの時代において、マスク市場は今後大きく成長していくことが予測できる。

文・小塚信夫(ビジネスライター・コラムニスト)

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