SWOT分析
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経営改善は、企業経営の大きなテーマである。企業経営の課題は次々に出てくる。多岐にわたる課題の中から改善目標を見つけて戦略を立てるには、自社が置かれている環境を分析しながら、自社の強みと弱みを把握する必要がある。この強み弱みを分析するフレームワークのひとつにSWOT分析がある。今回はSWOT分析を解説しながら、中小企業の強みを活かした成功事例を紹介しよう。

目次

  1. 中小企業経営改善のためのSWOT分析
    1. 経営改善に必要な強み弱みを知る
    2. 強み弱みを知るための方法
  2. SWOT分析とは?
    1. SWOT分析の目的
    2. 内部要因と外部要因
    3. SWOT分析の4要素
    4. SWOT分析のすすめ方
  3. 中小企業の強み弱み
    1. 中小企業の強み
    2. 中小企業の弱み
  4. 中小企業の強みを活かした事例
    1. 独自のブランド製品を生み出しHP販売に成功
    2. 地方らしさを活かした商品でECに成功
    3. デザインと品質の高さで海外を狙う
  5. SWOT分析で自社の強み、弱みを把握し、経営目標をクリア

中小企業経営改善のためのSWOT分析

中小企業経営者が欲しいのは、実績や結果だろう。実績や結果が伴わない分析は、中小企業経営者にとって時間の無駄である、それでは、強み弱みの分析はどうだろうか。強み弱みの分析を実施した中小企業は、経営改善の目標を達成している割合が高い結果になっている。

経営改善に必要な強み弱みを知る

経営改善をする場合は、経営者が自社の強み弱みを把握する必要がある。強みとは、いわゆる自社のセールスポイントであり、競合他社と比較して優位に立つことができる部分だ。例としては、他社にない特殊技術やノウハウなどがあげられる。

市場で経営を続けている企業は、通常何らかの強みを持っているものである。しかし多くの企業が、強みを正確に把握していないのが実情だ。宝のように貴重な自社の強みを把握しておらず、経営に活かせていないのである。

一方で、適当な認識で本来自社の強みでないものを強みと勘違いしているケースもある。強み弱みを正確に把握していないことは、企業経営にとって致命的なのだ。

強み弱みを知るための方法

強み弱みを知るためにはいくつかの分析方法がある。今回のテーマであるSWOT分析の他にもPPM分析、損益分岐点、生産性分析などがあるので、簡単に触れておこう。

・PPM分析(Product Portfolio Management)

PPM分析では、自社や自社商品を市場の成長性とシェアの2つの基準で分類する。市場成長性が高くシェアも高い分野については、投資を行い売り上げもあげていき、一方で市場成長性もシェアも低い分野は、撤退を考えるといった、投資と売上の回収をテーマに強み弱みの分析を行うフレームワークである。

・損益分岐点の把握

企業の利益は売上高から費用を引いたものである。損益分岐点とは、売上高から費用を引いた額がゼロになり、売上高と費用がイコールになる点である。損益分岐点の把握によって、売上目標や費用の削減目標を設定していく。損益分岐点の分析は、売上高と費用の視点で強み弱みを分析することになる。

生産性分析

生産性分析では、自社の経営資源(ヒト、モノ、カネ)を活用した、自社の生産性に注目して強み弱みを分析する。

SWOT分析とは?

SWOT分析を理解する上でよく使われるのが下記の表だ。

SWOT分析

SWOT分析は、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素から自社の経営を分析していく、シンプルで分かりやすいフレームワークだ。

SWOT分析の目的

SWOT分析の目的は、最終的に自社の強みを活かした市場や経営戦略を見つけることである。中小企業が抱えるさまざまな課題や問題点を、シンプルな強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素で洗いだし、それぞれの要素を組合わせながら分析することで、課題や問題点を整理する。

内部要因と外部要因

SWOT分析の表をみてみると、縦軸が内部要因と外部要因となっている。これは、企業の課題と問題点を分かりやすく整理するのに適している。

・内部環境

内部環境とは、企業の内部環境についての区分である。言い方を変えれば、自社の内部でさらに進歩させられる部分や、変革や改善ができる可能性がある特徴が当てはまる。たとえば、ミッション、経営方針、社風、ブランドイメージ、商品やサービス、技術などが内部環境となる。

外部環境

外部環境とは、企業を取り巻く外部環境についての区分である。外部環境は、内部環境と違い、自社の力ではどうしようもならない項目がほとんどである。たとえば、景気などの経済環境、少子高齢化による人手不足、IT化、グローバル化、政治、法改正、顧客の価値観の多様化、競合他社、関連企業などが外部環境となる。

近年では、地震や台風、大雨といった甚大な被害をもたらす自然災害や、新型コロナウイルスで体験しているパンデミックも企業経営に大きな影響を及ぼす外部環境のひとつであろう。

SWOT分析の4要素

SWOT分析の表の横軸はプラス要素とマイナス要素になっており、縦軸の外部環境に対応した4要素が示されている。4要素は、大義の区分であり、それぞれの内容は多岐にわたる。それぞれの要素を組合わせながら、経営を向上させるための市場や経営戦略を見つけることを念頭に分析を行う。

・強み(Strength)

強み(Strength)は最終的に、機会(Opportunity)とミックスして、新たな市場や力を入れるべき市場拡大への重点取り組みの経営戦略の核となる。自社のミッションや企業目標を達成するためにプラス要素となる内部環境が当てはまる。

・弱み(Weakness)

弱み(Weakness)と脅威(Threat)は、自社が目指す重点取り組みの経営戦略にとって妨げになる自社のマイナス要素であり、予防や防衛、改善の対応が必要となる。

・機会(Opportunity)

機会(Opportunity)は、自社のミッションや企業目標を達成するためにプラスとなる外部環境で、自社の強み(Strength)を最大限に活用して、新たな市場や力を入れるべき市場拡大、市場での優位性を確保する可能性を高めるものである。

・脅威(Threat)

脅威(Threat)は、自社のミッションや企業目標の達成を妨げる外部環境である。脅威(Threat)に対して予防や防衛することで、市場シェアの減少などのマイナスを抑える取り組みが求められる。

SWOT分析のすすめ方

SWOT分析のすすめ方は、SWOT分析表の縦軸である、内部環境と外部環境のうち、外部環境から分析をスタートするのが一般的だ。なぜなら、外部環境は企業経営に対する影響力が強く、内部環境は外部環境によって変わらざるを得ないケースが多いからである。

外部環境の機会(Opportunity)、脅威(Threat)を分析し、内部環境の強み(Strength)、弱み(Weakness)の分析が終わり、SWOT分析の表の4要素が埋まったら、4要素を組み合わせて、最終的な目的である自社の強みを活かした市場や経営戦略を見つけていく。この手順を「クロスSWOT分析」と呼ぶ。「クロスSWOT分析」を分かりやすく表にすると下記のようになる。

SWOT分析

・強み×機会

自社の強みによって、市場拡大や市場での優位性を確保するための市場や経営戦略を見つけていく。

・強み×脅威

自社の強みによって、脅威を防衛したり、脅威をビジネスに活かしたりするチャンスとして捉える。企業を取りまく社会環境の変化や顧客ニーズの多様化、日本に多く起こる自然災害や、新型コロナウイルスで体験しているパンデミックなどの脅威もアイデア次第で新たな市場に結びつく可能性がある。

・弱み×機会

自社の弱みを、業務フローの見直しや働き方改革の推進、システム化などの取り組みによって、改善し、市場シェアの拡大や新たな市場への進出につなげることができないか検討する。

・弱み×脅威

自社の弱みと脅威のマイナス要素を最小限に抑えるにはどのようにすればよいかを考えることは、企業利益を上げるための重要なポイントになる。

中小企業の強み弱み

大企業と比較した場合、中小企業の強みと弱みは下記の点があるだろう。

中小企業の強み

・強いリーダーシップ
・経営者と社員の意思疎通の機会が多い
・顧客対応の速さ
・小口受注に対する柔軟さ
・アフターサービスの充実

中小企業の弱み

・経営資源(ヒト・モノ・カネ)の脆弱性
・先進技術の導入
・企画・提案の能力
・販売の仕組み

中小企業の強みを活かした事例

前述の大企業と比較した場合の中小企業の強みと弱みを見ても明らかなように、中小企業は、数値的な面や量的な部分で、大企業に劣る。しかしながら、強みを活かせば、大企業と競争が可能である。ここでは、中小企業の強みを活かして成功した3社の事例を紹介しよう。

独自のブランド製品を生み出しHP販売に成功

A社は下請け色が強い板金加工業の企業であったが、自社の強みを分析した結果、精密板金加工技術と、設計・切断・プレス・組立・塗装・仕上げまでの全工程を一貫生産できるという大きな2つの強みを把握した。A社は、その2つの強みを活かした経営戦略として、小口受注の顧客に対しスピーディーにオーダーメイドの製品を提供し、経営改善に成功している。新たに採用したホームページからの受注も順調で市場シェアを確立している。

地方らしさを活かした商品でECに成功

B社は、地方都市に拠点を置く調味料の製造販売を行う企業である。B社は老舗企業であり、地元の顧客に問屋を通した販売でシェアを確立していた。しかしながら、地方都市への量販店の進出が進んだ結果、大手メーカーに市場を奪われてしまった。

B社は、経営改善の戦略としてEC販売を開始した。EC販売の売れ筋商品を分析した結果、地方色が感じられる商品の売り上げが上位である事が分かった。B社は自社の強みは地方色が感じられる商品であると判断し、スピーディーに顧客ニーズに応え、広告などの投資を行いEC販売での成功を達成した。現在はEC販売市場でブランド化を確立し、広告掲載を取りやめても販売量が落ち込まないほど市場で認識されている。

デザインと品質の高さで海外を狙う

C社は、地方に拠点を置く木製玩具を製作する企業である。C社は、大手百貨店向けに木製玩具を製造していたが、時代の流れとともに顧客ニーズとギャップが生じてきていた。C社は経営改善にあたって、デザイン・企画・制作・販売まで手掛ける技術力のある企業である点と、木工玩具は丈夫で壊れにくく安全である点が強みであると把握した。

弱みとして把握されたデザインとプロモーションの不足を克服するために、新たなデザイナーを採用し、木のぬくもりと安全性をテーマにした新たな商品コンセプトのもとでプロモーションを開始した。C社の木製玩具は、国内だけでなく海外でも高く評価され、現在は、海外市場への進出を視野に入れている。

SWOT分析で自社の強み、弱みを把握し、経営目標をクリア

経営改善をする場合は、経営者が自社の強み弱みを把握する必要がある。強み弱みの分析を実施した中小企業は、経営改善の目標を達成している割合が高い。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素から自社の経営を分析していくシンプルで分かりやすいフレームワークであるSWOT分析を用い、経営戦略や改善に役立ててほしい。

文・小塚信夫(ビジネスライター)

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