2026年の定置用蓄電池(ESS)世界出荷容量を120,666MWhと予測
~再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力系統用ESSの需要増加が更に加速化する見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2020年の定置用蓄電池(ESS)世界市場を調査し、設置先別及び需要分野別、電池種別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
2019年の定置用蓄電池(Energy Storage System、以下ESS)世界市場規模(メーカー出荷容量ベース)は、前年比88.1%の14,951MWhとなった。市場拡大を牽引してきた韓国におけるESSの火災事故で、市場は大きく縮小した。一方で、韓国以外の国では、ESSの導入が着実に増加している。
ESS市場の成長を牽引しているのは、温室効果ガスの削減に向けて進められている、世界各国のエネルギー転換政策である。化石燃料の代わりに環境にやさしい再生可能エネルギー(以下 再エネ)の導入を促進する同政策を後押しに、太陽光や風力といった再エネ発電設備が急増している。
再エネの普及初期は化石燃料に比べて発電単価が高く、経済性が劣る点が課題として挙げられていたが、現在は普及の拡大と技術力の向上などを受け、地域によってはグリッドパリティレベルの価格競争力を確保しているところもある。近年は屋根に小規模の太陽光パネルを設置する住宅が増えるなど、再エネは身近なものになってきており、今後も太陽光と風力発電設備は価格競争力をベースに普及が更に加速化する見込みである。太陽光発電と風力発電は気象条件によって出力が大きく変動し、電力系統の不安定化という問題をもたらすため、再エネの安定的な系統連携と有効活用に向けた取り組みとして、ESSの重要性が拡大している。
2.注目トピック
電力系統用ESSが市場を牽引
脱原発・脱石炭による低炭素社会構築に向け、世界各国では太陽光や風力といった再生可能エネルギー発電設備が急増している。太陽光発電と風力発電は時間帯や季節、気象条件によって出力が大きく変動するため、 再エネの安定的な系統連携と有効活用のためにESSが台頭している。
ESSの位置づけは従来の非常用電源の意味合いが強かった状況から、エネルギーマネジメントのためのツールとしてのニーズが強くなりつつある。2021年以降、地球温暖化対策のパリ協定の枠組みもあり、欧州や米国等の先進国だけでなく、中国やインド等の開発途上国においても再エネが拡大基調にあるのは確実な流れであり、これに伴う形で電力系統向けESSの需要は今後更に伸びていくものと予測する。
3.将来展望
2020年は、韓国におけるESS支援策の終了、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の影響に伴う市場低迷を背景に、住宅用や企業・業務用のESSの成長率は鈍化する見込みである。一方で、北米や欧州などにおいて電力系統向けに導入が進み、ESS世界市場規模(メーカー出荷容量ベース)は前年比109.7%の16,400MWhになると見込む。
2021年以降は世界各地において再エネの導入が更に加速化する見込みで、系統調整や平準化対策としてESS への需要も急増し、2026 年のESS世界市場規模は120,666MWhになると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2020年4月~8月 2.調査対象: 日本及び海外の定置用蓄電池(ESS)関連メーカー 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談取材、ならびに文献調査併用 |
<定置用蓄電池(ESS)とは> 本調査における定置用蓄電池(ESS:Energy Storage System)とは、リチウムイオン電池(LiB)、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、レドックスフォロー電池(RF電池)、NAS電池といった化学的エネルギー貯蔵システムをさす。 設置先・需要先別では、住宅用(戸建住宅やマンション、集合住宅向け)や、電力系統用には系統安定用途(発電所・変電所設置、再生可能エネルギー電源併設)向け、マイクログリッドシステム向け、企業・業務用はBCP対策(医療・福祉・介護施設等設置)、大口需要家向け(工場、ビル等)、携帯電話基地局・UPS用の定置用蓄電地を対象とした。 |
<市場に含まれる商品・サービス> ESS、定置用リチウムイオン電池、定置用鉛蓄電池、定置用ニッケル水素電池、定置用レドックスフロー電池、定置用ナトリウム二次電池 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 定置用蓄電池(ESS)市場の現状と将来展望 |
発刊日 | 2020年08月31日 |
体裁 | A4 231ページ |
定価 | 180,000円(税別) |
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