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鳥取銀行 法人コンサルティング部 永井圭介氏

日本M&Aセンターが行うM&A大学。
その卒業生として最前線で活躍するOB・OGバンカーにインタビューする企画の第3弾。
今回は鳥取銀行 法人コンサルティング部 永井圭介氏にインタビューした。

M&A大学とは
日本M&Aセンターが協業する地域金融機関に向けて行う、研修・出向制度。M&A大学入学者(地銀からの出向者)はM&Aシニアエキスパート研修(JMAC)、評価・概要書研修などの座学と日本M&AセンターとのコンサルタントによるOJTなどを経て、自ら顧客への提案からM&Aの成約、契約の締結までを完結できるM&Aコンサルタントとなることを目指す。

――鳥取銀行でM&A、事業承継コンサルに取り組まれているのは何名くらいですか?

永井:全部で6人です。なお、法人コンサルティング部は18人体制で、M&A・事業承継を担当するチームのほか、ビジネスマッチング等複数チームがございます。

最も経験が長いメンバーで9年、次が6年といった具合です。当然、法人コンサルティング部の部長も「事業承継・M&A」の経歴が長く、そこから少し空いて私の代からここ数年で毎年1人ずつぐらい増員しているという感じです。

M&A大学で学んでみて思うこと

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毎年増員されている法人コンサルティング部

――M&A大学に行くかたちで出向が決まったときは、どのようなお気持ちでしたか。

永井:私はそれまで営業店に在籍していました。当時は、事業承継やM&Aに関わる案件は、最初は一般的な知識で少しお客様とお話をして、専門的なところは「法人コンサルティング部」が引き継ぐという形でした。

引き継いだ時点で「法人コンサルティング部」がM&A業務をすべて行っていましたので、営業店と「法人コンサルティング部」が協力することもありませんでしたので、本部との仕事上での交流は全くありませんでした。

ですから、異動が決まったと聞いたときは正直に申し上げて不思議な気持ちでしたね。

異動の辞令が出たので本部に連絡をして「春からお世話になります」と挨拶したら、「そこからさらに出向してもらうから」と言われまして、日本M&Aセンター様のお名前は、実はその時初めて聞きました。

そういった経緯があり、事業承継やM&Aに携わる部署での勤務は、自分で希望していたというわけではありませんでした。 今思い返せば、手前味噌ながら、お客様に対し事業承継やM&Aに関わる話を下手なりにさせてもらっていたのを評価していただいたのかなという感じです。

――M&AセンターのM&A大学に来ていただいて良かった点を教えていただけますか?

永井:先ほどお話した通り、M&Aの業務・実務について全く無知の状態から出向さていただいたので、座学をはじめ、すごくベーシックなところから教えていただけたことは良かったと思います。中でも、一番良かったと感じたのは実際に日本M&Aセンターのお客様と面談をする場所に何度も同席させていただいたことです。

また、個人的な感想ではありますが、日本M&Aセンターの皆様が本当に全国各地を飛び回っているような働き方をされているのを目の当たりにできたのも鳥取銀行では得られない体験でした。

我々は、良くも悪くもこの地元密着というか、地元から大きくは出て行かない分、鳥取県内のお客様に対し深掘りしていくという営業スタンスです。世の中に日本M&Aセンター様のように仕事の仕方をしている人たちもいるというのを、頭では理解していましたが、その姿を実際に見るとやはり非常に刺激的でした。

――M&A大学の座学を通して、良かった点はありましたか?

永井:そうですね。一度座学を受けたあとに、それを現場で活用できる機会が訪れた時は、座学で学んだことが非常に役に立ちましたね。いただいたテキストやいろいろな資料は、M&A大学の研修期間中はそんなに使うことはなかったのですが、実際に現場で業務をやっている今、こういう時はどうするんだったかな、というときに確認ができるので、非常に助かっています。

――他の地銀の方も出向されていたと思いますが、横のつながりはありましたか? その関係性は今も続いていますか?

永井:戻ってしばらくのころは、「そちらではコロナの影響はどんな感じですか?」など、何人かと結構、情報交換をしていましたね。近場の方については、今後もお会いできる機会もあるかと思いますので、困ったときにはちょっと助けてもらおうかなと思っています。

コロナ禍で鳥取が新しい働き方の場に

――鳥取でのコロナの影響は落ち着いてきましたか?

永井:そうですね。コロナの影響によって日本各地の観光業・輸送業に影響が出た時、我々も、鳥取県内には鳥取砂丘や温泉地などをはじめいくつかの著名な観光地があるため、最初はそういうところが大変になるのではないかと考えておりました。

もちろん観光業にも少なくない影響があったのですが、今はそちらよりもむしろ製造業への影響が非常に大きいなと実感しているところです。大阪に本社のある企業が鳥取工場で100名以上人員調整をするとか、そうした話も実際に出てきていて、地元でも大きく取り上げられています。

事業者さんとお話をしていても、やはり製造業の会社様は5〜6月ぐらいからモノの流れが止まってしまっていて、工場が全然動かせていないという話を実際に何件か伺っております。コロナによって全ての業界に少なからず影響が出ていますが、私が知っている限りではそういう業界のほうが、ダメージが深刻なのかなと思います。

――コロナ禍で厳しい状況が続いていますが最近、鳥取に明るい話題があれば教えてください。小さなお話しでもいいのですが。

永井:そうですね。まだちょっと具体的な形にはなっていないとは思いますが、明るい話題もあります。このコロナ禍で、大都市、都心部にオフィスを構える会社の中には、オフィスに出社しなくてもいいという制度を設ける会社がいくつかあり、この鳥取という地方が新しい働く場所として候補に挙がりつつあるという、うわさ話し程度ですけど、そういうことが聞こえてきました。

実際に、県内の会社さんでもテレワークを始めたりして、そういう環境が整いつつあるというので、それを活かしていければいいのかなとは考えています。

学んだことが現場で即戦力になった

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日本M&Aセンター出向当時の永井氏(写真右)

――出向から戻られて、すでにいくつかの現場を経験されていると思いますが、初めての案件の思い出など、印象に残っていることがあれば教えていただけますか。

永井:出向から銀行に戻ってすぐに、進行中だった案件を一つ担当させていただきました。ただ、そこは正直、業種というか会社の性質上、お相手を探すのがちょっと難しいと思われるところでした。

そこで、以前ヒアリングさせていただいて「支店を広げていきたい」という事業展開を考えられていた会社様を、私のほうでネームクリアをさせていただき、それがうまくいって無事成約したという事例があります。

最近、その買い手様にヒアリングする機会があり、M&Aで一緒になった会社に対し、賞与などの待遇改善をしていただいているというのを知りました。そこで初めていいことができたな、という達成感がありました。本当につい最近のことなので特に印象深いです。

――M&A大学で学んで、本部に戻られて、初めて案件をゼロからクロージングまで担当したときの感想はいかがでしたか?

永井:M&Aセンターさんにお世話になっていた頃、クロージングの手続きを横で見させていただいたことがありましたが、正直、そのときは必要な書類をたくさん用意されているのを見ても、「何をしているんだろう」という感じでした。

自分でいざそれを実際にやってみようとしたとき、そういえばあのとき書類を準備していたなとか、こういうところは司法書士の先生にお願いしていたなとか、そういうことを思い出しました。初めてにしては比較的スムーズにできたかなとは思っています。間接的にではありましたが、やはり、一度でも横で一通り見ていたのが非常に役に立ったなと思いました。

――M&Aセンターという会社についての印象はいかがでしょうか。

永井:まず役職者には「非常に豪快な方が多いな」という印象があります。また、役職者と現場の方の距離感は、少なくとも我々の職場と比べても結構近いのかなと思います。

例えば上席の方であっても社員の方を「○○さん」と呼んだり、メールのやりとりなども非常に密につながったりしているところから会社全体で一体感があるなあ、と思いました。トップの三宅社長も推進力のある方なので、それで自然にみんながそちらの方向に、ものすごいスピード感で進んでいく組織なのかな、と思いました。

――今後、M&A大学に行かれる方へ、入学前にやっておいた方が良いことがあれば教えてください。

永井:これは我々のオペレーションの話になるのですが、一年ぐらいM&Aや事業承継に対し自分たちがどういうふうに動いているのかを分かった上で出向させていただいたほうが良かったかなとは思います。

というのも、M&A大学にいるとき、講師の方から「鳥取銀行さんでは、これはどうしているの?」などと言われても、そのときの私は、自行のやり方を全く知らなかったので、答えることができませんでした。

そうした経験もあり、我々以外のやり方でこんなやり方があるんだ、とか、そういうふうに思える段階で行かせていただいたほうが面白かったのかなと帰って来てから思いました。