M&A
(画像=hquality/stock.adobe.com)

会社の今後を考える際に、M&Aの活用を検討する経営者は多いだろう。M&Aには、売り手と買い手の双方にメリットとデメリットがあるため、それらをよく考え合わせた上で行うことが重要だ。この記事では、M&Aの売り手と買い手それぞれにとってのメリット・デメリット、およびM&Aの手法別のメリットを徹底的に解説する。

目次

  1. M&Aのメリットとは?
    1. 売り手にとってのメリット
    2. 買い手にとってのメリット
  2. M&Aにはデメリットもある?
    1. 売り手にとってのデメリット
    2. 買い手にとってのデメリット
  3. M&Aの手法別のメリット
    1. 株式譲渡のメリット
    2. 事業譲渡のメリット
    3. 会社分割のメリット
    4. 資本業務提携のメリット
  4. M&Aはメリットとデメリットを考え合わせて検討しよう

M&Aのメリットとは?

最初に、M&Aの売り手と買い手のメリットをそれぞれ見ていこう。

売り手にとってのメリット

M&Aの売り手にとってのメリットは、以下のとおりである。

・事業承継の問題を解決できる
M&Aの売り手のメリットとして第一に挙げられるのは、事業承継の問題を解決できることである。近年中小企業経営者が高齢化しており、事業承継は大きな課題となっている。経営者の子どもが会社を引き継ぐ意思がない、あるいは経営者に適していないなどの理由で後継者が見つからず、廃業せざるを得なくなる中小企業が増えている。

M&Aは、事業承継の手段として有力な選択肢になる。優良企業に会社を売却することによって、事業承継問題を根本的に解決できるからだ。

・従業員の雇用や独自の技術・ノウハウを守れる
会社を廃業すれば、これまで仕えてくれた従業員の雇用は失われることになる。また、従業員によって長年にわたって培われてきた技術やノウハウも失われる。このことはその会社だけでなく、社会にとっても大きな損失と言える。

M&Aによって事業を継続できるとなれば、従業員の雇用や技術・ノウハウを守れる。

・事業がさらに拡大することもある
M&Aで会社を売却すれば、事業を継続できるだけでなく、拡大・発展することもある。大企業が買い手となれば、それまではなかった大規模な資本やインフラを事業に投下できるからである。従業員も、給与や福利厚生が改善されて、モチベーションアップにつながるケースも多い。

・廃業費用がかからない
廃業には、かなりの費用がかかる。設備や在庫の処分費用や税務処理費用、それに従業員に対する補償も必要だ。しかしM&Aで事業が継続すれば、それらの費用はかからない。

・創業者利益を得られる
M&Aの大きなメリットとして、創業者利益を得られることも挙げられる。会社の売却代金である創業者利益は、一般的に会社の利益の数年分になることが多く、創業者は多額の現金を手にすることができる。それによって、その後の人生を豊かに過ごす、あるいは新規事業へ投資するなど、さまざまな選択肢が生まれる。

・個人保証から解放される
会社債務の個人保証は、中小企業の経営者にとって大きな負担になる。会社を売却すれば個人保証から解放されることも、M&Aのメリットと言える。

・主力事業に集中できる
M&Aでは、会社のすべてではなく一部の事業のみを売却する「事業譲渡」や「会社分割」も選択できる。不採算事業を売却すれば、得られた売却益やその事業に投入していた経営資源を主力事業に投下できるようになる。それによって、主力事業の業績アップを期待できる。

買い手にとってのメリット

M&Aの買い手にとってのメリットは、以下のとおりだ。

・経営資源をスピーディーに獲得できる
買い手にとってのM&Aのメリットとしてまず挙げられるのは、経営資源をスピーディーに獲得できることだ。どのような事業でも、一定の水準まで成長するまでには時間がかかるし、失敗のリスクもある。すでにその水準にある会社を買うことによって、経営のスピードアップを見込める。

・事業規模を拡大できる
企業にとって、事業規模が大きいことは大きなアドバンテージになる。規模が大きいことによって、仕入れコストを引き下げられる、設備の稼働率を引き上げられるといったメリットがあるからだ。M&Aで会社を買えば、時間と労力をかけずに事業規模を拡大することができる。

・事業を多角化できる
一般的に、企業にとっては事業の多角化も大きな課題だ。事業を多角化することで、収益の安定性が高まるからだ。M&Aで会社を買えば、事業の多角化を短期間で達成することができる。

・弱点を補強できる
M&Aによって、弱点を補強することもできる。例えば、製品開発には強いが販売は弱いという企業なら、販売網を持つ会社を買うことで弱点を素早く補強できる。

・自社にない技術を取り込める
M&Aで会社を買うと、人材や技術、特許、ノウハウなどを得られる。それによって、自社にない技術を取り込むことができる。

・シナジー効果が得られる
「シナジー効果」が得られることも大きい。シナジー効果とは、複数のものが組み合わさることによって、足し算以上の成果を得られることだ。

例えば、独自の営業ノウハウを持つ会社を買収すると、既存事業の営業成績まで向上することがある。会社の買収は、シナジー効果を狙って行われることも多い。

・節税対策ができる
M&Aは、節税対策になることもある。例えば、繰越欠損金を抱える会社を買収すれば、その分支払う税金は少なくなる。また税率の低い国の会社を買収し、そこを本社とすることで、合法的に節税を図る企業も多い。

M&Aにはデメリットもある?

M&Aには、デメリットやリスクもある。M&Aの売り手と買い手それぞれのデメリットやリスクを見ていこう。

売り手にとってのデメリット

売り手にとってのデメリットやリスクは、以下のとおりだ。

・従業員の不満が出ることがある
長く勤務し、会社や経営者に愛着を持っている従業員は、会社が売却されることでモチベーションが低下し、不満が出ることがある。最悪の場合、優秀な従業員が離職してしまうリスクもある。

・取引先の反発が出ることがある
会社の売却によって取引先からの反発が出て、最悪の場合は取引が中止になるリスクもある。会社の売却によって経営体制が変わり、契約条件や担当者が変わることがあるからだ。

・最適な買い手が現れないことがある
M&Aは、相手があってはじめて成立する。売却したくても、希望する価格や条件で買収してくれる企業が見つからないこともある。買い手が見つからないケースは、将来の収益性に不安があると判断される場合に多い。

・従業員の待遇が低下することがある
買い手側の業績や待遇の条件によっては、従業員の待遇が売却前より低下することもある。待遇の低下を防ぐためには、従業員の待遇の条件について買い手側としっかり交渉しておく必要がある。

・企業文化の融合がうまく行かないことがある
買収された会社は、買い手企業のシステムやルールに従わなければならないケースが多い。しかし、企業文化が大きく異なる場合は、システムやルールの融合がうまく行かないこともある。

・経営者としての肩書がなくなる
会社を売却すれば、経営者は経営者ではなくなる。「社長」の肩書がなくなることに、寂しさを感じる経営者は少なくないだろう。

買い手にとってのデメリット

買い手にとってのデメリットやリスクは、以下のとおりだ。

・想定していたシナジー効果を得られないことがある
買い手にとってのM&Aのデメリットとしてまず挙げられるのは、想定していたシナジー効果を得られないケースがあることだ。シナジー効果を得られないと、規模が拡大したことによる管理コストばかりが増大し、結果として収支がマイナスになることもある。

・優秀な人材が流出してしまうことがある
会社の買収では、労働条件の変更や社内のゴタゴタなどが発生するため、従業員にとっては精神的な負担が大きい。そのため、買収後に活躍してもらうはずだった優秀な人材が流出してしまうリスクがある。

・簿外債務や偶発債務が発覚することがある
会社の買収にあたっては、買収先の会社の財務状況や事業内容を徹底的に調査するデューデリジェンスが実施される。しかし、それでも簿外債務や偶発債務が発覚することがある。

・最適な売り手が見つからないことがある
企業は、自社の経営戦略に則り、目的を持って会社を買収する。しかし、M&Aが相手あってのものだけに、最適な売り手が見つからないこともある。

M&Aの手法別のメリット

M&Aには、複数の手法がある。それぞれのメリットを見ていこう。

株式譲渡のメリット

株式譲渡とは、会社の株式を買い手企業に売却する手法である。株式を売却するだけなので、他のM&A手法と比較して手続きが簡単なことが主なメリットだ。また、売却益にかかる税金が後述の事業譲渡などに比べて少ないため、より多くの売却益を得られることもメリットと言える。

事業譲渡のメリット

事業譲渡とは、会社の一部の事業のみを売却することである。不採算事業のみを切り離して売却することができるため、会社の経営戦略の一環として行えるのがメリットだ。買い手企業にとっては、負債など希望しない資産の引き継ぎを拒めることがメリットになる。

会社分割のメリット

会社分割とは、ある事業を別会社として分割した上で売却することである。債権者の同意がなくても進められることが主なメリットだ。買い手企業にとっては、対価を株式で支払えるケースがあることもメリットと言える。

資本業務提携のメリット

資本業務提携とは、会社が互いに相手の株式を取得し、かつ業務提携を行うことだ。お互いの資本や技術などを活用できるため、シナジー効果が期待できることが主なメリットだ。会社の支配を目的としないため、会社の独立性を保てることもメリットと言えるだろう。

M&Aはメリットとデメリットを考え合わせて検討しよう

M&Aの売り手にとっての最大のメリットは、事業承継の問題を解決できることである。後継者を親族や従業員などから見つけられずに、M&Aによって事業承継を行う会社は多い。廃業せずに事業承継を行えば、従業員の雇用や培ってきた技術・ノウハウを守ることができ、さらに創業者利益を得ることもできる。

ただし、M&Aでは従業員の不満が出ることがある、また、企業文化の融合がうまく行かないことがあるなど、デメリットも少なくない。M&Aはメリットとデメリットをよく考え合わせて、慎重に検討しよう。

文・高野俊一(ダリコーポレーション ライター)