2019年度の歯科用機器・材料市場規模は、前年度比1.0%増の2,683億55百万円
~CAD/CAM冠など補修用歯科材料の保険適用拡大、介護分野での口腔ケア製品の好調などで拡大へ~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の歯科機器・材料市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
国内歯科機器・材料市場規模推移
1.市場概況
2019年度の国内歯科機器・材料市場規模(販売元出荷金額ベース)を前年度比1.0%増の2,683億55百万円と推計した。品目別に市場をみると、歯科機器市場は949億37百万円(前年度比0.8%減)、予防歯科関連製品市場は240億63百万円(同3.7%増)、歯科材料市場は1,219億64百万円(同2.1%増)、歯科用薬品市場は65億80百万円(同0.3%増)、歯科用インプラント市場は208億10百万円(同0.7%減)であった。
歯科材料では、CAD/CAM冠などの修復材料のオールセラミックスやジルコニア材料、切削加工用レジン、ボンディング材などが好調に推移している。歯科用インプラントについては、数量ベースで横ばいから微増推移しているものの、納入単価の伸び悩みから市場規模は微減となった。
また、予防歯科関連製品では、医療介護分野における患者の口腔ケアがクローズアップされており、また通信販売も好調に推移しており、市場は活性化している。
2.注目トピック
新型コロナウイルス感染症の影響について
歯科診療所の患者数及び収入については、元来3月度は通常月に比べ、増加する傾向にある。そのため、新型コロナウイルス感染症の影響は、表立って表面化しなかったようであった。しかし、実際には2020年3月から4月初めにかけて、診療の一部キャンセルや定期健診・メンテナンス患者の来院延期など、患者数が少しずつ減少していた。4月に緊急事態宣言が発令され、患者数は明らかに減少傾向に転じ、来院患者数は前年同月比2~3割減、もしくはそれ以上減少してきたものと推測される。定期検診・メンテナンス患者が診療の延期により減少したことで住宅地に診療所を構える施設に影響が出始め、リモートワーク・在宅勤務の拡大により駅周辺の都市型診療所の患者数が減少してきた。
日本歯科医師会においても新型コロナウイルス感染症に対応するため、8 月に「新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針第1版」を公表し、政府側においても5月診療分の診療報酬等の概算前払いや、医科・歯科医療機関向けに「感染拡大防止等の支援」(支援金)、「コロナ対応従事者慰労金」(慰労金)が盛り込まれることとなり、支援金については、感染拡大防止等の支援、人件費除きすべて対象とし、無利子枠、無担保枠を盛り込んだ支援体制となっている。緊急事態宣言が解除された後、徐々に患者が戻りつつあるが、再び感染者数が増加する中、先行き不透明感がより濃くなっていると言わざるを得ない。
この先、新型コロナウイルスの影響は長期にわたると予想され、歯科診療所については特性上、定期継続患者数の増加のためには時間を要することからも、①補助金の申請、②運転資金の確保(金融機関との交渉)、③納税の猶予の申請、④感染者が出た場合のマニュアル、⑤患者数減少による人員配置の配慮といった対策が必要になる。関連製品の製造・販売元企業については製品の販売だけではなく、これらを総合的に支援する体制を構築することが求められる。
3.将来展望
2020年4月の診療報酬改定については、基本診療料に加え、処置や手術、歯冠修復・欠損補綴の点数が引き上げとなるほかは、歯科治療の需要はあるものの、口腔機能の管理(維持・回復)に重点を置く改定内容となっている。また本格的な高齢化社会の到来に対して、合併症・副作用を含む全身的な疾患や加齢に伴う口腔の変化、自立度の低下などが予測できることから、歯科治療の難度・リスクに備える必要に迫られている。
2020年度の国内歯科機器・材料市場については、基礎的技術項目の診療報酬引き上げや、CAD/CAM冠の大臼歯への保険適応拡大をはじめとする新技術の導入による市場拡大が期待がされていた。しかし、新型コロナウイルス感染症による患者数減少が歯科診療所に大きな影響を与えており、感染管理対策製品を中心に一部製品群で市場が拡大するものの、2020年度の市場規模は減少せざるを得ない見通しである。
調査要綱
1.調査期間: 2020年4月~8月 2.調査対象: 歯科機器、歯科材料、歯科薬品、歯科用インプラント、予防歯科関連製品の製造・販売元企業 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面接取材、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用 |
<歯科機器・材料市場とは> 本調査における歯科機器・材料市場とは、歯科診療所・病院、歯科技工所で使用されるクラスⅠ~Ⅳまでの医療機器・材料に加えて、一部の医薬品、医薬部外品を対象とし、下記の54品目で算出した。但し、医薬品、医薬部外品はメーカー、卸、通販等の歯科診療所・病院、歯科技工所専門の流通を経由する製品であり、ドラッグストア等で販売されるコンシューマー向け流通製品は含まない。 歯科機器(チェアユニット、パワーユニット、光重合レジン照射器、超音波スケーラー、デンタルX線装置、パノラマX線装置、X線CT、デジタル画像システム、マイクロスコープ、歯科用レーザ、高圧蒸気滅菌器、電子カルテ/医事会計システム、根管治療器具、CAD/CAMシステム)、歯科材料(複合レジン、ボンディング材、充填用グラスアイオノマーセメント、コンポマー、床用レジン、義歯床裏装材、アクリル系レジン歯、硬質レジン歯、オールセラミックス、歯冠用硬質レジン[切削修復用レジン材料]、金属焼付ポーセレン、各種合着材・接着剤、各種印象材・埋没材、各種歯科用金属、矯正材料・装置)、歯科用薬品(局所麻酔剤、フッ素洗口剤、歯周療法剤、ホワイトニング材)、歯科用インプラント(人工歯根、再生医療関連製品)、予防歯科関連製品(歯ブラシ、歯間ブラシ、電動歯ブラシ、洗口液、歯磨き剤、食品[ガム・タブレット]、PMTC関連製品、フロス、家庭用フッ素塗布ジェル、義歯洗浄剤、水流式口腔洗浄器、義歯ブラシ) |
<市場に含まれる商品・サービス> 歯科機器、歯科材料、歯科用薬品、歯科用インプラント、予防歯科関連製品 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 歯科用機器・材料市場の現状と将来展望 |
発刊日 | 2020年08月27日 |
体裁 | A4 518ページ |
定価 | 120,000円(税別) |
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