近年、中小企業の事業承継問題の深刻化が懸念されている。経済産業省の発表では、後継者不在の中小企業の比率が全体の約66%で、3社に2社は後継者がいないとされている。さらに、10年間で127万社が廃業しその約半数は黒字経営という数字が出ている。

こういった状況で、M&Aは事業承継の選択肢の一つとして認識され始めており、今回のコロナ禍でさらにM&Aの需要が高まり、 企業規模に関わらず、日本国内外で活発になってきた。一般的になってきたからこそ、M&Aを求める顧客のニーズも多様化している。

 M&A仲介のリーディングカンパニーである株式会社日本M&Aセンター 常務取締役 関連事業管掌の大槻氏に、多様化するM&Aニーズに対応するための同社の総合的サポートや日本M&Aセンターがグループで目指す「最高のM&A」について伺った。

大槻 昌彦
株式会社日本M&Aセンター 常務取締役 関連事業管掌

大槻 昌彦(おおつき・まさひこ)
横浜国立大学教育学部卒。住友銀行(現・三井住友銀行)へ入行。2006年、日本M&Aセンター入社後、主に譲受企業側のアドバイザーとしてM&Aに携わる。2010年、取締役 法人事業本部長、2019年に常務取締役 関連事業管掌に就任。

M&Aに関連する包括的なサポートがM&A「成功」のカギとなる

M&Aを「成功」に導く総合的サポートの重要性とは?
株式会社日本M&Aセンター 常務取締役 関連事業管掌 大槻 昌彦氏

-M&Aの一般化によりニーズが多様化していますが、多様化するニーズに対応するために必要なことは何ですか?
基本的にM&Aは、「受託」⇒「企業評価」⇒「マッチング・トップ面談」⇒「交渉・成約」のフェーズに分かれます。一般的なM&A仲介会社やFAは、この段階をサポートすることでM&Aを「成約」に導いてみます。

一方で、日本M&Aセンターは、多様化するニーズの傾向から、M&Aプロセスの中で必要な機能として、オンラインマッチング、企業評価、事業承継のコンサルティング、投資ファンド、成約後のPMIの5つの分野を専門的に支援するグループ会社として編成しています。各グループ会社が一般的なM&Aの支援だけでなくM&A前後のフェーズ「事業承継支援」及び「PMI(Post Merger Integration)」も専門的にサポートすることで、包括的なサポートを実現しています。

この包括的、専門的なサポートが多様化するM&Aに対応するとともに「成約」だけでなく「成功」に導くM&Aを実現しています。

-M&Aの包括的な支援についてポイントを教えてください。
日本M&Aセンターは29年のM&Aの支援の経験から、以下の図のように、M&Aの各フェーズと企業規模(事業規模)における支援をグループで包括的にサポートしています。

日本M&Aセンターは、基本的なM&Aの流れである「受託」⇒「企業評価」⇒「マッチング・トップ面談」⇒「交渉・成約」という流れで企業のサポートを行っています。その中で各フェーズの専門的な支援とあらゆる企業規模への対応のために各グループ会社が包括的に支援していることがポイントです。

M&Aを「成功」に導く総合的サポートの重要性とは?
日本M&Aセンターの総合力

① 小規模事業(個人)のM&Aの支援 【株式会社バトンズ】
近年では、売上1億円以下の企業譲渡や個人による小規模企業の買収が増えてきています。そのニーズに対応するため、株式会社バトンズは、オンラインで売り手・買い手・アドバイザーの三方向でマッチングするM&A総合支援プラットフォームを提供しています。「だれでも、どこでも、簡単に自由にM&Aができる」をコンセプトに、安価で安心なM&Aができる体制を構築しています。
バトンズの詳細はこちら

② 中立、公正な企業価値を算定する支援 【株式会社企業評価総合研究所】
多くが未上場企業である中小企業のM&Aにおいて、中立、公正な企業価値算定はM&A成功のカギを握っています。株式会社企業評価総合研究所は、税理士、公認会計士が中心となり、日本M&Aセンターの6,000 件を超える豊富な取引実績をもとに企業価値評価を行い、未上場企業の中立、公正な企業価値算出を専門的に行っています。  また、日本M&Aセンターの国内最大級の成約実績をもとに、中堅・中小企業の価値算定における「取引事例法」の価値評価システムを確立しました。「取引事例法」は、過去のM&Aから、事業内容・地域・財務指標などが似ている会社の売買事例を選定し、その売買実績に基づいて価値算定を行う手法で、中立的かつ公正に価値算定できるメリットがあります。
取引事例法価値評価システムの詳細はこちら

③ 経営者の事業承継と財産承継を総合的に支援 【株式会社事業承継ナビゲーター】
 経営者は、すべての事業承継(親族承継・社員承継、M&Aなど)を理解し、事業承継前後の全体を知ることができれば、安心して事業承継を決断することができます。事業承継前から承継後の経営者の財産承継まで総合的に支援するのが、株式会社事業承継ナビゲーターです。経営者の皆様が安心して事業承継を実行していただき、そして事業承継が公私ともに成功できるよう、支援をしています。
事業承継ナビゲーターの詳細はこちら

④ 投資ファンドによる中小企業の成長戦略支援 【株式会社日本投資ファンド】
日本には、きらっと光る中堅・中小企業が全国に無数にあります。一方で、その多くが経営人材や情報などの経営資源不足で伸び悩み、事業承継の課題を抱えています。株式会社日本投資ファンドは、そのような企業を支援し、若く優秀な人材が地元に戻って働きたいと思えるような地域スター企業の創生とIPOを支援する投資ファンドです。
事業承継ナビゲーターの詳細はこちら

⑤ 「最高のPMI」によってM&Aを「成功」に導く支援 【株式会社日本PMIコンサルティング】
PMIは、M&A後の企業結合のことです。手続きとしては、株式譲渡契約を締結すればM&Aは完了しますが、目的に沿った成果を出さなければ、M&Aは「道半ば」と言わざるを得ません。その成果を確実に創出するためのプロセスがPMIです。日本PMIコンサルティングは、日本の中堅・中小企業のPMIを数多くサポートしてきた経験をもとに、両社の感情面にも十分配慮しながらM&A後のスムーズな企業結合をサポートし、一社単独では成し得なかった企業の成長を実現する支援を行います。
日本PMIコンサルティングの詳細はこちら

 M&Aにおける様々なフェーズ、企業規模における専門的な支援に行うことが「最高のM&A」を実現するポイントです。日本M&Aセンターはこのようなグループ会社がそれぞれ専門的な役割を果たし、包括的に支援を行うことで、M&Aを「成功」に導いています。

「最高のM&A」を提供し続けることが事業承継問題解決に導く

M&Aを「成功」に導く総合的サポートの重要性とは?

-日本では、事業承継問題が深刻化していますが、問題解決には何が必要と考えていますか?*
事業承継問題の解決策の一つとして、以前よりM&Aは一般化してきています。M&A仲介ビジネスは、「M&A仲介が成約させて終わり」というビジネスではなくなったと感じます。M&Aを「成約」させることだけでは、真の事業承継問題の解決に至らないと考えています。

品質向上によって、1件1件のM&Aを「成約」から「成功」に導いていき、M&Aが安心で安全であることを中小企業の経営者に啓発していくことによって、事業承継問題が解決に向かっていくのではないでしょうか。

―M&Aの品質向上のために必要なことは何でしょうか。
 M&Aのニーズが多様化する中で、品質の向上にはやはり、すべての企業規模、M&Aの全フェーズにおける包括的できめ細やかな支援が必要であると思います。

日本M&Aセンターは、過去29年のM&Aの支援の歴史の中で、多様化するニーズの傾向から、先程紹介した5つの支援をグループとして提供しています。この5つのグループ企業は、日本M&Aセンターという会社が課題意識に基づくイノベーションを起こしてきた歴史です。グループ5社の包括的できめ細やかな支援が品質の向上、ひいては「最高のM&A」を実現すると考えています。

―事業承継問題に対する日本M&Aセンターの役割を教えてください。
 日本の経済にとって大きな損失となる黒字廃業を避けるためには、10年間で60万社をM&Aによって救う必要があります。そのために、M&Aに対する負のイメージを払拭し、より多くの企業に事業承継の選択肢の一つとしてM&Aを認識してもらわなくてはいけません。

日本M&AセンターグループはM&A仲介のリーディングカンパニーとして、グループ全体であらゆる規模の企業に対し、M&A前後の全てのフェーズにおいてしっかり支援を行うことで、高品質の「最高のM&A」を提供し、M&Aが安心で安全であることを中小企業の経営者に啓発していくことが重要です。

そういった意味では、今後私たちが果たすべき役割はさらに大きくなっていくと考えています。その役割を果たしていくことが、事業承継問題の解決、ひいては、日本経済の発展に寄与していくと考えています。