見澤直人 社長
見澤 直人 社長(42)(画像=ビジネスチャンス)

HITOWAライフパートナー:東京都港区
見澤 直人 社長

「生活総合支援サービス」といった領域で、6社・14業態の事業を手掛けているHITOWAホールディングス。同グループの中核企業としてフランチャイズ展開を主な事業としているのがHITOWAライフパートナーだ。ハウスクリーニング業態で最多の1462店舗(19年10月時点)を展開する「おそうじ本舗」のFC本部として有名な同社だが、訪問医療マッサージ業態の「KEiROW(ケイロウ)」も業界大手であることはあまり知られていない。将来的に700拠点を目指しているという同社の見澤直人社長に、コロナ禍での見通しを聞いた。(※2020年10月号「トップ直撃」より)

見澤 直人
見澤 直人
みさわ・なおと
昭和52年生まれ。HITOWAライフパートナーの前身である長谷川興産に入社後、大阪、名古屋、東京などでSVの業務に従事。その後、事務方の仕事に異動。2018年7月、代表取締役副社長、同年10月、代表取締役社長に就任。

── 訪問医療マッサージという業態は、介護が必要な方を始め、比較的高齢な方に直接触れる準医療行為のサービスです。コロナの状況下では、かなり大変ではないですか。

見澤 一つ言えるのは、今のコロナ禍ではほとんどの企業がダメージを受けているわけですから、KEiROWも業績が伸びるということはなかなか難しいです。ただそれを前提に話をした時に、KEiROWの4月の売上は前年同月比でも10%以下しか落ちていないため、比較的軽微だと分かってもらえるかと思います。もちろん当初は、我々も人に触れるサービスですから、どのような形で影響が出てくるか心配していました。しかし同じ要介護の方たちを顧客とする施設系と比べ、訪問医療マッサージは施設がクローズドになるリスクはありません、クラスターを発生させる可能性も低い。在宅のサービスであることが寄与したと思っています。

── 現在、要介護の方は国内で約670万名。その中でKEiROWが対象としている利用者の層は。

見澤 厳密な区切りはありませんが、大体要介護3~5の方が対象となります。中でもメーンとなるのが、要介護5の方々。現在約60万名いらっしゃると言われていますが、この方たちは常に身体をマッサージしてほぐしてあげないと症状が悪化してしまいます。ですから不要不急ということではなく、本当に必要なサービスとして捉えていただいている方が多いと再認識しました

── 訪問医療マッサージ自体は、コロナを問わず、高齢化が進む中で以前よりニーズが高まっていました。御社が事業として取り組まれたのはいつからだったのですか。

見澤 実はKEiROW事業は、元々はグループ会社内の直営事業として、2002年の6月に発足しています。この事業部では当時から訪問医療マッサージや予防医療マッサージを手掛けており、その後、施設系の介護事業へシフトしていきました。そしていよいよ介護の形が在宅に広がっていくとなった時に、当社へ事業移管し、訪問医療マッサージのKEiROWとしてフランチャイズ化したのです。フランチャイズ化したのは2013年の9月ですから約11年間。その間は直営で運営してきたのですが、当時はグループで手掛けていた有料老人ホームやデイサービスへの施術家の派遣、また個人宅への訪問を通じてノウハウを蓄積していったのです。

世の中の環境に左右されない底堅さが強み
▲世の中の環境に左右されない底堅さが強み(画像=ビジネスチャンス)

KEiROWはオーナービジネス 中長期での取り組みが必須

── FC展開から7年が経ち、拠点数も364カ所までになりました。将来的には700拠点を目指しているそうですが、どのように増やしていくつもりですか。

見澤 KEiROWは、オーナーは施術家たちをマネジメントするオーナービジネスです。ですからケアマネージャーへの営業をしていただいたり、皆さんとコミュニケーションを取っていただく。また申請業務をしっかり行ってもらうといった能力が問われます。そのため本部としても、個人オーナーに加盟していただいて拠点を増やすというよりは、ワンオーナーでいかに施術家を多く育て、事業を広く作れるかを重視しています。

── 中長期的に組織を作っていくイメージですね。

見澤 FCをされたい方は、自分一人で長くやりたい方と、商売としてやっていきたいという方がいらっしゃるわけです。そうした時にKEiROWについてはやはり商売として見ていただきたいですし、あとはご自身で手掛けられている事業との親和性も見ていただきたい。

たとえば今回のコロナの影響で、デイサービスなど利用者様に来ていただくサービスというのは非常に苦戦しています。しかしそこに訪問型のサービスを付加すれば、非常に親和性も高く、リスクも軽減できます。

── コロナ禍では、東京一極集中の考え方が解かれ、地方の重要性が再考されていますね。

見澤 KEiROWでもこれまで地域密着を謳ってきましたが、今回のコロナでそれを再認識しました。だからこそ、既存のオーナーに複数拠点を出してもらい、その地域に根差してもらうことも進めたい。その地域を知っている方、またその地域で色んなサービスを展開されている企業などは非常に相性が良いと思っています。

 なぜなら今後は、地元の強い企業はより地元に何かを還元したいという思いが強くなりますし、これからビジネスを始める方々も都心で始めるリスクを見ると地元でやろうと考えるからです。

主力店オーナーとの議論を開始 課題は施術家の採用と育成

── お話を伺う限り、主に法人オーナーを対象にしているようですが、実際どれくらいが法人オーナーでしょうか。

見澤 現在は36%です。以前より法人からの問い合わせは増えてきていますが、コロナ後では「既存のビジネスと別の柱を立てたい」という内容が非常に多いです。現在、複数店舗を運営するオーナーで、年商1億円を超える方もいらっしゃいます。

── 法人オーナーたちの多店舗化も課題になりそうですね。本部としてその点で取り組まれていることはありますか。

見澤 ちょうど最近の話ですが、KEiROWの主力店オーナーたちと一緒に議論する場を設け始めました。私を筆頭に本部の役員幹部で直接お話を伺い、今後チェーンをどうしていくかという会です。ここで分かってきたのが、人材採用の課題です。

現在、しっかりと計画的に施術家を採用して育成している店舗は伸びていますが、個人オーナーだとなかなかそこまでカバーできていないことが分かりました。ですからそこは本部が協力してどんどんやっていくべきだと。

── 今後のマーケットについてはどう考えていますか。

見澤 今は介護業界も在宅にシフトしているので追い風になっていますし、今後はコロナの影響で、これまでのように要介護の方々が一つの施設に集まって生活するのも難しい。また社会保障費が増大している観点からも、健康保険を使って予防を促す我々のビジネスモデルは優位に働きます。今後、高齢者の数は2050年まで続いていくわけですから、ここから20年、30年スパンで考えられるビジネスとしてどんどん広めていきたい。