世界金融危機
(画像=engdao/stock.adobe.com)

世界金融危機は、サブプライムローン問題やリーマンショックなどが関係しているが、詳細を理解していない人もいるだろう。今回は、世界金融危機のポイントを5分で読めるように解説する。記事を読み終わる頃には、世界金融危機について人に説明できるようになっているはずだ。

目次

  1. 世界金融危機とは?発端はサブプライムローン問題
    1. 影響は世界中に
  2. リーマンショックで何が起きたか――各国の状況
    1. ヨーロッパでは
    2. 新興国では
  3. 世界金融危機は日本にも深刻な影響を与えた
    1. 日本経済が影響を受けたのはなぜか
  4. 世界金融危機の前に起きた世界大恐慌とは?
    1. ヨーロッパ経済が回復するにつれて……
    2. アメリカは公共事業を活発化させた
  5. 金融危機を繰り返さないために
    1. 格差是正が叫ばれるように
    2. 金融規制の形骸化を防ぐ
  6. 過去の失敗から学ぶことが大切

世界金融危機とは?発端はサブプライムローン問題

世界金融危機の始まりは、2007年のサブプライムローン問題だ。

サブプライムローン問題は、アメリカの住宅市場で起きた。サブプライムローンとは、所得の低さや負債の多さなどによって信用力が低く、融資を受けにくい個人を対象としたローンのことである。金融機関が信用力の低い人に過剰に貸し付けを行った結果、資金を回収できなくなったのだ。

過剰な貸し付けの背景には、住宅価格は上がり続けるという「住宅神話」があったとされている。住宅の値上がりを期待した人々が住宅ローンに殺到し、審査が追い付かなくなり、ずさんな審査のままに貸し出しが行われるようになったのだ。

しかし、住宅バブルはその後あえなく崩壊する。住宅ローンの延滞率が上昇し、住宅の差し押さえ件数が増加し続ける中で、金融機関は資金を回収できなくなった。

影響は世界中に

これだけなら、影響はアメリカ国内にとどまりそうに見える。しかし、ヨーロッパにまですぐ影響が出たのは、住宅ローンの「証券化」が関係していた。

アメリカでは、住宅ローンを貸し付けた金融機関は、貸し倒れリスクを回避するために「住宅モーゲージ担保証券(RMBS)」を発行される。RMBSは投資家に販売され、投資家は元利金を受け取れる。当時、RMBSはアメリカやヨーロッパの金融機関や投資家に広く販売されており、あっという間にバブル崩壊の影響が世界中に広がることとなったのだ。

最初はサブプライムローン大手のニューセンチュリー銀行が破たん、その後フランス銀行最大手のBNPパリバがファンドの凍結を発表(パリバ・ショック)。そして、アメリカの大手投資銀行グループであるリーマン・ブラザーズは、負債約64兆円という歴史上まれにみる状況で倒産した。

これによって、世界的な金融不安が決定的となり、株価暴落や世界同時不況が起きたのだ。

リーマンショックで何が起きたか――各国の状況

リーマン・ブラザーズの破たんは、「リーマンショック」という呼び名で知られている。リーマンショックは、1930年代に発生した世界大恐慌以来の「100年に1度」の世界金融危機といわれた。リーマンショックで株価が暴落したことにより、企業や個人の資産は大きく目減りすることになった。

ヨーロッパでは

ヨーロッパでは、リーマンショックが起きる前から、世界金融危機の発生による金融市場の混乱を防ぐために、さまざまな施策が実施されていた。イギリスの大手銀行やドイツ政府は、積極的に救済買収や支援を行い、公的資金の注入を行っている。

しかし、アメリカだけでなくヨーロッパの金融機関も、高いレバレッジで投資を行っていたことをはじめ、多くの問題を抱えていた。結局、イギリスやスペイン、アイルランドなどが住宅バブルの崩壊によって影響を受けたことをきっかけに、ヨーロッパも金融危機の状態に陥った。

新興国では

リーマンショックの影響は、当初はヨーロッパやアメリカにとどまるという見方もされていた。新興国などは、国内の成長が著しいことや、アメリカやヨーロッパの金融商品の保有率が低いことから、影響があったとしても限定的だと考えられていたのだ。

しかし、金融危機は新興国にも影響を及ぼすことになる。金融危機を受けて、ヨーロッパやアメリカの投資家の多くが、新興国株式等のリスクの高い商品から、安全性の高い商品へと乗り換え始めたからだ。結果的に、新興国は経済成長を支えるだけの資金を調達できなくなった。

世界金融危機による株価の大幅な下落、通貨の急落によって、ハンガリーやウクライナ、パキスタンがIMF(国際通貨基金)の緊急融資の対象となっている。また、韓国でも著しく通貨が下落した。

世界金融危機は日本にも深刻な影響を与えた

世界金融危機は、サブプライムローン問題をきっかけとして起こり、リーマンショックによって決定的となった。当然、世界金融危機は日本にも影響を及ぼしており、当時の日経平均株価は7,000円を割り込み、リーマンショック発生から最大で41%もの下落を記録している。

日本経済が影響を受けたのはなぜか

日本経済が世界金融危機で影響を受けた理由は、アメリカ市場での日本製品の需要減だ。例えば、トヨタ自動車は、リーマンショックの影響で60年ぶりの営業赤字となった。当時、トヨタはアメリカに多くの自動車を販売していたが、リーマンショックを受けて自動車ローンを組みにくくなり、アメリカでの販売台数が減少したことで、売上が大幅に減ってしまったのだ。

2008年には、リーマンショックによって業績が悪化した自動車産業や電気メーカーなどが、派遣契約を打ち切ったことが問題となった。「派遣切り」という言葉がメディアで大々的に報じられ、生活困窮者の避難所である「年越し派遣村」が、NPOや労働組合を中心とする支援によって日比谷公園に設置された。

また、日本には資源が少ないため企業の多くは輸入資源に頼っており、資源価格が高騰したことでコストが増加した結果、日本企業の経営は圧迫された。さらに、コスト増による商品・サービスの値上げによって、日本国内での需要も落ち込むという悪循環に陥っていた。

こういった状況を受けて、日本の実質GDP成長率は2008年から2年連続でマイナスとなり、企業の倒産件数も増加した。それによって、当時の内定取り消しは、2,143人にものぼったと確認されている。

世界金融危機の前に起きた世界大恐慌とは?

2008年の世界金融危機は、1930年代の世界大恐慌としばしば比較される。その理由は、銀行破たん、株価の暴落、産業の衰退など、多くの共通点が見られるからだ。

世界大恐慌は、1929年のアメリカの株価暴落によって引き起こされた。第一次世界大戦後、アメリカはヨーロッパへの輸出量を増やし、世界経済の中心として機能していた。企業には余剰資金が潤沢に生まれ、住宅ローンや自動車ローンによってバブル経済が形成された。

この頃のアメリカの様子は、「黄金の20年代」と表現されている。

ヨーロッパ経済が回復するにつれて……

しかし、第一次世界大戦の傷が次第に癒え、ヨーロッパ経済が復活したことで、アメリカ企業の製品が大量に売れ残ることとなった。そこで一気に経済不安が広がり、多くの銀行や工場が倒産し、失業者があふれる事態に陥る。失業者は1,300万人にのぼり、失業率は25.6%に達した。なんと4人に1人が失業しているという状況だ。

当時のヨーロッパは、第一次世界大戦から立ち直るための復興費用をアメリカから借りており、アメリカが不景気に陥ったことで、ヨーロッパにも不景気の波が押し寄せた。また、当時アメリカと積極的に交易を行っていた日本も影響を受けた。

アメリカは公共事業を活発化させた

アメリカでは、ダム建設などの公共事業で失業者を雇ったり、政府が農作物を買い取るなどして経済の安定化に努めた。労働者の権利なども、この頃に大きく見直されている。それでも、回復までには10年もの歳月を要した。

世界大恐慌は、金融不安が広がったことを受け、預金者が銀行からの出金に殺到したことがきっかけで起きた。一方で2008年にリーマンショックなどを引き起こした世界金融危機は、投資家の動きによって発生した。

預金者の動きに対しては、預金を保証する制度によって、ある程度歯止めをかけることができる。一方で、投資家の動きを規制することはこれよりもずっと困難だ。世界金融危機を受けて、アメリカ経済は金融規制の見直しに取り組まざるを得なくなった。

金融危機を繰り返さないために

第一次世界大戦後の過剰生産によって引き起こされた世界大恐慌。サブプライムローン問題に端を発し、リーマンショックによって決定づけられた世界金融危機。2つの金融危機から得られた教訓は、いったいなんだろうか。

格差是正が叫ばれるように

世界大恐慌が起きた背景として、所得格差を指摘する声があった。これを受けて、アメリカは法人税率を12%から50%にまで引き上げ、所得税の最高税率は24%から91%に引き上げられた。こうして、中間所得層が多く生まれることになった。

その後、時代を経て、法人税率も所得税率も再び引き下げられている。その都度、さまざまな要求がある中で選択されてきたことには違いないが、金融危機の観点、所得格差の解消の観点から、税率については引き続き議論していくことが重要だろう。

金融規制の形骸化を防ぐ

リーマンショックが起きた背景には、金融規制の形骸化があるといわれている。そこでまず、金融機関の規制が見直された。大手銀行にはより厳しい規制が課され、世界金融危機以前と比べて、低レバレッジの投資しか認められなくなった。

日本でも、金融機関の内部監査機能が強化された。多様化、複雑化する業務のリスクを効率的に監査するため、リスクの高い分野に多くの監査資源を投入するという、リスクベース監査が実施されている。また、独立社外取締役が公平な立場からリスクを指摘する体制がとられている。

一方で、金融リスクは多様で複雑なため、どうしても金融規制は後出しにならざるを得ないという見方も広がっている。こういった見方のもと、大切なのは経営姿勢であり、金融機関で働く人々や投資家の倫理観を醸成することが必要だと指摘する声もある。

過去の失敗から学ぶことが大切

サブプライムローン問題を発端とした世界金融危機について、「最初から破たんすることは予想できたのではないか」と感じる人もいるだろう。もともと資金力のない人に、住宅は価格が上がるという想定のもと、大量の貸し付けを行ったのだ。そして、その貸し付けを証券化して世界中に販売していた。

世界金融危機を引き起こした理由には、「短期的な収益を追い求める姿勢」がある。いずれ破たんすると予想できたとしても、短期的には確かに利益が出ていたはずだ。自分に限っていえば、破たんする前に購入して売却すれば、利益を出した状態で終わることができる。最終的な損失を被るのは、他の誰かで済む。

こういった考え方が存在する限り、今後もどこかでバブルが起きては弾け、世界金融危機が起こる可能性は否定できない。金融機関で働く人々や投資家も、長期的な視点で物事をとらえるとともに、世間が金融機関や投資家の動向に注目し、間違いがあれば声をあげるようにしなければならない。

文・木崎涼(フィナンシャルプランナー・M&Aシニアエキスパート)

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