M&A
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クロスボーダーM&Aは、国境を越えて行うM&Aである。今回は、クロスボーダーM&Aに興味のある経営者に向けて、クロスボーダーM&Aのメリットやデメリット、成功の秘訣を解説する。会社の成長戦略や出口戦略の選択肢の1つとして、クロスボーダーM&Aを検討してほしい。

目次

  1. クロスボーダーM&Aとは?
    1. 国内外で増加するクロスボーダーM&A
  2. クロスボーダーM&Aのメリット2つ
    1. メリット1.商品・サービスを海外に提供できる
    2. メリット2.シナジー効果で事業が成長する可能性がある
  3. クロスボーダーM&Aのデメリット2つ
    1. デメリット1.リスクを予測しにくい
    2. デメリット2.情報収集や戦略策定が必要
  4. クロスボーダーM&Aの方法2つ
    1. クロスボーダーM&Aの方法1.三角合併
    2. クロスボーダーM&Aの方法2.LBO
  5. クロスボーダーM&Aの流れと手順
    1. 1.クロスボーダーM&Aの検討と情報収集
    2. 2.M&A仲介会社と契約
    3. 3.買収候補先の選定
    4. 4.面談、方法の検討、デューデリジェンス
    5. 5.契約
  6. クロスボーダーM&Aを成功させるポイント
  7. クロスボーダーM&Aでグローバル化をはかろう

クロスボーダーM&Aとは?

クロスボーダーM&Aとは、国際間で国境を越えて行う会社買収・合併のことだ。クロスボーダーM&Aにおいて、日本企業を外国企業に売却することを「OUT-IN(アウトイン)」、日本企業が外国企業を買収することを「IN-OUT(インアウト)」と呼び、日本企業同士のM&Aは「IN-IN(インイン)」とも呼ばれている。

国内外で増加するクロスボーダーM&A

2018年は、日本企業が外国企業を買収するIN-OUT型のM&Aが件数と金額ともに過去最高となっている。有名なIN-OUT型のM&Aとしては、ソフトバンクグループのアーム社(イギリスの半導体設計会社)買収や、三菱UFJフィナンシャルグループのアユタヤ銀行(タイの商業銀行)買収などがある。

同様に、海外投資ファンドによる日本企業のクロスボーダーM&Aも、2012年度以降増加している。海外投資ファンドとは、海外に拠点を置くファンドのことであり、投資先の1つとして日本企業が注目を集めているというわけだ。ファンドとしては、底力のある企業を見極めて投資し、企業価値を向上させた上で売却すれば、多額の売却益が得られる。

規模の大きな買収が発生すると、メディアで大きく報じられることも多い。このような背景から、クロスボーダーM&Aの認知度が徐々に高まりつつある。

クロスボーダーM&Aのメリット2つ

クロスボーダーM&Aは、海外も視野に入れたM&Aであるため、以下のような2つのメリットがある。

メリット1.商品・サービスを海外に提供できる

海外展開を図れることは、クロスボーダーM&Aのメリットであるのと同時に本来の目的とも言えるだろう。自社で独自に海外の市場調査や販路開拓を行うよりも、クロスボーダーM&Aによって海外企業を買収した方が、はるかに少ない労力で海外進出を果たすことができる。

グローバル化が進み、国境を越えて商品・サービスが行きかう状況は加速していく状況の中、自社がグローバル進出を図る1つの手段として、クロスボーダーM&Aは有効な選択肢ともなり得る。

メリット2.シナジー効果で事業が成長する可能性がある

クロスボーダーM&Aによって外国企業と連携を図る中で、新たな視点で自社の商品・サービスをブラッシュアップでき、全く新しい商品・サービスが生まれることもあるだろう。お互いの事業でシナジー効果が生まれる可能性が高いことも、クロスボーダーM&Aのメリットだ。

海外展開しやすいだけでなく、外国企業とのシナジー効果によって生まれた商品・サービスが、日本市場での競争優位性をもたらすこともあるだろう。会社に新しい風を吹き込む手段の一つとして、クロスボーダーM&Aに注目したい。

クロスボーダーM&Aのデメリット2つ

クロスボーダーM&Aは、国内M&Aとは違った問題が発生することもある。ここでは、クロスボーダーM&Aの2つのデメリットを解説する。

デメリット1.リスクを予測しにくい

日本企業同士のM&Aにおいても、当初の予定通りにM&Aが成功しないことがあるが、クロスボーダーM&Aによる外国企業との買収交渉ともなれば、予測しにくいリスクが発生することもある。

例えば、現地視察等を行ったとしても、その国が持つ特有の政治や経済のリスクを見落としてしまうこともあるだろう。日本との文化や国民性の違いに起因するリスクはもちろん、気候が異なることによる環境リスクや、スタッフの管理が行き届かない等の人的リスクなど、さまざまなリスクがある。

クロスボーダーM&Aを行うならば、想定外のリスクにも気を配り、現地の外国企業と十分な協議を重ねることが大切だ。

デメリット2.情報収集や戦略策定が必要

クロスボーダーM&Aでは、情報収集や戦略策定の必要性が、日本国内のM&Aよりも高まるだろう。

法規制の違いによって思わぬところで計画が制限されたり、会計基準が異なることから情報の見落としが生じたり、宗教的な理由で商品・サービスが受け入れられないこともあるかもしれない。情報収集を自社で行うか、クロスボーダーM&Aを専門とする会社に依頼するか、経営者としては悩みどころだ。

また、戦略策定においても、日本企業同士のM&A以上の慎重さが求められる。M&A実施後の事業計画が、リスクに見合ったリターンがあるかどうか検討することが大切だ。情報収集や戦略策定については、必要に応じてクロスボーダーM&Aのノウハウを持つ専門家や企業を活用するようにしたい。

クロスボーダーM&Aの方法2つ

クロスボーダーM&Aを実施する際には、いくつかの方法がある。ここでは、クロスボーダーM&Aの具体例として三角合併とLBOを紹介する。

クロスボーダーM&Aの方法1.三角合併

クロスボーダーM&Aでの三角合併は、2007年から解禁されたM&A手法だ。主に外国企業が日本企業を買収するOUT-IN型のM&Aで用いられている。

三角合併では、まず外国企業が日本に子会社を設立し、その後子会社が親会社の株式を取得する。続いて、子会社が持つ親会社株式と、日本企業と株式交換することで、外国企業は日本企業を子会社として保有することができる。

三角合併では、現金を用意しなくても、株式の交換によってクロスボーダーM&Aを実行できる。現金を用意しなくていいことが、三角合併のメリットだ。一方で、クロスボーダー三角合併を実施するには、日本企業側の株主総会での承認が必要となる。

クロスボーダーM&Aの方法2.LBO

LBO(エルビーオー)とは、レバレッジバイアウトの略で、大型のM&Aにおいてよく用いられる手法だ。LBOでは、買収側が売却側の資産を担保として金融機関から資金を借り入れ、買収を行う。自己資金がなくても大規模なM&Aを行えることがLBOのメリットだ。

一方で、莫大な借入が残ることで、返済リスクが高まることには注意したい。クロスボーダーM&Aを実施した後、当初予想した通りに収益が伸びなければ、返済が難しくなってしまう可能性がある。クロスボーダーM&Aの中でもハイリスクな手法だと知った上で、慎重な経営判断が必要である。

クロスボーダーM&Aの流れと手順

クロスボーダーM&Aのメリットやリスク、手法についてはご理解いただけたであろうか。ここでは、クロスボーダーM&Aを実施する際の流れと手順を解説する。

1.クロスボーダーM&Aの検討と情報収集

まず、クロスボーダーM&Aについて情報収集して理解を深めた上で、クロスボーダーM&Aを行うかどうかを検討する。この時点で、クロスボーダーM&Aの目的を明確にしておくことが望ましい。

クロスボーダーM&Aは、日本企業同士のM&Aと比べるとハイリスクであり、明確な目的や事業戦略なくして成功することは難しい。クロスボーダーM&Aの専門家や信頼できる相手に相談しつつ、慎重な意思決定が必要である。

2.M&A仲介会社と契約

クロスボーダーM&Aをすると決めたら、支援してくれる専門家を探す必要がある。望ましいのは、クロスボーダーM&Aの実績を持つM&A仲介会社だ。M&A仲介会社を活用すると仲介手数料の負担は発生するが、仲介業者の経験やノウハウに基づく支援を受けながらクロスボーダーM&Aを実行できる。

クロスボーダーM&Aを成功させることが最も大切なので、仲介業者を利用することのメリットや必要性を明確にした上で、仲介手数料を出し惜しむことはないようにしたい。ただ、クロスボーダーM&Aの実績を持たない仲介業者もあるため、仲介手数料が業界の相場とかけ離れている場合は注意が必要だ。

3.買収候補先の選定

M&A仲介会社の協力を得ながら、買収先・売却先の選定に移る。クロスボーダーM&Aの目的に合わせて、候補先を検討しよう。この時点では、固定観念に縛られず、さまざまな業界・分野の会社に目を向けることが大切だ。思わぬところで、シナジー効果を期待できることに気づくかもしれない。

4.面談、方法の検討、デューデリジェンス

買収候補先が決まったら、候補先企業の経営者や担当者と面談を行う。また、クロスボーダーM&Aを実行する上で、どのような方法を選択するかを検討する。どちらもM&A仲介会社のサポートを受けながら行うといいだろう。

クロスボーダーM&Aにおいても、日本企業同士のM&Aと同様にデューデリジェンス(買収監査)を行う。デューデリジェンスとは、買収側が売却側の会社に問題がないかどうかチェックする行程だ。公認会計士や弁護士などの専門家が、決算書や契約書等の資料を確認し、買収側の会社にレポートを提出する形式が一般的だ。

なお、クロスボーダーM&Aでも、面談や買収方法の検討、デューデリジェンスの順番は前後することがあるため、柔軟な対応が必要となる。

5.契約

お互いに問題がなければ、M&A成立の契約を結ぶ。契約を結ぶ時は、お互いの国の法律に十分配慮する必要がある。国の法律はもちろんだが、地域ごとに制定されている法律にも注意しておきたい。クロスボーダーM&Aの契約書は英語で作成することが多い。

契約締結後は、必要に応じて経営陣や社員への説明や顔合わせ等を行うことになる。クロスボーダーM&Aでは、契約が終わったからといって気を緩めず、長期的な視点を持って事業の統合を目指したい。

クロスボーダーM&Aを成功させるポイント

クロスボーダーM&Aを成功させたいなら、まずは候補先企業について十分に情報収集を行い、シナジー効果について検討することが大切だ。日本と海外では、事情が異なるケースもあるため、必要に応じて現地の人材を巻き込んだり経営陣に相談したりして、候補先企業の価値を正確に推し量ることがポイントだ。

また、クロスボーダーM&Aをやめた場合に違約金を支払うという「ブレークアップフィー条項」を設定しておくことも検討したい。クロスボーダーM&Aの話が途中で頓挫すると、日本企業同士のM&Aを検討していた時以上に損失が大きくなることも少なくない。M&Aが実現しないリスクについても、想定しておくようにしたい。

クロスボーダーM&Aでグローバル化をはかろう

クロスボーダーM&Aは、会社の成長戦略としても出口戦略にも活用できる。

クロスボーダーM&Aによって、海外進出にかかる時間を大幅に短縮できる可能性があり、シナジー効果によって商品・サービスを進化させることも期待できる。

また、出口戦略としてクロスボーダーM&Aを検討する事で、日本企業だけでなく外国企業にも目を向けることができる。特定の技術力を持つ企業ならば、価値を見いだした外国企業が高い買収価格を提示してくれる可能性もある。

経営戦略の一つとして、クロスボーダーM&Aの可能性にも目を向けていただきたい。

文・木崎涼(フィナンシャルプランナー・M&Aシニアエキスパート)

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