ワンマン経営と言えば、中小企業にありがちな経営体制だ。ワンマン経営には深刻なリスクが潜んでいるケースもあるため、特に経営者は注意をしなければならない。本記事ではワンマン経営のメリット・デメリットや、ワンマン経営の辞め方などを紹介していこう。
目次
そもそも「ワンマン経営」とは?
ワンマン経営とは、経営者が会社の舵取りを単独で行う経営体制のことだ。一口にワンマン経営とは言っても、その経営体制には以下のようにさまざまなパターンがある。
・優秀な経営者が、スムーズな意思決定のためにワンマン経営を行う形式
・経営者が従業員の意見に耳を傾けない、いわば独裁的な経営手法
・経営者ではなく、従業員の上司にあたる人物が意思決定をする経営手法
もともと、ワンマンには「横柄」や「独裁的」などの意味が含まれているものの、経営スタイルによっては必ずしも横柄・独裁的な経営環境とは言えない。特に優秀な経営者がワンマン経営を行っている場合には、従業員が納得する形で経営環境が整備されている企業も存在する。
ちなみに、ワンマンの体制を敷く企業は「ワンマン企業」、会社の舵取りをする人物は「ワンマン社長」や「ワンマン上司」のように呼ばれている。
ワンマン経営の3つのメリット
では、ワンマン経営にはどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。まずは、ワンマン経営の主なメリットから紹介していこう。
1.意思決定のスピードがはやい
意思決定のスピードがはやくなる点は、ワンマン経営ならではの大きなメリットだ。ワンマン体制の中小企業では、経営者がほぼ1人で意思決定を行うため、計画段階のものをすぐに行動に移せる。
特に流行の移り変わりが激しい業界において、意思決定のスピードは業績を大きく左右する要素。仮に意思決定が遅いと、市場参入のタイミングが遅れてしまうため、業績を伸ばすことは難しいだろう。
2.従業員に緊張感が生まれる
ワンマン企業の経営者は、会社全体に対して強い影響力を持つため、従業員には程よい緊張が生まれる。その結果、業務をこなすスピードがあがったり、ミスが少なくなったりなど、生産性の向上につながるケースは多く見受けられる。
ただし、あまりにも緊張感が強すぎると、従業員が委縮することでかえって生産性が落ちてしまうので経営者は注意しておきたい。
3.責任の所在がわかりやすい
ワンマン企業の責任の所在は、意思決定を下した人物(=経営者や上司)にある。つまり、責任の所在が非常にわかりやすいため、従業員同士が責任をなすりつけ合うことはないだろう。
経営者にとってはリスキーな経営体制に見えるかもしれないが、従業員間での不要なトラブルを避けられる意味合いは大きい。職場でのイジメなども防げるので、ワンマン経営は人材の定着にもつながる可能性がある。
ワンマン経営の3つのデメリット
一方でワンマン経営には、経営者が注意しておきたいデメリットも存在する。その中でも、以下では特に意識したい3つのデメリットを紹介していこう。
1.イエスマンが増殖し、従業員の自主性がなくなる
イエスマンが増殖する点は、ワンマン経営の最大のデメリットとも言えるポイントだ。経営者になかなか逆らえない環境下では、ワンマン社長の指示に従うだけのイエスマンがどうしても増えてしまう。
社内がイエスマンだらけになると、会社には以下のような弊害が生じるだろう。
・従業員の自主性が育たなくなる
・従業員が会社の判断ミスに気付かなくなる
・時代の変化についていけなくなる
・「ナンバー2」の人材が育ちにくくなる
このように、イエスマンが増殖すると会社にはさまざまなリスクが生じるため、従業員の育て方や扱い方には細心の注意が必要になる。
2.経営者に負担や責任が集中する
自らワンマン体制を選んでいるとは言え、経営者に多くの負担や責任が集中すると、そのうち経営者の身はもたなくなってしまう。特に経営者の能力に依存している企業は、経営者が倒れると会社も倒産する可能性が高いので要注意だ。
また、経営者の手が空きづらく、なかなか時間を割くべき業務にあたれなくなる点も、ワンマン経営のデメリットと言える。本来であれば、経営者が自ら手を下す必要がない業務については、ほかの従業員にまわすことが望ましい。
3.従業員からの信頼を一気に失くしてしまうことも
ワンマン経営だからと言って、あまりにも横柄で独裁的な支配をすると、従業員との信頼関係は一気に崩壊してしまう。その結果、多くの従業員が退社したり、生産性が大きく下がったりするような事態になれば、待っている結末は倒産だけだ。
仮に周りにイエスマンが多くても、従業員との間で信頼関係を築けているとは限らない。思い当たる経営者は、従業員の不平・不満が爆発する前に、各スタッフとの関わり方を考える必要があるだろう。
ワンマン経営のメリット | ワンマン経営のデメリット |
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・意思決定のスピードがはやい ・従業員に緊張感が生まれる ・責任の所在がわかりやすい | ・イエスマンが増殖し、従業員の自主性がなくなる ・経営者に負担や責任が集中する ・従業員からの信頼を一気に失くしてしまうことも |
上記を見てわかる通り、ワンマン経営はわかりやすい経営体制ではあるものの、場合によっては深刻なリスクに直面する。これから経営体制を検討する起業家や、経営体制を見直そうと考えている経営者などは、上記のメリット・デメリットをしっかりと見比べたうえで、自社に最適なスタイルを見極めたい。
ワンマン社長によく見られる特徴とは?対策や辞め方も解説
世の中のワンマン社長を見てみると、いくつかの共通点があることがわかる。ただし、その中にも「良い特徴」と「悪い特徴」の2つが存在するため、すべての共通点を避ける必要はない。
では、具体的にどのような特徴が見られるのか、以下で詳しくチェックしていこう。
ワンマン社長の良い特徴 | ワンマン社長の悪い特徴 |
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・意思決定や行動がはやい ・リーダーシップがある ・責任感が強い ・周りを巻き込むことがうまい | ・自分がすべて正しいと思っている ・高圧的な態度をとる ・過剰な自信をもっている ・1人で抱えこんでしまう ・気に入った従業員を優遇する |
上記の「ワンマン社長の悪い特徴」に該当する経営者は、いわゆる「独りよがり」であることが多い。いくら優れた能力を備えていても、独りよがりの経営者がワンマン経営を続ければ、前述のようなデメリットやリスクが生じてしまう。
そのような事態を防ぐには、以下の3点を強く意識することが重要だ。
・従業員に命令ではなく「相談」をする
・情報を独占せず、きちんと「共有」する
・仕事は放任せず、しっかりと「援助」する
この3点を意識するだけで、「ワンマン社長の悪い特徴」からはほとんど脱却できる。思い当たる節のある経営者は、「相談・共有・援助」の3つをしっかりと意識しておこう。
ワンマン経営を辞めるには、従業員の成長が必須
これまでワンマン経営を続けてきた企業が、いきなりその体制から脱却することは望ましくない。後継者が育っていない状況で経営者が第一線から退くと、社内の重大な業務に支障が生じるため、経営が一気に傾いてしまう恐れがある。
そのため、ワンマン経営からスムーズに脱却したいのであれば、従業員を事前に育てておくことが必須だ。早い段階から従業員の「自主性」と「責任感」を育てることで、ワンマン経営を辞めるための土台を作り出せる。
従業員の自主性・責任感を育てる方法としては、主に以下の手段が挙げられるだろう。
・必要な情報をしっかりと与える
・従業員に明確な目標をもってもらう
・会社の経営理念を共有する
・会社の経営状況を示す数字を見せる
上記のような対策に取り組めば、従業員は会社や仕事について自分で考えるようになるため、業務に必要な自主性や責任感が自然と芽生えてくる。
ワンマン経営は必ずしも悪ではない!ワンマンがハマる3つのパターン
中小企業にとってワンマン経営は、必ずしも悪とは言えない経営体制だ。たとえば、従業員が数名の小規模な企業であれば、必然的にワンマン経営が求められるようなケースもある。
また、以下の3つのパターンに該当する企業は、むしろワンマン経営のほうが望ましい可能性もある。
・経営者と従業員の間に、ナンバー2となる人物がいる
・経営者が、会社の将来性をしっかりと考えている
・経営者が従業員から信頼されている
社内に信用できる「ナンバー2」がいる場合には、その人物が経営者と従業員の潤滑油として機能するため、多少強引な経営をしても会社はスムーズにまわっていく。経営者に万が一の事態が発生した場合に、すぐさま適任の後継者を用意できる点も、ナンバー2を用意しておくメリットだろう。
また、ワンマン企業を少しでも長く続けたいのであれば、経営者は会社の将来についてしっかりと考えなくてはならない。特に事業承継をする際には、優れた経営能力をもつ「次期社長」が必要となるため、後継者の育成には力を入れておきたいところだ。
最後に従業員からの信頼についてだが、人望のない経営者はそもそもワンマン社長になることが難しい。特定の社員をひいきしたり、横柄な態度を取ったりすると信頼関係は一気に崩れてしまうため、ワンマン体制を続ける以上は「従業員との関わり方」を強く意識することが重要になる。
従業員との関わり方を意識し、できればワンマン体制からの脱却を
会社の将来を考えれば、基本的にワンマン経営は望ましくないだろう。中小企業はワンマン経営が圧倒的に多いものの、これから着実に対策を進めていけば、少しずつワンマン体制からは脱却できるはずだ。
それでもワンマン経営を選ぶ場合には、本記事で紹介したデメリットや「ワンマン社長の悪い特徴」をしっかりと見直し、今後の振る舞い方を考える必要がある。ワンマン社長の言動ひとつで、特に従業員からの印象はガラリと変わるため注意しておこう。