事業計画書
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中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
税理士・税理士事務所所長。中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

事業開始や事業拡大のための融資を申し込む際に必要となる「事業計画書」は、書き方に迷う人も多いだろう。事業計画書は、創業者の夢を語るだけでなく、具体的な事業計画を示すことも必要である。今回は、事業計画書の書き方のポイントや作成前にやるべきことについて解説する。

目次

  1. 事業計画書とは?
  2. 事業計画書の書き方に決まりはある?
  3. 事業計画書の書き方10個のポイント
    1. 1.経営者のプロフィール
    2. 2.事業の内容
    3. 3.取扱商品やサービスの内容
    4. 4.競合分析
    5. 5.収支計画
    6. 6.事業の見通し
    7. 7.取引先、取引関係の情報
    8. 8.役員、従業員の数と人件費
    9. 9.借金の状況
    10. 10.必要な資金と調達方法
  4. 事業計画を書く際によくある疑問点
    1. Q1.事業計画書はいつ準備すればよいのか?
    2. Q2.収支計画は何年分書けばよいのか?
    3. Q3.収支計画の将来の売上高はどうやって計算すればよい?
  5. 事業計画書を書く前に実施すべき3つのこと
    1. 1.融資の対象を把握しよう
    2. 2.頭の中で事業概要を説明してみよう
    3. 3.伝えたい内容を絞ろう
  6. 事業計画書で不安を感じたら専門家に相談を

事業計画書とは?

事業計画書は、日本政策金融公庫や民間の金融機関などに、融資を申し込む際に提出する書類の1つである。会社の基礎情報だけでは把握できない、事業の詳細な内容や将来性、経営者の能力などを伝える大切な書類だ。

もちろん、融資の審査は事業計画書だけで行われるものではない。過去の決算書や経営者個人の保証の有無といった定量的な要素のほか、融資の額や返済期間、保証の有無といった融資の諸条件を踏まえての総合判断となる。したがって、「事業計画書にこれを書けば審査に通る!」という裏技のようなテクニックは残念ながら存在しない。

融資をする金融機関側にとって一番大切なのは、「貸したお金を、期限までに利息付きで返してくれること」だ。融資を行う側も、安定した売上げを将来にわたって出し続けられる事業かどうかを見極めなければならないのである。

そのため、事業の将来性を確認できる事業計画書は、融資の判断材料としてかなり重要であり、特に創業融資であれば、過去の実績がないためより重要な判断材料になるだろう。

したがって、金融機関が納得する事業計画書を作成できれば、融資の成功に大きく近づくことができる。

事業計画書の書き方に決まりはある?

事業計画書の書き方は、必ずしも決まっているわけではない。日本政策金融公庫では、事業計画書(新たに事業を始める場合は創業計画書)の様式があらかじめ定められているが、書き方が決まっていない場合もある。

ただ、様式の有無に関わらず、事業計画書では以下のような経営に関わる疑問点の解消を求められる。

・何の事業なのか
・どうやってこの事業で収益をあげるのか
・どれほどの収益見込みがあるのか
・どうやってこの収益を見込んだのか

したがって、事業計画署に最低限書かなければならない項目や、力いっぱいアピールする箇所は、様式がなくともおのずと決まってくる。

事業計画書の書き方10個のポイント

ここでは、具体的な項目別に、事業計画書の書き方のポイントを紹介する。各項目は必須ではなく、必要に応じて項目を加えたり、複数の項目を1つにまとめても構わない。

事業計画書の作成様式が決められている金融機関もあるため、その点は事前に確認する必要がある。

1.経営者のプロフィール

略歴(最終学歴や職歴)、資格などを記載する。プロフィールでは、これまでの経験・経歴から、その事業を成功させられる見込みのある人物であるかどうかを確認する。

融資を受ける事業内容が、これまでの職務経験や保有資格と結びつくと評価されやすいため、関係する職歴があれば、当時の担当業務や役職なども簡記しておこう。

事業内容に関わる直接的な経験がない場合、「何を書いても意味がないのでは?」と思うかも知れないが、そんなことはない。関係のない職歴であっても、何かしら事業に関連する業務や社会経験はあるし、記載があるかないかでは印象が異なる。長く勤めた勤務先があれば、勤勉な人柄もアピールできるだろう。

2.事業の内容

事業の目的や経営理念、ビジョンなど、事業の全体像を記載する。書きたいことが多すぎてまとまらない時は、商品やサービスの特徴に直接関係のある内容に絞るとよい。例えば、美容室関連の事業で「子ども同伴可の美容室」という特徴がある場合、「〇〇地区の子育て支援」などを目的に掲げるとわかりやすいだろう。

金融機関側も「社会貢献」のような抽象的な目的よりも、商品やサービスに関係のある内容を目的に掲げた方が具体的なイメージがしやすい。

3.取扱商品やサービスの内容

具体的な商品・サービスの内容や、セールスポイント、ターゲット市場や顧客などについて記載する。新しいビジネスは、収益化の仕組みがわかりにくい場合があるので、イメージ図なども交えた簡単な説明資料も添付するとよいだろう。

4.競合分析

計画している事業の商品やサービスが、収益化できると判断した根拠を示す項目になる。市場規模やターゲットとなる顧客のニーズ、競合他社と比べて差別化ができていること、また独自のアイデアで付加価値を高めている点があれば、しっかりアピールしよう。

定型の様式で記載欄がない場合は、「商品やサービスの内容」の項目に加えるとよい。分析結果の根拠となった資料は別途添付するか、面談時に手持ち資料として持参して説明できるようにしておこう。

5.収支計画

収支計画は、一定期間の事業の収支を予想して記載する。現在の収支を記載し、その横に一定期間後の予想数値を記載することが一般的だ。収支の項目は、損益計算書を簡易的にしたものをイメージすればよい。

記載するのは売上高、売上原価、一般経費(人件費、地代家賃、広告宣伝費、減価償却費など)、利益となる。法人の場合は、人件費に経営者の給与も含めなければならない。売上原価のない事業もあれば、一般経費の内訳も業種によって違いがあるので、項目は調整しよう。

6.事業の見通し

収支計画に合わせて、事業展開の予定もあれば記載しよう。例えば、「1年目にホームページを開設する」「2年目に正社員を1人増やす」「3年目に店舗を1つ増やしてアルバイトを2人増やす」など、極力具体的な計画を示すことが望ましい。

7.取引先、取引関係の情報

取引先の情報について記載する項目である。販売先、仕入先、外注先のそれぞれの名称やシェア率などを記載する。なお、事業計画書と別に作成する「資金繰り表」で、取引先等からの現金の回収・支払いのサイクルを記載する。

8.役員、従業員の数と人件費

会社の組織体制や人件費関係を記載する項目となる。役員、正社員、パート・アルバイトなどに区別して、人数や人件費を記載する。

9.借金の状況

事業資金の借り入れや、住宅や自動車などの経営者個人のローンについて記載する。

10.必要な資金と調達方法

事業に必要な資金と調達方法を記載する。一般的には、貸借対照表の資産の部と負債・純資産の部のように、必要な資金(左側)とその調達方法(右側)に分けて記載する。

【イメージ】

必要な資金調達方法
設備資金・店舗 1,000万円
・備品  500万円
・自己資金 1,000万円
・親族からの借入 500万円
・金融機関からの借入 500万円
運転資金当座の運転資金(〇ヵ月分)
・仕入 100万円
・人件費 400万円
合計2,000万円2,000万円

事業計画を書く際によくある疑問点

事業計画を作成する際に、同じような疑問を持つ人も多い。ここでは、事業計画についての代表的な疑問と答えについて、いくつか紹介する。

Q1.事業計画書はいつ準備すればよいのか?

一般的な融資の流れは、事前相談→融資の申し込み→面談→審査→融資の決定となる。
事業計画書は、融資の申し込み段階で提出すればよいので、まずは事前相談で融資の依頼先や想定金額についての情報を収集してから作成すればよい。

Q2.収支計画は何年分書けばよいのか?

はっきりした決まりはないので、融資の事前相談の際に確認しておくとよいだろう。返済期間にもよるが、一般的には3年分から5年分を求められることが多い。事業計画書の様式で収支計画の年数が決まっているものは、それに従って記載する。

Q3.収支計画の将来の売上高はどうやって計算すればよい?

例えば、「単価×1日の販売数量×営業日数」など、業種に応じた売上高の計算方法があり、これに毎年増えるであろう販売数量の割合を決めて、将来の売上高の推測値を計算するという方法がある。

販売数量などの増加割合については、できれば類似業種のデータなどを根拠とすることが望ましいが、モデルとなるデータを見つけるのは難しいのでケースバイケースだ。

日本政策金融公庫の創業計画書の記入例では、「過去の勤務経験」を根拠に判断した割合での計算例を示している。

事業計画書を書く前に実施すべき3つのこと

融資を実行するのは、融資の担当者個人ではなく組織である。したがって、事業計画書は、言葉で直接説明できない相手にも納得してもらえるものでなければならず、余計な疑義を生じさせないように作成しなければならない。

ここでは、事業計画書を作成する前に以下の3つを実施しておくとよい。

1.融資の対象を把握しよう

融資の中には、誰でも申し込める融資もあるが、応援したい取り組みや対象者が決まっているものもある。

たとえば日本政策金融公庫の融資や、制度融資(金融機関と自治体が連携して行う融資)は、起業を応援する融資もあれば、売上拡大のための設備導入を応援するもの、働き方改革を応援するもの、災害からの復旧や経営の立て直しを応援するものなど、さまざまな融資に分かれている。

こうした特定の融資の活用を事前相談などで勧められた場合は、事業計画書も、その取り組みに合致した内容であることを念頭に作成する必要がある。

2.頭の中で事業概要を説明してみよう

事業計画書を書く前に、まずはどのような事業にするか、自分の中のビジョンをしっかり固めておこう。自分の中で明確になっていないまま作成を始めると、雲を掴むような内容になりやすく、前後の内容に矛盾が生じたり融資を受ける上で不可欠な説明が抜けてしまう可能性もある。

物事を相手に正しく伝えるには「5W1H」を意識するとよいとされるが、これは事業計画書にも応用できる。まずは自身の事業について、誰が(Who)、いつ(When)、どこで(Where)、何を(What)、なぜ(Why)、どうやって(How)といった流れで整理しよう。

3.伝えたい内容を絞ろう

事業計画書に記載すべき項目数は多いが、全項目を通じて見られるのは、最初に説明したように以下の4点である。

・何の事業なのか
・どうやってこの事業で収益をあげるのか
・どれほどの収益見込みがあるのか
・どうやってこの収益を見込んだのか

独立開業に至った思いを長々と書いたり、魅力的な文章表現を追求したりする必要はない。事業計画書に説明不足な箇所があっても、面談時に融資担当者から質問を受けるため、多少の補足はできる。上記の点を踏まえて、伝えたいポイントを絞って確実に書類に記載しよう。

事業計画書で不安を感じたら専門家に相談を

事業計画書の書き方のポイントや作成前にやっておく3つのことについて解説した。事業計画書の書き方や作成した書類に不安を感じたら、迷わず専門家に相談しよう。

事業計画書の書き方の相談先としておすすめなのは、国の認定支援機関として認定を受けている専門家である。認定支援機関からの指導・助言を受ければ、日本政策金融公庫の一部の融資を有利な金利で申し込めるなどの利点がある。

認定支援機関については、中小企業庁のホームページで公表されているので参考にしていただきたい。

中小企業庁HP「認定経営革新等支援機関」

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)

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