レジ袋
(画像=patpitchaya/stock.adobe.com)

レジ袋の有料化が7月から始まり、身近で変化を実感している人もいるだろう。これを機にプラスチックバッグの使用量が減ると考えられるが、プラスチックフィルム業界ではこれをどう受け止めているのか。ここでは、レジ袋有料化の背景を抑えたうえで、関連する業界動向を探る。

レジ袋有料化の背景

レジ袋有料化の背景には、廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの環境問題が挙げられる。これらの環境問題を引き起こす原因のひとつであるプラスチックを削減する動きの第一歩として、レジ袋を有料化する取り組みが始まったのだ。

日本のみならず国際的にプラスチックごみ削減の流れが加速しており、経産省では環境に配慮した生活の心がけを呼びかけている。

国際的な課題「海洋プラスチックごみ」

海洋汚染は、地球規模で対応していかなくてはならない課題だ。2019年に開かれたG20大阪サミットでは、全世界において2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロとする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有している。

日本では、リユース・リデュース・リサイクルの3Rやプラスチックごみの適正処理などを実践している一方で、使い捨てプラスチックの使用が多いという指摘がある。環境省ではこれを踏まえ、2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、プラスチックの排出抑制を目指している。

なぜ「レジ袋」なのか

数あるプラスチック製品のなかで、便利なレジ袋をなぜあえて有料化するのか疑問に思っている人もいるかもしれない。経産省では、「レジ袋」を有料化した理由について、国民生活に身近であり、エコバッグで代替できることから、「外出の際は常にマイバッグを携帯する」というような国民の行動変容に繋げていきやすいことを挙げている。

また諸外国でも、レジ袋から取り組む先行事例が多く、すでにレジ袋有料化を実施している国は世界に60カ国以上ある。日本でも、有料化をきっかけに消費者のライフスタイル変革が期待されているのだ。

レジ袋有料化の対象事業者

レジ袋有料化の対象事業者は、スーパー、コンビニエンスストア、百貨店などの小売業である。小売業をメインとしないサービス業でも、事業の一部として小売を行っている場合は、対象となる。

もともとは例外なくすべてのレジ袋を有料化する方針であったが、制度改正案によって例外規定が追加された。環境性能が認められる袋は、有料化の義務付けがなくなったのだ。これについては業種ごとに賛否が分かれており、例えば、汁物を扱うコンビニは歓迎しているが、スーパー・百貨店などは袋の種類が増えることに対する混乱への懸念も示している。

さらにバイオプラの袋は生産コストがかかるため、中小企業にとっては負担が大きいのもネックだ。例外規定である「含有量」の偽装や、「厚み基準」をどう店頭で判別するかなど、不安視する声もあがっている。

このように賛否あるなかで、レジ袋有料化は施行された。しかし、実際に有料化を迎えてみると、コンビニなどの小売店では、レジ袋有料化によってすでに大幅なレジ袋利用の削減がみられているほか、観光土産店などでは植物由来のバイオマス素材の袋に切り替えて、無料で提供するという対応をとるといった反応もみられ、有料化を機に、消費者の環境配慮意識は高まっているとも考えられる。

制度に賛否はあるが、まちなかでは確実に「プラスチック削減」の動きが定着しつつあるといえそうだ。

プラスチック業界は「レジ袋はエコ素材」と主張

こうなると、心配なのはプラスチックフィルム業界だ。このような時勢を受け、業界はどのように反応しているのか。

包装資材メーカー・清水化学工業は、自社サイトにて「ポリ袋は実はエコ商材なんです。」と大きく題し、ポリエチレンの素材性について訴えている。理論上、ポリエチレンはダイオキシンなどの有害物質は発生しないことや、ポリ袋は紙袋の70%のエネルギーで製造可能であること、ポリ袋は薄いため資源使用量が少量で済むことなどを理由として挙げている。

レジ袋は「使い捨てプラスチックではない」?

日本ポリオレフィンフィルム工業組合は、時代のニーズに合わせて「レジ袋」は流通・小売産業の発展に多大な貢献をしてきたことに触れ、これまで業界でもレジ袋の薄肉化に積極的に対応することでプラスチック使用量減の努力を続けてきたと主張している。かねてより環境配慮型レジ袋の開発にもいち早く取り組んできたことから、今後もその姿勢を崩さない意気込みだ。

しかしながら、今回のレジ袋有料化をきっかけとした業績悪化、雇用維持への懸念など、事業維持に対しては非常に強い危機感をもっているのも事実である。業界の努力を見捨てないでほしいといわんばかりに、国からの配慮を求めている。

さらに同組合は、使用済みレジ袋が家庭において再利用され続けていることを挙げ、“レジ袋は「使い捨てプラスチック」ではない”とも主張している。今後も、レジ袋を必要とする消費者に向け、環境に配慮したレジ袋を作り続ける姿勢だ。

プラスチックから何に変わる?素材への注目

日本ポリオレフィンフィルム工業組合では、“レジ袋そのものは何も悪くない、それに使われている素材が悪い”と指摘した。消費者が「レジ袋は便利」と思いながらも環境に悪いので使用を控えるべきと感じていることから、生分解性レジ袋、バイオポリエチレン製レジ袋、リサイクル原料を使用したレジ袋など、素材を変えた「環境に優しいレジ袋」を普及させることが、最も消費者が望んでいる道ではないかとの見解を示している。

環境問題を一番身近に捉えながら長年試行錯誤してきたプラスチックフィルム業界だからこそ、今回の“レジ袋は「悪」”という風潮には疑問を拭えない様子もうかがえる。「地球を守る」という同じ目標のもと、消費者も事業者も、皆で支えあう道をさぐりたい。

文・木村茉衣

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