ボーナス
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会社員が楽しみにしているものといえばやはり会社のボーナスである。企業側としてもなるべく社員の待遇を良くしたいところだが、毎月の資金繰りを考えるとなかなか難しい。特に大企業と違って内部留保が少なく経営基盤の安定していない中小企業は、ボーナスを削らなければならなくなる傾向がある。今回は、「ボーナスなし」にしてしまうと企業にとって「どんなデメリットがあるのか」「ボーナスはどのようにして決めるべきか」について解説していく。

目次

  1. そもそもボーナスとは何なのか?
  2. ボーナスをどのように決めるべきか?
    1. 賞与原資
    2. 個別賞与額
  3. 「ボーナスなし」にする場合のデメリット
  4. 「ボーナスなし」にするメリットはあるのか?
    1. 安定した給与を支給できる
    2. 事務負担が軽減する
    3. 経営プランが立てやすい
  5. ボーナス支給にとらわれ過ぎてもダメ

そもそもボーナスとは何なのか?

ボーナスは賞与ともいい、企業の業績などに応じて従業員に支給されるものだ。通常の給料とは別なので、その都度支給額を決めなければならない。ボーナスの支払い時期や支払い回数などにも明確な規定がないため、そもそもボーナスを支払わない企業もあれば、年に数回ボーナスを支給するところもある。一般的には「夏のボーナス」「冬のボーナス」と呼ばれるように「夏期と冬期の合計2回」という企業が多い。

労働基準法には「ボーナス支給」の規定がないため、ボーナスを支払うかどうかは企業側が決める。もちろん「ボーナスを支払う旨を明言しておきながら実際には支払わない」場合は、ただちに契約違反になってしまうので注意が必要だ。従来のボーナスは、基本給に数ヵ月分を乗じて支払う「給与連動型」がオーソドックスなものであった。

しかし近年は業績や人事評価に応じてボーナスを決定する企業が増えている。たしかに「給与連動型」のほうが、単純計算でやりやすい。しかし一律にしてしまうと「より企業の成長に寄与した社員の活躍」を軽視するのも事実であり、頑張りに応じた報酬が期待できなくなってしまう。業績や人事評価に応じて配分を決めるほうが手間はかかってしまうものの、より健全な組織づくりを目指すことができるだろう。

ちなみに余談だが、公務員にもボーナスはある。民間企業と違い、公務員のボーナスは法律や条例で定められており「期末手当」「勤勉手当」と呼ばれることが多い。また年俸制の場合は「年俸とは別にボーナスを支給する」「年俸の中にボーナスを含めて支給する」という2種類のケースがある。年俸制は1年単位で給与総額を合意し毎年更新をしていくというもので月給制とは完全に別物だ。

「年俸」と銘打ってはいるが、基本的にはそれを12等分し毎月の給料を支払うというところが多い。

ボーナスをどのように決めるべきか?

ボーナスには、「賞与原資」「個別賞与額」の2つがある。賞与原資とは業績によって決められるボーナスの支給総額だ。これに人事評価を加味することによって最終的に支払われる金額である「個別賞与額」が確定する。具体的には「業績→(業績に応じて決定)→賞与原資→(人事評価を加味)→個別賞与額が決定」という流れだ。まずは賞与原資から見ていく。

賞与原資

先ほど見てきたようにボーナス支給に関しては「業績に応じて支給額を決める」というやり方が一般的だ。ではその指標となるものは何か?ボーナス支給のための業績指標としてよく使われるのが、「営業利益」と「経常利益」の2つだろう。「営業利益」は以下のようにして求められる。

・「営業利益」=「売上総利益(※)」-「販売費および一般管理費」
※「売上総利益」=「売上高」-「売上原価」

一方「経常利益」は以下のようにして求められる。

・「経常利益」=「営業利益」+「営業外収益」-「営業外費用」

ボーナスは利益配分という考え方が根強いため、こうした営業利益や経常利益をベースにして支給額を決める企業が多い。よく見られるのが「利益比率に対応する平均支給月数を決めておく」というやり方だ。つまり利益比率が高くなるほど平均支給月数は多くなりボーナスの合計額が大きくなる。業績が良くなればボーナスも多くなるので従業員のモチベーションにもつながる。

労働者の「やる気」は、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼし、ひいては業績の多寡にも関わってくる重要な要素だ。経営者の立場としては、なるべく社員たちにモチベーションを与え続けることが望ましい。「利益比率に対応して平均支給月数を決める」という手法は、業績が悪くなった場合にも有効だ。例えばバブルやリーマンショックなど経済には好況と不況のサイクルが存在する。景気が悪くなった場合は業績もまた悪くなるのでボーナスの合計額も少なくなる。

この「業績によってボーナスが変動する」というのがミソでつまり業績悪化の場合はボーナスの金額を抑制し社員を解雇から守りつつ人件費を抑えられるのだ。こうした手法は「人件費のコントロールに最適なもの」として大手企業などでよく用いられている。

個別賞与額

上記では賞与原資について解説をした。次に個別賞与額の算出について見ていく。今まで解説してきたように業績によって賞与原資が決まりそれに人事評価を絡めることによって個別賞与額が決まってくる。一般的な算出方法は「基準額」×「平均支給月数」×「評価係数」というものだ。基準額は基本給や各種手当の合計額。評価係数は企業によってさまざまだが以下のような感じで決まってくる。

  • 評価S→評価係数は1.3
  • 評価A→評価係数は1.2

例えば上記の評価係数の場合、基準額が30万円、平均支給月数が2ヵ月、評価A(評価係数1.2)だと「30万円×2ヵ月×1.2」=72万円が個別賞与額になるといった具合だ。

「ボーナスなし」にする場合のデメリット

もちろん従業員にとっては、ボーナスはないよりはあるほうが良い。「基本給が低い上にボーナスなし」ともなればマイナスの印象を持たれることは避けられない。特に転職がしやすい若者にとっては、ボーナスのない自分の会社に不満を感じてさっさと退職をしてしまうケースも多い。第2新卒の若者は、ひとたび世の中を見わたしてみれば「ボーナスを支給してくれる会社」を簡単に探し出すことが可能だ。

ただ資金繰りの面でどうしても「ボーナスなし」になってしまうことはあるだろう。その場合のデメリットとして考えられることは、やはり「従業員が給与面での不満を抱き信頼関係を築きにくくなる」ということだ。こればかりはどうしても避けることができないデメリットでありしっかりとその課題に向き合っていく必要性が生じてくる。

またボーナスを支払わない場合は、基本給が若干高めになっている企業がほとんどだ。そうしたときに「残業代」を給料に含めてしまう企業も多い。そうすると従業員に残業代を支給できないケースが発生する。そうなればただちに労働者の不満をためることにつながりかねない。これもデメリットの一つとして数えられるだろう。

「ボーナスなし」とする場合に大切になってくるのが「どういう理由でボーナスを支払わないか」ということだ。従業員に対して真摯に理由を説明できないと社員たちは「どうしてボーナスがないのだ」という不満と同時に「ボーナスが出ないうちの会社は将来大丈夫なのだろうか」という不安を抱く可能性がある。

「社員との信頼関係をつくる」「彼らの不安を和らげてあげる」といったためにもしっかりと経営状況や方針を説明することが必要だ。この「真摯さ」がおそらく最後の砦となるだろう。「ボーナスを支払わない」「基本給も低い」でふんぞり返ったような態度を取っていればいずれその経営者についていく社員はいなくなる。

「マネー」で信頼関係をつくるのが難しいのであればまずは「ヒト」と「ヒト」のつながりをしっかりと見直してみるのが重要だ。

「ボーナスなし」にするメリットはあるのか?

それでは逆に「ボーナスを支払わないメリットはあるのか」という疑問があるかもしれない。結論からいえば「ボーナスなし」にするメリットはいくつか存在する。

安定した給与を支給できる

まずは「業績に関係なく安定した給与を従業員に支給できる」という点だ。ボーナスは業績に影響されるため、不況になれば支給額が大幅にダウンしてしまうことがある。その分「ボーナスなし」の会社は、毎月基本給を支払っているため、トータルで見れば大きくマイナスになることはない。なぜならボーナスと比べて基本給の減給は難しいからだ。

先ほど「業績に応じてボーナスが増えることは社員のモチベーションにつながる」と説明したが裏を返せば「業績に応じてボーナスが減ることによって社員のやる気が下がる」ともいえる。

事務負担が軽減する

また「ボーナスに関わる事務」をやらなくていいということも「ボーナスなし」にするメリットの一つだ。先述したように業績や人事評価に応じて個人の支給額を決定するため、作業にはそれ相応の手間がかかる。「初めからボーナスを支給しない」というスタンスでやっていればそうした事務作業をする必要もない。そのためボーナスを支給している企業に比べて負担がいくらか軽減されるだろう。

経営プランが立てやすい

また「経営のプランを立てやすい」というメリットもある。ボーナスは業績に応じて変動するため、もしも景気が悪化してしまえば予想外の損害が発生する点はリスクだ。「ボーナスなし」の場合は、基本給をベースにして社員の年収を考えるので将来の経営プランがより立てやすくなる。

このように「ボーナスを支給しない」ということは、必ずしもデメリットだらけではない。資金繰りの都合で社員にボーナスを支払えないときは、その「ボーナスを支給しない」という立場のメリットをうまく使っていきたい。

ボーナス支給にとらわれ過ぎてもダメ

「ボーナスあり」で経営がうまくいっていない会社もあれば逆に「ボーナスなしでも絶好調」というところもある。企業の価値は「ボーナスの有無」だけで測ることはできない。ボーナスを支給していようがいまいが、とにかく社員と会社のことをしっかり考えている経営者が勝つ。ボーナスがあればたしかに社員にとってはうれしいだろう。

しかし無理にボーナスを支払って資金がショートしてしまっては元も子もない。あまりボーナス支給にとらわれることなく社員のことをしっかりと考える誠実さを持つことが何よりも重要だ。

文・小西拓登(ダリコーポレーション ライター)

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