笹川 敏幸 社長
(画像=ビジネスチャンス 笹川 敏幸 社長)

経営承継⽀援(東京都千代田区)
笹川 敏幸 社長

経営承継⽀援(東京都千代田区)は、中小企業の事業承継、M&Aの促進を目的に設立された。民間仲介業者、公的機関で多くのM&A案件に関わって来た笹川敏幸社長に、中小企業の事業承継の事例や今回の新型コロナウイルスの影響等を聞いた。(※2020年8月号「専門家に聞く」より)

笹川 敏幸
笹川 敏幸
ささがわ・としゆき
1966年10月、新潟県上越市生まれ。1990年に東京経済大学経済学部を卒業後、金融機関に就職。2000年に日本M&Aセンターへ転職し、M&A業務に従事。2012年に東京都事業引継ぎ支援センターのサブマネージャーに就任。2015年4月、同社を設立し代表取締役に就任(現職)。

10分間で完結する株価査定システム開発

──大手では扱わない中小規模の企業に対し、定価化でサービスを提供しています。

笹川 M&A仲介では、決算書やヒアリングをもとに売買目安を算定し、マッチングする買手企業の候補を探すこととなりますが、当社は着手金なしの完全成功報酬制です。それもリーズナブルな価格に抑えるよう、さまざまな取り組みを行っています。

──2019年8月から「M&A 10分診断」というサービスを行っています。

笹川 これは通常、最低でも専門家のコンサルタントが手作業で10時間以上はかかる企業の株価査定を、AIを活用し、10分で完結する独自の簡易株価査定システムです。コンサルタントが業種や希望条件などを聞き取り、紙の財務諸表と合わせて読み込むだけで財務情報が自動で整理・集約されます。

──成功報酬も業界最低水準です。

笹川 当社のM&A仲介では、取引条件が整い、売り手と買い手企業の双方が基本条項を合意した際に初めて一律100万円の1次成功報酬が発生します。ただそれは成約に至った2次成功報酬に充当されるため、前払い金という位置づけになっています。1次成功報酬、2次成功報酬合わせて最低ライン500万円です。

──全国展開をしながら、この価格でM&Aを仲介する会社はあまりない。

笹川 一般的なM&A仲介では、売りたい、買いたい会社にコンサルタントが直接話を聞きに行って情報を集めますが、実際は9割がすぐには受けられない相談です。そのため、それ以外、1割の案件でM&Aが成約し収益がいただけるときに、他の活動費を乗せていただくこととなるため、手数料が高額になりがちです。そこで当社では、独自の情報ネットワークを全国に構築し、業界では珍しい「チーム制」を導入して低額な料金を実現しています。

──買い手情報収集方法は。

笹川 ルートによって異なる2つのチームが担当します。1つは、私がスタートアップから関わった全国の「事業引継ぎ支援センター」、商工会議所、また当社の株主でもある三井住友信託銀行をはじめとした全国の金融機関などをネットワークさせて情報を得るチーム。もう1つは、動きのある業界の会社を見極め、アドバイザーが直接アプローチするチームです。

独自ネットワーク通じ専門チームが一気通貫で

──独自のネットワークで情報を無料で収集できるのが強みです。

笹川 直接のご依頼では、「M&A」を検索された方がランディングページなどからネット経由で入ってこられるケースもあります。新型コロナの影響前は、ネットワークからの紹介が6割、直接依頼が4割くらいの割合でした。

──譲渡希望会社のマッチング先はどのように探すのですか。

笹川 主に買い手探索の専任チームです。豊富な経験に基づいたリサーチ方法で買い手の希望に合った候補先を探し出し、取引条件などを協議しながらまとめていく。無事、売り手と買い手の両社が合意となれば、税理士や会計士なども入って組織されたM&Aの実行部隊が、最終的な交渉や専門的なデューデリジェンス調査(買収監査)などを実施し、クロージングさせるのです。もちろん実務はチームで行うのですが、窓口の担当者は最後まで顧客に寄り添っています。

── 一人が一気通貫で担当した場合、そのコンサルタントのスキルや得意不得意よって時間がかかったりということもあります。

笹川 そこを専門チームが担えば、効率的にできるので効率的で時間も短縮できます。チーム制によって提供するサービスが均一化されるメリットもあります。また例えば、売り手を探す担当者は、マッチング先を探すことなく、次の売り手案件探しに取り掛かれるため、より多くの案件を扱うことができます。

──最低500万円という少額な仲介料を設定しているため、多種多様なM&A案件を扱っています。

笹川 もちろんM&Aの目的は、高齢な経営者の承継者難が圧倒的ではあるのですが、例えば、近年は、IT系の若い企業が、仕事は多いが人の採用が間に合わないからといって、ビッグネームの会社の傘下に入り人を充実させて成長させたいというケースも見られます。また、法人だけでなく、個人のM&A案件も増えています。

──笹川社長は、20年にわたりM&Aに関わってきました。最近の傾向は。

笹川 最近は、「事業承継M&Aは特に買う側にとって面白みがある」と考えるようになりました。経営者が高齢で後継ぎが決まらない会社の多くは「どうせ会社を閉めるしかない」という思いもあって、営業が悪くても、客が離れてもケアをせずに放ったまま。さらに事業縮小を考え、人の採用もせず、経営努力が足りていない会社も多い。

──それでもなんとか経営できる。

笹川 それは、地元にしっかりした地盤がり、そこそこの売上げと利益が出るからです。そうした会社に若い経営者が入ると、改善改良の余地ばかりが目に付きます。

──簡単なIT化で業務は効率化し、従業員のモチベーションが上がる。

笹川 こうして赤字が黒字に変わる事例をいくつも見てきました。M&Aを負のイメージと捉える方も多いですが、会社を発展させるチャンスとして、廃業を決める前にまずご相談いただきたいと思います。