株価対策
(画像=Rattana.R/stock.adobe.com)

事業承継の一環として、後継者が自社株式を引き継ぐことが挙げられます。
親族内の承継を検討している場合、自社株式を多額の金銭負担及び税コストなしで後継者に承継することを多くの経営者が望んでいます。

後継者が事業を引き継ぎたくなるような会社は、業歴が長く、利益が出ているような会社です。
後継者に自社株式を移転しようと考えた時、そのような会社の株価は高く、後継者に移転する際に多額の金銭負担及び税コストが発生すると考えられます。そのため早くから自社株対策を行う必要があります。

まずは高株価になった原因を分析することから始めよう

自社株式の評価は、1株あたりの株価×株式数で計算されます。
したがって、スムーズな事業承継を検討する上で、株価対策(株価の引下げ)及び株式数の対策(現経営者保有株式の移転)が必要です。
まず、株価対策を検討するべきでしょう。高株価になった原因を分析することから始めてみてはいかがでしょうか。

高株価の原因が特定の評価会社に該当していないか、又は一般の評価会社に該当している場合類似業種比準価額が高いのか、純資産価額が高いのか原因は様々です。

特定の評価会社から一般の評価会社へ変更されることにより株価を大幅に小さくすることができます。

前回の株式保有特定会社に続き今回は、特定の評価会社の内、比準要素数1の会社に着目しました。比準要素数1の会社から一般の評価会社への変更による株価対策についてご説明します。

比準要素1の会社の定義

比準要素1の会社とは、類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」のうち直前期末の比準要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の比準要素のいずれか2つ以上がゼロである会社を言います。

比準要素1の会社の株価は、純資産価額若しくは類似業種比準価額のウェイト25%、純資産価額のウェイト75%により算定した価額のいずれかにより評価されるため、一般の評価会社より株価は高くなります。

なぜ比準要素数1の会社に該当するのか

比準要素1の会社に該当すると一般の評価会社より株価が高くなることは分かりました。では、なぜ一般の評価会社に該当するのか、その原因を考えることは株価対策と同じくらい重要であると考えます。

【ケース1】

業歴の長い会社が数期連続で赤字となり、配当の支払いを全く行っていないことにより、比準要素1の会社に該当

【ケース2】

また、稀なケースですが、以下の状況に陥っている会社も見受けられます。

業績の良い会社の経営者が法人税の節税方法として多く活用しているのは航空機リースではないでしょうか。

確かに航空機リースは、リース事業の初期の段階で多額の損金を計上することができるため、法人税の節税の観点からは非常に効果的です。

しかし、多額の損金の取り込みにより3要素の1つである利益の項目がマイナスとなり、かつ配当の支払いを行っていない会社であれば、比準要素1の会社に該当することになります。

事業承継期を迎えた会社の場合、法人税の節税を実行したが故に相続税、贈与税の納税額が増えることになります。
これでは片手落ちの節税と言わざるを得ません。

以上2つのケースをご紹介しました。

このような業歴の長い会社や業績の良い会社は、含み益のある資産(本社ビル、収益不動産等)を保有していたり、長年の経営努力により純資産の蓄積があると考えられます。

比準要素1の会社の株価の大部分は、純資産価額が占めることになりますので注意が必要です。

比準要素数1の会社に該当しなくなる方法

2つのケースに共通する対応策ですが、定期的に配当を実施することが効果的であると考えます。

航空機リースの節税も、配当を実施していれば、2要素(配当、純資産)を満たしつつ、利益対策を行えたことになり、株価の引下げ効果は絶大です。

ただし、1株当たりの年配当金額は、10銭未満の端数切捨てですのであまりに少額な配当であれば要素を満たさない可能性があるため注意が必要です。

重要なのは、顧問税理士及びその顧客担当者が配当を実施することの重要性について気づくことができるかどうかです。事業承継期を迎えているクライアントの顧問税理士及びその顧客担当者には、法人税や消費税の知識だけでなく、資産税の知識が求められることは言うまでもありません。

まとめ

航空機リースを提案する会社は、金融機関やネームバリューのある会社が多いように思います。

当然のことですが、どのような提案にもメリットとデメリットがあり、提案する企業の属性や規模、ネームバリューに流されてはいけません。

将来を見据えた株価対策には、あらゆる視点でメリットとデメリットを考慮し、経営者自身で判断することが求められます。
しかし、判断する上で、株価評価や事業承継の専門的な知識が必要になるため、経営者が自力で学習することは現実的ではありません。

自社の株価や事業承継のことは、分かりやすくシンプルに説明することができ、かつ信頼できる税理士に依頼されてみてはいかがでしょうか。

(提供:税理士法人M&Tグループ