矢野経済研究所
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2019年の自動車アフターマーケット市場規模は19兆3,553億円

~新車販売とそれに連なる自動車保有台数の減少を見越した事業多角化が一般化、車両賃貸市場の活性化は続く~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2019年の自動車アフターマーケット市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

自動車アフターマーケット市場規模推移

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1.市場概況

2019年の自動車アフターマーケット市場規模は、19兆3,553億円と推計する。自動車流通の起点となる新車販売は晩夏の度重なる台風や10月の消費増税の影響を受け、販売台数が519.5万台(前年比1.5%減)※1に留まった。(※1.データ出所:一般社団法人日本自動車販売協会連合会、一般社団法人全国軽自動車協会連合会)

新車販売が落ち込んだ一方、中古車市場は消費増税前の駆け込み需要や台風などにより被災した車両の代替需要、輸入中古車の増加傾向などに支えられ、2019年の国内中古車登録台数は前年比で微増※2であった。また、国内の自動車保有長期化の傾向なども影響し、2018年の四輪車保有台数は過去最高の7,848万台※3となった。(※2.データ出所:一般社団法人日本自動車販売協会連合会、一般社団法人全国軽自動車協会連合会、※3.データ出所:国土交通省)

自動車保有台数は2018年も増加を維持したが、中長期的には人口動態の観点から減少は不可避であるとみる。将来的な市場縮小を見越し、自動車アフターマーケットを構成する多くの市場においては参入企業が事業多角化を進める。新車ディーラーは残価設定クレジット※4販売に注力している。ユーザーの新車購入期間を短縮化しつつ高年式車両の下取を拡充、中古車小売販売強化に繋げる。中古車販売事業者は整備施設の拡充を図り、車両購入者の整備需要取り込みを図る。カー用品店は車両販売・買取事業を拡大、整備事業者はオートリースや保険商品、レンタカー事業などを新たに展開する動きが見られる。こうした事業多角化の波は、自動車流通の各市場において新規参入企業数を増加させ、その結果として市場競争がさらに激しくなってきている。

※4. 乗用年数を予め確定することで、車両本体価格(定価)から返却時の車両の残存価格を引いた分のみを支払う車両契約形態。

2.注目トピック

黎明期の「サブスクリプション」、自動車メーカー大手も参入 

自動車定額制(サブスクリプション)サービスが注目を集めている。スマートフォンの普及により数多くのサブスクリプションコンテンツが提供されている現在、月額などの定額で、且つ継続利用を前提としたサービスが自動車販売市場においても積極的に導入されつつある。しかし、一見すると目新しい自動車の定額制サービスは、本質的には「短期オートリースの類似型」であり、サービス提供事業者の狙いは新車販売の促進であるとみる。新車販売環境が従来よりも厳しさを増す中、ディーラーは残価設定クレジット※4という販売手法により、月々の支払額を低く抑えることで、車両本体価格の低価格化を実現した。また、残価設定クレジットが一般化したことで、残価を据え置くという同じコンセプトをベースにする個人向けオートリースは市場を拡大させた。こうした「購入」から「一見すると購入のようで実は車両賃貸契約」に販売手法が変化する中、自動車サブスクリプションは登場した。自動車のサブスクリプションは、オートリースの契約期間をさらに短期化し、短期間で新車を気軽に乗り換えやすくしたサービスである。自動車の定額制サービスは、新車を賃貸することで新車「賃貸」台数を増加させ、新車販売の将来的な落ち込みを補填する仕組みとして注目が集まる。

従来型の製造・販売を主業とする自動車メーカー大手がこの市場に新規参入したことの意味とは、新車販売スタイルの一層の多様化であり、且つ所有から利用へのユーザー意識の転換が進む時代への適応であり、将来市場が拡大することを見据えた「種蒔き」であるとも考えられる。自動車のサブスクリプション市場は依然として黎明期であり、今後の市場成長性はサービス提供事業者の資本力や販売網の拡充、さらにディーラーの協力度合いにも依存することになると考える。

3.将来展望

2020年は年初から新型コロナウイルスの影響によって各国の主要メーカーは生産台数減少を余儀なくされる一方、経済活動全体が停滞していることで人々の消費減退も顕著に表れている(総務省「家計調査」によると、2020年1~4月の消費支出(二人以上の世帯)の平均は前年同期比で実質5%程度の減少となっている)。この需要・供給双方の減少から、2020年の新車販売台数は、前年比減少が不可避であるとみる。

また、新車販売動向と連動する市場も少なからず影響を受けることが想定される。中古車市場は新車への代替需要が中古車発生の起点であるため、新車販売の減少に比例して中古車両の流通量も減少に陥ると考える。カー用品市場は最大の商機である新車購入の機会そのものを失い、整備市場はユーザーの節約意識向上によって車検実施時の整備項目を必要最低限の項目に絞り込むことが予想されるため、市場規模の縮小は免れないものとみる。

自動車賃貸市場においては、オートリースが企業の経費削減によって契約車両が減少し、レンタカー、カーシェアリングはコロナ禍に伴う外出自粛から利用者が減少すると予測する。一方で、感染防止の観点から通勤には公共交通機関よりも自動車を利用する傾向が都市部を中心に強まっており、一部では短期オートリースやカーシェアリングなどのサービス利用が増加しているとも聞く。こうした正負の両面が見受けられるものの、年間トータルでは負の面が大きくなり、企業のオートリース契約台数の削減、訪日外国人客の大幅減によるレンタカー需要の縮小、そして在宅勤務の増加などによるカーシェアリング需要も縮小が見込まれ、今年度の自動車賃貸市場は縮小するものと考える。

調査要綱

1.調査期間: 2020年1月~5月
2.調査対象: 自動車アフターマーケット関連事業を展開する企業・団体、および管轄官庁等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用
<自動車アフターマーケット市場とは>
本調査における自動車アフターマーケットとは、新車販売後に発生する様々な事業の総称であり、その対象は①中古車事業(中古車小売、中古車輸出、中古車買取、オートオークション)、②自動車賃貸事業(オートリース、レンタカー、カーシェアリング)、③自動車部品・用品事業(カー用品、補修部品、リサイクル部品(中古・リビルト))、④自動車整備事業(自動車整備、自動車整備機器)、⑤その他関連サービス事業(自動車保険、ロードサービス)の5事業とする。

なお市場規模算出にあたり、一般社団法人日本自動車部品工業会(補修部品)、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(自動車整備)、一般社団法人日本自動車機械工具協会(自動車整備機器)、一般社団法人日本損害保険協会(自動車保険)、一般社団法人日本自動車連盟(ロードサービス)を出所とする各々の統計データ用いている。(順不同)
<市場に含まれる商品・サービス>
新車、中古車、中古車輸出、オートオークション、入札会、オートリース、個人向けオートリース、メンテナンスリース、ファイナンスリース、レンタカー、カーシェアリング、自動車定額制サービス、カー用品、タイヤ、アルミホイール、カーオーディオ、カーナビゲーション、ドライブレコーダー、車内アクセサリー、オイル・ケミカル用品、消耗品、機能用品、ドレスアップ用品、チューンナップ用品、純正部品、優良部品、補修部品、リサイクル部品、リユース部品、リビルト部品、自動車整備、車検整備、定期点検整備、事故整備、メンテナンスパック、自動車機械工具、自動車保険、自賠責保険、任意保険、ダイレクト損害保険、ロードサービス、ガソリン、セルフSS、整備事業者向け顧客管理システム

出典資料について

資料名2020年版 自動車アフターマーケット総覧
発刊日2020年05月29日
体裁A4 241ページ
定価165,000円(税別)

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