昨年に総務大臣がふるさと納税の返礼品を実質3割までに抑えるよう通知を出して以降、2018年11月1日時点で3割超の返礼品を送付している自治体は25団体(全体の1.4%)にまで減った。それでも、実質2,000円の負担だけでさまざまな返礼品が入手できるふるさと納税は、依然として納税者にとって人気の制度である。

ただし、いくら返礼品が魅力的だからといって、自分の所得に応じて決まる上限額を把握しておかないと、自治体に対する単なる寄附金となりかねない。そこで本稿では、ふるさと納税をするにあたり、特に個人事業主がどのような点に注意すれば良いかについて解説する。

ふるさと納税の仕組みとは

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(画像=PIXTA)

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄附を行った場合に、その寄附額のうち2,000円を越える部分が、一部の例外を除き、所得税と住民税から全額控除される制度だ。つまり2,000円の負担はあるものの、自治体から返礼品をもらえば、その分だけ、まるまる得をするという仕組みになっている。

この仕組み自体は、サラリーマンやOLのような給与所得者であっても、自営業者のような個人事業主であっても、基本的には変わらない。

特に給与所得者であれば、給与収入に応じて、いくらまでの寄附金なら全額控除が可能かという目安を示した一覧表などが用意されている。これに対して、個人事業主では自分で上限額を計算する必要があるなど、注意すべき点がいくつか存在する。

個人事業主が気をつけておくこと

・ふるさと納税の上限額の計算
給与所得者であれば、給与収入の額に応じて給与所得控除額という金額が決まっており、給与収入から給与所得控除額を差し引くことで、ふるさと納税の上限額を計算するための所得が簡単にわかるようになっている。

これに対して、個人事業主では事業収入から経費を差し引いて事業所得を計算する必要がある。この経費は、実際に1年間でどれだけ仕入をしたり、備品を買ったり、交際費を使ったかによって個人事業主ごとに異なる。そのため、事業収入や年商だけがわかっても、ふるさと納税の上限額は計算できない。

・寄附金が事業所得の経費にならない
法人税法においては、国や地方公共団体に対する寄附金はその全額を会社の損金にすることができる。しかし、個人事業では、基本的に寄附金は事業所得を計算する際の経費にすることはできない。経費とふるさと納税で二重に控除してしまわないように気をつけよう。

・ふるさと納税ワンストップ特例
給与所得者であれば、寄附した自治体が5団体以内である場合、各自治体に申請することで確定申告をしなくても税金の控除に関する処理をしてもらえる「ふるさと納税ワンストップ特例」という制度が利用できる。しかし、個人事業主ではこの制度は利用できず、確定申告により適切に寄附金控除の処理をする必要がある。

上限額はどのように計算する?

それでは、個人事業主のふるさと納税の上限額はどのように計算されるのだろうか。計算の構造は以下の3ステップだ。

①所得税からの控除=(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率
②住民税からの控除(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
③住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-所得税の税率-10%)

つまり、①で所得税の税率分(所得により変動)だけ所得税が安くなり、②で住民税の税率分(一律10%)だけ住民税が安くなる。そして、③では上記①と②で控除し切れなかった分をまとめて控除してくれるという構造になっている。

あとは、それぞれのステップで設けられている上限に抵触しないように気をつければよい。具体的には、①では総所得金額等の40%、②では総所得金額等の30%が上限となっているので、それに気をつける。ざっくり言うと、ふるさと納税額を所得(利益)の30%以内に抑えることがポイントだ。

それに加えて③では特例分の控除額が住民税所得割額の20%を超えないように気をつける。住民税所得割額というのは、住民税率(一律10%)を掛けたあとの住民税の金額を指している。つまり、ざっくり言うと、住民税の20%だ。

住民税所得割額を知ってお得なふるさと納税を

自分で住民税所得割額の金額を計算するのが難しい場合には、昨年の住民税決定通知書を見て「税額控除前所得割額」の道府県分と市町村分を合計してみよう。昨年から所得があまり変わっていない場合にはこの金額を参考にするのも一つの方法だ。

ふるさと納税は12月末までに行ったものが今年度の対象となる。今からでもまだ間に合うようなら改めて限度額を計算してみてはいかがだろうか。(提供:ZUU online