資金繰り支援策
(画像=hikdaigaku86/stock.adobe.com)

新型コロナ関連の倒産(負債1,000万円以上)は、5月22日現在で172件に上っている。経営破綻の引き金となるのが資金ショートである。資金ショートを起こさないためには、資金繰り対策をしっかり講じることが重要だ。コロナに負けないために経営者が知っておくべき資金繰りのための支援策とはどのようなことだろうか。

中小企業の資金繰りが急速に悪化している

新型コロナウイルスの影響で、業種よっては多くの中小企業の資金繰りが急速に悪化している。東京商工リサーチによれば、宿泊業や飲食業、アパレル関連の企業の業績悪化が顕著だ。

海外からの渡航制限などによってインバウンド客が急減したことや、日本国内でも外出自粛措置で人出が減ったことが理由だ。訪日客に関しては、日本政府観光局が4月の訪日客はわずか2,900人という推計値を出しており、前年同月比で99.9%減となっている。

売上が減れば当然、家賃などの固定費が企業に重くのしかかる。業績が悪化する状況が続けば、内部留保などの「企業の貯金」はどんどん減り、キャッシュフローが悪化する。このようなことが企業の経営破綻に結びついているわけだ。

より万全の資金繰り対策の計画を

キャッシュフローの悪化による経営破綻を回避するためには、資金繰りを改善するための対策を経営者がしっかりと講じていくことが重要だ。金融機関からの資金の借り入れなどを行うことで手元資金が厚くなれば、当面のキャッシュフローの課題は緩和される。

ただ、やみくもに金融機関に融資を願い出るのではなく、国などが新型コロナウイルスでダメージを受けている企業向けに打ち出している支援策について理解した上で、万全の資金繰り対策の計画を立てたいところだ。

国などによる支援策

以下、国などが企業向けに展開している支援策について紹介していこう。

持続化給付金:前年同月比の売上高が半分以下の企業に支給

返済不要の給付金として知っておきたいのが「持続化給付金」だ。中小企業の場合は最大200万円の金額が支給される。

持続化給付金は、新型コロナウイルスの影響で前年同月に比べて売上高が半分以下に落ち込んだ中小企業に支給される。支給金額の算定式などは経済産業省のウェブサイトで詳しく説明されているので、参考にしてほしい。

セーフティネット5号:売上高が5%以上減少で利用可能

持続化給付金は返済不要で支給されるが、融資関連の支援策も用意されている。「セーフティネット5号」は売上高が5%以上減少した場合に企業が利用することが可能で、一定条件を満たすことで保証料と金利がゼロになる。信用保証協会が借入債務の80%を保証し、保証の限度額は2億8,000万円となっている。

新型コロナウイルス感染症特別貸付:売上高が5%以上減少で利用可能

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」という制度もある。「セーフティネット5号」と同様に売上高が5%以上減少した事業者が活用することができる支援策で、融資の限度額は6,000万円だ。資金の使い道としては、中小企業が新型コロナウイルスの影響により必要となった設備資金と運転資金である。こちらも条件を満たせば利子は実質的にゼロとなる。

新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変対策特別貸付:売上高が10%以上減少で利用可能

旅館業や飲食店営業などを営む事業者が、売上高が10%以上減少した場合には、「新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変対策特別貸付」を受けることも可能となる。旅館業の場合は、融資額は最大3,000万円、飲食店営業などをしている企業は最大1,000万円となる。

危機関連保証:売上高が15%以上減少で利用可能

売上が15%以上落ち込んだ場合は、「危機関連保証」という制度も活用可能だ。信用保証協会が通常の保証限度額とセーフティネット保証の保証限度額とは別に、2億8,000万円の債務を100%保証してくれる。

セーフティネット4号:売上高が20%以上減少で利用可能

売上高が20%以上減少した場合には、「セーフティネット4号」を活用できる。「セーフティネット5号」では信用保証協会による借入債務の保証割合は80%だったが、4号ではその割合が100%となる。こちらも条件を満たすことで保証料と金利がゼロとなる。

まず「できること」が何なのかを知ろう

これらの制度のほかにも国の支援策があり、今後も新たな支援策が発表される可能性があるので、企業経営者は引き続き国の発表やニュースなどにしばらく注目しておきたいところだ。

「雇用調整助成金」など、人件費の負担を減らしつつ雇用を守るための制度もあるほか、自治体が独自に休業支援金を支給しているケースもある。公的な制度を最大限利用する計画を立て、新型コロナウイルスの対策を万全にするのが良いだろう。

キャッシュフローが改善し、事業の継続が可能になれば、その後に復活のチャンスが巡ってくることもある。苦しい状況の中、まず「できること」が何なのかを知ることが重要だ。

文・岡本一道(経済・金融ジャーナリスト)

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