魚丼
ベルツリーカンパニー(東京都足立区)
鈴木 常隆 社長
丼ぶり業態の新たな勢力が話題になっている。刺身はもちろん、煮る、焼く、炙るなどした魚介食材を乗せた丼ぶり飯を提供する「魚丼(うおどん)」だ。2017年に1号店を出店するや瞬く間に人気に火が付き、昨年にはのれん分け制度を開始。各地で次々と新店がオープンするなど、その勢いはとどまるところを知らない。鈴木常隆社長に話を聞いた(※2020年6月号「注目のNEW FCビジネス」より)
食材の組み合わせでメニューは170万種類
ベルツリーカンパニーが運営する「魚丼」は、いくつかある海鮮丼チェーンとは一線を画した存在だ。そもそも「魚丼」は〝魚介類を使った丼ぶり飯〞をコンセプトにした飲食店で、海鮮丼はその大きな括りの中の商品の一つだと位置付けている。海鮮丼一本に絞らなかった理由について鈴木常隆社長は、「海鮮丼専門店はすでに飽和状態で、稀少性が薄れたため売上も下がっています。ワンコインで販売しているところが多いですが、ほとんど利益が出ていないのではないでしょうか。そこで、より多くのメニューを提供でき、かつ他店との差別化も図れる業態として『魚丼』を作りました」と話す。
乗せる魚は刺身に限らず、火を使って調理したものも含まれる。注文を受けてから切り身を乗せるだけの海鮮丼専門店と比べると手間はかかるが、その分だけ付加価値は高い。使う食材の種類はそれほど多くないものの、組み合わせを変えるだけでバリエーションは170万種類にも広がるという。
鈴木社長は、大手出版専門商社出身という異色の経歴をもつ。もともと独立志向が強かったことから、2013年にある飲食チェーンのフランチャイズに加盟して起業。北千住に出店した店舗を、チェーン内屈指の繁盛店に育て上げた。その後、「自分で作ったブランドで勝負したい」という思いが強くなったことから、2017年にチェーンを脱会して「魚丼」1号店をオープン。豊富なメニューと工夫を凝らした味付けですぐに評判となり、初月から400万円以上を売り上げた。
全国300店舗に向け加盟店募集を積極化
のれん分け制度を始めることになったきっかけは、噂を聞きつけてやってきた川崎大師でコンビニを経営するオーナーとの出会い。評判以上の味に衝撃を受けたそのオーナーは、すぐさま鈴木氏に対してのれん分けを直談判。もともと直営店だけでやっていこうと考えていた鈴木氏だったが、オーナーの熱意に押される形でのれん分け制度を始めることを決意した。
加盟金は99万円で、のれん代が月額3万円。保証金などを含めた初期投資は500万円前後を想定している。本部は4つの機能(PB商材仕入れサイト「魚丼市場」、本部及び加盟店の情報共有サイト「魚丼Report」、パソコンPOSレジシステム「PASOREGI」、販促コンサル)で、加盟店の店舗運営をバックアップする。なお、食材の納入業者に制約はないため、オーナー側で自由に仕入れ先を選ぶこともできる。
加盟後は実店舗で2週間の研修を行う。使用する食材が分からなくなってしまった場合は、動画テキストでいつでも復習することができるようになっている。いずれ、注文が入った時点で、何をどれだけ乗せれば良いかがパソコンPOSに表示されるような仕組みを導入する計画もあるという。
屋号は「魚丼+地域名」「魚丼屋+フリーネーム」「魚丼DELI」(デリバリー専門店)の3種類から選ぶ。前者2つについては運営形態については自由で、加盟店の中にはテイクアウトとイートインをミックスしたスタイルの店舗もあるそうだ。
客単価を引き上げるメニューの工夫
平均月商は300万円〜。運営に必要な人数は2名。平均客単価は700円超と、海鮮丼専門店と比べると高い。これは、〝お客を飽きさせないためのメニュー作り〞に秘密があるのだという。ワンコインのメニューは、分かりやすい反面、飽きられやすいという欠点がある。そこで「魚丼」では、メニューを570円(直営店価格)のレギュラーメニューと、ちょっと贅沢したい時のための高価格帯メニュー、そして自分好みのアレンジができるオリジナル丼の3段階構成にすることで、気分や好みに応じて色々な商品を楽しめるようにしている。オリジナル丼を〝My丼〞としてコンピューター上に登録しておけば、名称を言うだけでどこの店舗でも同じ商品を購入することができるようになる。登録件数はすでに50件を超えているそうだ。
また、メニューは本部が用意したものとは別に、加盟店で独自に開発することも可能。川崎大師店の「1周年記念丼」は後に、別の店舗で「グランドオープン記念丼」として売り出され、ひと月で800杯を販売した。
今後について鈴木社長は、「現在、加盟店数は8店舗ですが、300店舗までは増やせると考えています」と話す。