失敗
(画像=freedomz/stock.adobe.com)

今回のコロナショックによる株価下落を「投資を始めるチャンス」と捉えた、主に投資初心者によるインターネット証券の口座開設数が激増しているようです。

その勢いはリーマンショックなど、過去の相場下落時を大きく上回る勢いのようです。この記事を読んでいる方にも該当者がいるのでは?

これを機に日本人の金融リテラシー向上と資産形成の促進が成されることに期待を込めて、
今回は投資初心者が投資において失敗する主な要因である目的目標の設定について話します。

なぜ目的目標が重要か

投資初心者で明確な目的目標を持って投資できている方は多くありません。

「何となく将来の為に」
「預金に預けてても増えないし」
「銀行の窓口で勧められたから」
「みんなやっているし」
「コロナで相場が下がったから」

このように何となくで始めている方を多く見受けます。
皆様はいかがでしょうか?

この目的目標の設定、投資において非常に重要な役割になりますので、できていない方は必ず設定するようにしましょう。

なぜなら投資において、自分に最適な行動・選択は目的目標がなければ決められないからです。
実際に何かに投資する際の理想的な流れを話しますので是非参考にしてみてください。

まず目的の設定をしましょう

目的とは、投資する理由のことです。
例えば「老後資金を準備したい」「5年後の必要資金のために」「10年後には億万長者になるため」
等々です。他にもいろいろとあると思います。
自分がなぜ投資したいと思ったのか、頭の中を整理して考えてみましょう。

次に目標の設定をしましょう

目的が定まれば次に「何年後に」「いくら必要か」という目標を定めましょう。
目的に応じて自分なりに考え、答えを出していきます。

例えば「老後資金を準備する」という目的に対して、「何年後に必要か」「どこに住むのか」「どのような生活水準か」「趣味は?」「それにはいくら必要か」等を考え、自分なりの必要資金額をざっくりで良いので出してみます。ここでの注意点としては、色々なデータを参考にするのは良いのですが、世間の「平均」を意識し過ぎない、という事です。あくまで自分の価値観で考えてみましょう。

その結果「老後資金を準備する」という目的に対して、「30年後に」「5,000万円」準備する目標ができた、というような感じです。

最適な投資計画の策定

この目的・目標が決まって初めて、投資する上で最適な

・投資方法
・必要資金
・投資年数
・リスク許容度

などを分析し計画を作ることができます。
自分で分析するのも良いですし、信頼できるアドバイザーがいれば相談してみましょう。

ここでも注意が必要で、自分で分析するためにはそれ相応の知識がないとできませんので日ごろから書籍などで情報をインプットしておくことが欠かせません。

また、アドバイザーに相談する場合も、アドバイザー自身がノルマを背負って商品を販売していないか、顧客の立場に立った意見をくれる人なのか、注意する必要があります。

日本には特定の商品を売るための「無料相談」が溢れており、お金を払って投資の事を相談する慣習は根付いていません。

しかし顧客目線でアドバイスするアドバイザーというのは、真に顧客のためのアドバイスをするために、特定商品の販売手数料を追いかけていない場合が多いものです。その対価として相談を有料で行っているアドバイザーも多いので、信頼できるアドバイザーからアドバイスを受ける場合は有料になる可能性があることは知っておきましょう。

この分析を行って、最後に投資商品を選択する、という事になります。

投資商品の選択

自身の投資計画に基づくリスク許容量に応じて投資商品を選び、アセットアロケーションを組立てます。アセットアロケーションとは、運用する資金をどのような商品にどのような割合で投資をするか決めることです。また一度組み立てたら放置ではなく、投資後も継続的にモニタリングを行い、必要に応じてリバランスを行います。分析の結果、投資ではなく銀行預金で貯めるのが最適だという結論になることもあります。

目的・目標のない投資初心者は、本来最後であるはずのこの投資商品の選択から投資をスタートしているケースが非常に多いです。選択する理由としては

「インドが成長しそう」とか「アジアが成長しそう」とか「リートだと分配金がたくさん出る」とか
「この会社は何となく成長しそう」

などが多いですね。
その結果、その商品単体を狭い視野で見定めてしまい、最初に意図した動きと違った動きをするとすぐに売却してしまったり、逆に値下り続けても塩漬けにしてしまったりと、失敗しているケースが後を経ちません。

物事には何事も順番があります。目的目標が無かった人は是非これを機に考えてみてください。

あなたの資産運用は投資ですか?トレードですか?

目的・目標のない人が陥る失敗のひとつとして、投資とトレードの違いを理解せずに金融商品を購入してしまうケースがあります。その結果、投資でもトレードでもないような取引をしてしまい、中々成功できない人が多くいます。

投資とトレード、それぞれメリットデメリットがあり、自分の目的・目標に沿って、必要に応じて
使い分ける必要があります。

投資とは

投資とはその投資先の「長期的」な成長を見込んでお金を拠出する事です。
例えば、日本の長期的な成長を信じて、日経225インデックスファンドを買ったり、個別企業の分析を行い、その企業の長期的な成長を考えると、今の株価は割安と判断して株を買ったり、などです。

メリットとしては

・長期で保有するので、トレードと比較すると低リスクで運用可能。
金融商品の価格変動リスクについては、時間が経てば経つほどその幅は小さくなっていき、ボラティリティの大きなアメリカ株でも15年以上保有する事によってマイナスには振れないというデータもあります。
・手間暇がかからない。
・世界の成長を買える。
など

デメリットとしては

・成長には時間がかかる事。短期間でお金持ちになりたい人には向いていない。
企業が出した利益を再投資し、新商品を開発し、雇用を生み、経済が成長するには時間がかかります。
・トレードと比べると利回りが低い。
などです。

トレードとは

トレードとは短期の利益を追求し、一定のルールに基づいて売買を繰り返す行為です。

メリット

・投資と比べると短期間で大きく儲けることができる。

デメリット

・手間暇がかかる。
・プラスのリターンが大きい分、マイナスのリターンも大きい。つまりリスクが高い。
・相当な知識と経験がなければ勝ち続けることは難しい。

投資でもトレードでもない取引

投資とトレードについて解説しました。それぞれに良し悪しがありますが、気を付けなければいけないのは、この「投資でもトレードでもない取引」です。目的・目標のない投資初心者が陥りがちですのでお気をつけ下さい。

どのような取引か、例え話でお伝えしますと、

◆ケース1、投資がトレードになるケース

①ある企業の分析を行い、長期的に成長する事を信じて株を購入
②数か月後、その企業の株価が10%上昇
③「上昇した分の利益を確定しておいた方が良いのでは?」という根拠なき感情に囚われて、売却。

◆ケース2、トレードが投資になるケース

①1週間後の値上がりを見据えてある企業の株を購入
②1週間後、予想に反して株価が5%下落
③この企業の株価は必ずまた上がると信じて、マイナスのまま塩漬けに

目的目標がなければ、感情に負けてしまい、投資スタンスもこのようにブレブレになってしまう事が多くなり、結果として自分が望む資産形成ができなくなります。

まとめ

投資で成功するには目的目標の明確な設定と、それに基づく投資計画が必要で、また、投資は運用方法に人間としての感情が複雑に絡みついてきますので、計画を着実に遂行していくためのマインドセットも必要不可欠です。

それらのためにも是非、投資を自分自身や大切な家族のお金に関する価値観を見つめなおし、磨き上げ、そして自分の生き方や社会について深く考え、より良い暮らしや社会づくりについて考えるきっかけにしてもらえたらと思います。

目的目標を設定する前に、とりあえず投資を始める方法は過去の記事で書いていますのでご参考にしてください。
「【3分で解説!】とりあえず投資を始める必要性と推奨方法」

(提供:税理士法人M&Tグループ