新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、「コロナ破綻」の件数が増え続けている。民間調査会社の東京商工リサーチによれば、4月28日時点で負債1,000万円以上の倒産は累計で105件に上っている。どのような業種、そしてどのような地域でコロナ破綻は目立っているのだろうか。
東京商工リサーチの最新データを紐解く
東京商工リサーチの調べによれば、負債1,000万円以上の倒産は、2月は2件、3月は23件だったが、4月は27日までに80件に達しており、増加を続けている。ちなみに累計経営破綻件数の105件の内訳は、「倒産」が73件、「弁護士一任・準備中」が32件だとされている。
東京商工リサーチのこの件数は、負債が1,000万円未満の倒産は含まれていない。そのため、実際にはもっと多くの民間企業でコロナ破綻が起きていると考えた方が良い。官報などにも掲載されない「休廃業・解散」も含めれば、事実上の破綻件数はさらに増えることも念頭に置いておきたい。
こうしたことから、コロナ破綻は105件よりも実際にはもっと多いが、東京商工リサーチが公表しているデータからはコロナによる倒産の傾向を知ることができるので、具体的な公表データを紐解いてみよう。
業種別では「宿泊業」が22件で最多
コロナ倒産の件数を業種別でみた場合、多さ順に並べると下記のようになる。
- 宿泊業 22件
- 飲食業 15件
- アパレル関連 10件
- 食品製造業 9件
- サービス業 8件
- 娯楽業 8件
新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本を含む各国が渡航制限を決め、外出自粛も国民に要請している。そんな中、訪日外国人の急速な減少によって、ホテルや旅館、ゲストハウス、民泊など宿泊施設を営む事業者は経営に大きなダメージを受けている。こうした背景もあり、「宿泊業」が22件でトップとなった。
日本政府観光局の調べによると、今年3月は前年同月比で訪日客数が推計値で93.0%減となった。このような状況は、新型コロナウイルスの感染拡大が終息しない限り続いていく。日本人の国内旅行者も終息からしばらく経つまでは元通りには戻らない。そして、売上が立たなければキャッシュフローはどんどん厳しくなる。
宿泊業では、ワンランク上のカプセルホテルというイメージで事業を拡大していた「ファーストキャビン」の倒産は大きな衝撃を与えた。3月下旬から4月上旬ごろの客室稼働率は10%程度までに落ち込み、4月24日に東京地方裁判所に破産を申請した。
ホテルやリゾートの運営受託などを手掛けてきた大阪のWBFホテル&リゾーツは大阪地方裁判所に対し、4月27日に民事再生法の適用を申請している。ファーストキャビンと同様に宿泊客の急速な減少が経営に大きなダメージを与えた。
都道府県別では「東京都」が25件で最多
コロナ倒産を都道府県別でみると、下記のようになる。
- 東京都 25件
- 北海道 11件
- 大阪府 7件
- 静岡県 7件
- 兵庫県 6件
- 新潟県 5件
- 愛知県 5件
「東京都」はそもそも本社を置いている企業数が多いことも倒産件数に影響を与えていると考えられるが、日本の首都として訪日観光客も多く訪れていたことから、インバウンドの急ブレーキによる倒産も目立つ結果となっている。
東京都に次いで多かったのが「北海道」だ。北海道は全国の都道府県の中でもインバウンド消費の恩恵を大きく受けていただけに、今回の訪日客の急減は痛い。外国人観光客が激減したことによる寿司店の倒産や、民泊予約のキャンセルが相次いだことによる不動産業者の破綻などが目立った。
北海道に続いてコロナ破綻が3番目に多かった「大阪府」では、婦人服や服飾雑貨を販売している企業や、中国法人の資金不足などが要因となって資金繰りが逼迫した製造企業の倒産が発生している。航空チケットを販売していた企業も事実上、破綻した。
コロナ禍の以前から経営状況が悪かった企業が多い
コロナ破綻となった企業の業績には一定の傾向もみられる。それは、新型コロナウイルスの感染拡大前から経営状況が悪かった企業が多いということだ。
キャッシュフローが厳しくなっていた中で売上が急減すると、資金調達やコスト低減をするしか道は無くなる。しかし、もともと経営状況が厳しいと金融機関からも運転資金の融資が受けにくく、コストを削減する余地も残っていないことが多い。そのため倒産するしか選択肢が無くなるケースが多いわけだ。
一方、業績が右肩上がりだった企業は金融機関からも融資を受けやすい。
終息時期はまだ不透明、今後の倒産件数は
自粛解除の影響もあり、飲食店は徐々に再開しているものの、新型コロナウイルスの終息時期はまだ不透明だ。資金繰りが厳しくなった企業経営者にとっては不安な日々が続く。現在のコロナ破綻は宿泊業や飲食業が多くみられるが、現在の状況が長引けばほかのさまざまな業種でも倒産件数が増えていく可能性が高い。今後の動向や発表にも注目していきたい。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)