課題,発見,ステップ
(画像=PIXTA)

ある大手企業が印鑑の完全廃止を打ち出しました。その理由は、印鑑によって出勤が余儀なくされ、テレワークの導入を遅らせる要因の1つとなったからです。
この印鑑廃止のニュースは、各種メディアで取り上げられたためご存知の方も多いと思います。そして多くの人はこのように思ってのではないでしょうか。「印鑑はテレワークの推進を妨げる課題だ。」と。

普段私たちは問題が起きてから課題を認識しています。あるいは、SNSや経営者仲間、ソリューションを提供してくれるシステム会社から課題について認識させられることがほとんどです。

しかし、絶えず変化しているVUCAの時代に必要な事は、自ら課題を発見し、問題が起きるまえに対処することではないでしょうか。

この記事では、課題解決策ではなく課題発見を考える経営者のために「課題を発見するためのステップ」をご紹介いたします。

Step1 理想をかかげる

課題を発見するための最初のステップは、課題がどこにあるのか考えることではありません。なぜなら、課題は常に存在しているものではなく探しても見つけるこができないからです。

課題とは、誰かが「不便だな。もっと〇〇だったらいいのに。」と感じ、そのギャップを解決したいと思ったときに初めて課題が生まれます。つまり、理想をかかげ現実とのギャップを認識して初めて課題が生じるのです。

例えば、「経費精算に要する経理担当者の工数を半分にしたい」と考えたときに「どのように工数を半減するのか」という課題が生まれるのです。ただし、やみくもに理想をかかげればいいというわけではありません。ここでは注意すべき2つのポイントがあります。

WHYから始める

1つ目のポイントは、目的や理由を明確にすることです。課題解決の理由や目的が曖昧である場合、課題が発見できても解決策を探す際にすぐに諦めてしまうことがあります。なぜ課題を発見し解決したいのか、より具体的な理由を書き出すことが大切です。さらに、理由は1つではなく複数書き出すことができればより良いでしょう。

高すぎず低すぎず

2つ目のポイントは、理想を絶妙な高さに設置することです。もし、サッカーゴールが1m四方の場合、これほどまでファンを熱くさせ人気のあるスポーツになったのでしょうか?バスケットボールのゴールのリングが2m程の大きさでどこから投げても入る場合はどうでしょうか?

理想が高すぎれば、モチベーションが続かなかったり、逆に理想が低すぎれば課題を解決してもその効果は低くなります。理想は、少し難しいと感じる程度が良いでしょう。

Step2 見える化

次にすべきことは、見える化です。理想と現実のギャップを認識することで課題を発見できますが、この段階の課題は曖昧かつ抽象的で不完全なものです。

当然ながら不完全な課題では、適切な解決策を見つけることはできません。適切な解決策(ソリューション)を見つけ出すためにも当事者(業務を遂行する担当者)の行動を見える化させ課題が発生した状況を分析する必要があります。

ここでは、当事者の行動を見える化させる手法の一つとして、カスタマージャーニーマップをご紹介します。

カスタマージャーニーマップとは?

ユーザーがモノや商品を利用するまでの流れを「旅(Journey)」に例え、顧客視点で図示化したものです。デザイン思考の分野で使われており、マーケティングのリサーチで用いられる手法です。

このマップは、第三者の目線ではなくユーザー目線で捉えるため、顧客(当事者)を深く理解した発想ができるようになります。また、ユーザーの行動や思考を網羅しているので俯瞰的に見ることができます。

カスタマージャーニーマップのつくり方

まずは、ユーザーを決めます。仮に、経費精算に関するカスタマージャーニーマップを作成する場合、ユーザー=経理担当者と置き換えてマップを作成するといいでしょう。

次に、縦軸には行動や接点・モチベーション・感情を、横軸にはフェーズを書き出し、各フェーズ事の行動や接点を加えていきます。例えば、経費精算の申請を待つ経理担当者であれば、事前に金庫内の現金をチェックし、足らなければ補充や両替のため銀行窓口へ行く。その時のモチベーションや感情をマップに加えていきます。

カスタマージャーニーマップ作成のポイントとしては、ホワイトボードに縦軸と横軸を書き出し、複数名で付箋を貼っていくことで、より精度の高いマップを作成することができます。

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※出典「経理パレット」 経理担当者の課題を発見するためのマップ  [経理Journey Map ~経費精算~]

Step3 課題を分析し細分化

最後のステップでは、カスタマージャーニーマップで見える化させたユーザーの行動や思考・感情から課題を明確にし具体化させていきます。

そこで重要となるキーワードは「なぜ?」です。「なぜ?」と疑問を持つことで問題の原因となっている課題を見つけだすことができます。この時に、先入観を持たず全ての行動や感情に繰り返し「なぜ」を問いかけることで解決すべき本質的な原因(課題)がみえてきます。

複数の課題が出たときには次の二つのポイントに注意する必要があります。

ボトルネック

マップに対して「なぜ?」を繰り返した場合、課題が複数あるように感じますが、マップは一連の行動を図示化しているため実は一つの原因がもとになって課題が複数あらわれる場合があります。

これらの課題は「症状としての課題」と「原因としての課題」に分けることができます。この場合、「症状としての課題」に対処しても再発するこが考えられるため「原因としての課題」にフォーカスして課題解決に取り組む必要があります。

つまりボトルネックとなっている課題は何かを見極めることが重要になります。

優先順位

課題を明確にしたのちにすべきことは、優先順位を決めることです。すべての課題について取り組むのではなく「緊急性」「実現性」「費用対効果」などの視点で優先順位を決めることが課題解決への近道となります。

まとめ

業務のデジタル化や働き方改革などに対して、課題解決策を考え、導入の可否を検討するこは重要です。しかし、課題に対して導入したソリューションが間違っている場合、望んだ効果を受けられないばかりか、必要のない時間や労力を費やすことになります。

まず最初に考えるべきは、誰かが決めた課題ではなく自ら発見した課題です。

課題を上手く発見することができれば、自社の業務改善はもちろんのこと、自社のビジネスの展開にもつなげることができます。

自ら課題を発見するという気持ちと、課題発見の手法があれば、だれでも課題を発見することができるので是非活用してみてください。

(提供:税理士法人M&Tグループ