上司力
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされている企業が多くある。休業による給与減額などによって退職の意向を伝えてくる従業員が出てくることが予想されるが、退職が相次ぐと企業にとってはアフターコロナのV字回復の担い手不足が懸念される。こうした離職を食い止める方法は?

都市部の飲食店や遊興施設で増える休業

コロナ禍によって休業を余儀なくされている企業や店舗は、特に感染者が多く出ている首都圏や地方の中核都市で多い。中でも特に居酒屋を含む飲食店や遊興施設での休業が目立っている印象だ。

自治体の要請によって店舗を休業したり、従業員の感染防止などの観点から自主的に休業したり、売上ゼロなら経費をなるべく減らそうと休業したりと、理由は店舗によってさまざまだ。

最新情報は各自治体のウェブサイトで確認してほしいが、たとえば東京都は、バーやカラオケボックスなどの遊興施設や、床面積の合計が1000平方メートル以上の大学や専修学校などには「休止」を呼び掛け、飲食店には営業時間短縮の協力を要請している。

店舗を休業することで協力支援金の支給を受けられるようになるといった仕組みも、休業が増えている理由の一つとして挙げられる。

休業を機に退職の意向を伝えてくる従業員も

このような状況の中、苦渋の決断で休業を決めた企業が、いま直面している課題がある。それが、従業員の離職をどう食い止めるか、だ。国の雇用調整助成金などを活用しても、従業員の給与を減額せざるを得ないケースがあり、企業にとっては大きな課題となっている。

従業員からみれば「勤め先が今後倒産してしまうのではないか…」といった懸念も高まり、転職を検討する人も出てきているわけだ。また、これまでに退職を考えていてもなかなか言い出せなかった従業員が、このコロナを理由に離職を伝えてくる可能性も十分に考えられる。

このような離職が続くと、「アフターコロナ」に大きな影響が出てくる。これまで育ってきた人材が離れていくことで、コロナ終息後に需要が回復しても業績改善の担い手がいなくなってしまうのだ。

スムーズな復職・復帰には「上司力」が求められる

離職によるこのようなダメージを最小限にするために、いま「上司力」が求められている。高い上司力を持った人の下で仕事をしていた従業員は会社へのロイヤリティ(信頼・愛着)も高く、休業後もしっかりと復帰してくれるだろう。ロイヤリティの高さは、従業員の離職防止につながるのだ。

では会社へのロイヤリティを高める「上司力」とは具体的にはどのようなものなのだろうか。前半の2つは平時からの取り組みとしても重要なもの、後者は特にこうした緊急事態でより意識したいことを紹介する。

育てる力

いまの上司の下で働くことで自分の能力がどんどん伸びていくことを従業員が実感していれば、厳しい状況の中でも離職せずに会社に留まる可能性が高まる。会社に残るか離れるか考えるとき、「お金」という軸だけではなく「自分の成長」という軸も加わるからだ。

転職しても自分を成長させてくれる良い上司に恵まれるとは限らないと従業員が考えれば、会社に残ってくれやすくなる。

潜在能力を引き出す力

従業員の潜在能力を引き出す力やモチベーションを高める力を持っていることも重要だ。前述の「育てる力」にもつながるが、うまくやる気を引きだしてくれる上司の下で働けば、従業員にとって仕事は苦痛なものではなく、やりがいに変わる。

これらのことを通じ、従業員がいまの職業や職場に責任を持って積極的に関わろうとしていれば、コロナ禍でも離職をある程度食い止めることができるはずだ。

情報をしっかり共有する

新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の経営者にとって想定外の出来事だった。そのため、事業の継続に関する不安やストレスを多く感じている経営者は少なくないが、不安を感じているのは従業員も一緒だ。

そのような従業員の不安をすぐ解消することは難しいが、会社の現状などをしっかりと共有することは、信頼関係を維持もしくは築いていくために非常に重要だ。不安を煽るような情報の扱いには注意すべきだが、こんなときだからこそ情報の透明性を意識しておこう。

休業中のサポートも真摯に

休業時の自宅待機期間に、丁寧に部下をサポートすることも重要だ。どのような悩みを抱え、どのようなストレスを感じているのか、定期的に聞いていくようにしよう。このように細やかなサポートは、部下との信頼関係を維持もしくは築いていくために重要なポイントとなる。

そして危機の最中だからこそ、そこで生まれた信頼関係は強いものとなる。

「残るメリット>離職するメリット」の意識を

新型コロナウイルスの第三波、第四波が来る可能性も捨てきれない中、中長期的な目線で「上司力」に関する取り組みはいますぐにでも始めた方がいい。「留まるメリット」が「離職するメリット」を上回れば、従業員は基本的には離職しないという方程式を頭に入れ、今から上司力のアップに努めてみてはいかがだろうか。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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