2019年度の国内病院設備機器市場を前年度比99.6%の1,755億円と予測
~病院の新築・増改築案件は減少傾向に転じており、国内の病院設備機器市場はリプレースを中心とした厳しい状況が続く~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の病院関連機器市場を調査し、市場規模推移・予測、製品タイプ別や機能別の動向、新製品の上市による影響等を明らかにした。
国内病院設備機器市場推移・予測
1.市場概況
本調査では、診断や治療に直接関わる機器を除いた、病院における主要な設備機器、医療情報・管理システムや中央材料室、手術室、調剤、病棟、受付などの関連機器を対象としている。
国内の病院設備機器市場は、基幹病院の救急医療体制・高度医療受け入れ態勢の整備が進み、特に手術室や中央材料室、受付関連機器など市場の拡大傾向が続いてきた。2014年度以降は、病院の新築・増改築案件は減少傾向に転じており、病院設備機器市場は厳しい状況にある。
2018年度の国内病院設備機器市場規模(販売元出荷金額ベース)は前年度比102.5%の1,762億22百万円と推計した。但し、前年度を金額ベースで上回ったのは27製品中の11製品にとどまった。引き続き減少傾向にある製品も多く、2019年度は同99.6%の1,755億28百万円になると予測する。
2.注目トピック
病棟用汚物洗浄機、マセレーター市場について
病棟用汚物洗浄機(ベッドパンウォッシャー)については、病院内スタッフの労力の軽減と安全性が向上するという背景に加えて、参入企業の増加に伴い納入価格が下がってきたことで、導入する施設は中小の一般病院にまで広がって来た。但し、これまでは拡大が続いてきたが、大規模病院の新設・増改修も一巡し、病院建築件数自体も減少傾向に転じているため、近年は減少が続いている。一方、再生紙を利用したディスポーザブルの便尿器等を汚物ごと粉砕、排水処理を行うことができるマセレーターシステム(パルプ処理装置)が国内に導入されたことで、病棟用汚物洗浄機にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目されている。
3.将来展望
厚生労働省の令和元年(2019)医療施設(静態・動態)調査によると、国内の病院施設数は前年比80施設減の8,292施設となり、1990年の10,096施設から減少傾向が続いている。そのうち一般病院は前年比76施設減の7,238施設で、新たに開設される施設よりも廃止施設数が上回った結果による減少であることがわかる。
また、国土交通省の建築着工統計によると、用途別・使途別床面積推移の医療業・保健衛生用施設は2018年が3,001棟・2,025千㎡、2019年は2,905棟・2,365千㎡で、予定工事額は2018年で6,009億78百万円、2019年で7,670億円52百万円となっている。こうしたことから、今後の病院設備機器市場の需要の中心は新規案件よりも、既存施設のリプレースであるとみられ、工事単価も上昇していることからも、病院設備機器にかけられる費用は少なく、引き続き厳しい状況にあると考える。