篠崎 克志社長(37)
(画像=ビジネスチャンス 篠崎 克志社長(37))

スポーツフィールド(東京都新宿区)
篠﨑 克志 社長

スポーツフィールド(東京都新宿区)は、「体育会系学生を中心としたスポーツ人財」就職支援というニッチ市場を開拓し、昨年東証マザーズ上場を果たした。160名超のうち約90%が体育会系出身者という営業スタッフが、学生一人一人に悩みを聞き、アドバイスを送ることでスキルアップを促すアナログ的支援が特徴だ。2020年3月は卒業生5375人以上を794社以上の企業に紹介しているという。(※2020年6月号より)

篠崎 克志
篠﨑 克志
しのざき・かつし
1982年7月13日生まれ、東京生まれ北海道育ち。大学卒業後、2005年リンク・ワンに入社、2007年ガーディアンウィル(現スポーツリンク)入社、2009年スポーツリンク取締役、2010年スポーツリンク埼玉(現スポーツフィールド)代表取締役に就任。

「スポナビ」ブランドでサービス提供 主要セミナーには2000人が参加

─設立9年で昨年12月にマザーズ上場を果たしました。

篠﨑 おかげさまで上場当日は公開価格2730円に対して、約2.3倍の6280円にまでになり、結局売買が成立しませんでした。それだけ投資家の方に高い評価を頂けたのだと思います。

─ 就職支援サービス業には、リクルートをはじめ、学生情報センター・エンジャパン・マイナビなど大手がひしめいています。

篠﨑 ただ当社の場合は、前提として求職者が体育会学生であるということが圧倒的に違います。多くの同業者は効率重視による「広く浅く」ですが、当社の場合は敢えてターゲットを絞った「狭く深く」を追求しています。

─対象を限定しているという点では、クックビズの料理人紹介サービスに近いですね。

篠﨑 それが当社の特徴であり、強みでもあります。

─「スポーツ人財」に特化しているということですが、そもそもスポーツ人財とは。

篠﨑 過去に部活動などのスポーツ経験のある人材で、特に新卒学生に関しては、体育会・運動部所属学生を指します。

─体育会学生は毎年何人ぐらいいるものなのですか。

篠﨑 学生全体ではだいたい60~70万人いるといわれていますが、体育会学生はそのうち10%程度です。

─「スポナビ」ブランドで、就職説明会を始めとした「イベント事業」と「人財紹介事業」の2つが大きな柱です。

篠﨑 「スポナビ」とは当社のサービスの総称です。「イベント事業」は多くの体育会学生が一堂に会する「合同就職セミナー」はじめ様々なイベントを用意しています。多い時には出展企業が70社以上、参加者は2000人が集まります。中でも、増加しているのは少人数に限定して、学生が企業をローテーションで回り最後に交流会を設ける「合同就職セミナープラス」です。一方、「人財紹介事業」は、文字通り、一人一人の学生と企業をマッチングするビジネスです。ウェブ上であらかじめ登録していただき、ちょうどその人に合った企業を紹介させていただいています。スポーツをキーワードに学生の属性を絞り込むことで、より企業のニーズに対応することができるのです。

スタッフ90%以上が体育会出身 面談通じコミュニケーション深める

─2019年12月の売上高は19億1700万円ですが、その内訳は。

篠﨑 売上の42%を占めているのが新卒イベントで、既卒者の人財紹介が28%、新卒の人財紹介が26.6%を占めています。イベントは企業の出展料が売り上げの中核を占めています。出展料はサービスや時期によって異なります。現在、トータルすれば年間147日行っています。

─「人財紹介事業」は、2015年からスタートさせています。

篠﨑 例えば「スポナビエージェント」というサービスは、登録者に対して就職カウンセリングを実施して、就職先を紹介します。内定承諾後、成果報酬として採用コンサルティング料を企業から受領するものです。既卒者向けのサービス「スポナビキャリア」も同様に企業から人材紹介料を受領します。

─求人クライアントはどのような企業が多いのですか。

篠﨑 一般的な求人事業と大きな差はありません。不動産やサービス業は多いですし、営業職や販売職へのニーズが安定してあります。紹介先企業は約800社です。

─単に登録した学生をウェブ上で紹介するだけでなく、スタッフが一人一人と面談する「アナログ型」が他社にはない特徴です。

篠﨑 当社には現在、200名以上の社員が在籍していますが、営業員の90%以上が体育会出身で、野球・サッカーなどのメジャー競技だけでなく、34競技もの幅広い経験者で構成しています。挫折経験など同じ境遇の中で学生生活を送ってきた者同士しかわからない悩みがあるはずです。

─面談を通じてコミュニケーションを密にすることで、より学生に寄り添ったアドバイスができる。

篠﨑 体育会系の学生はそれこそスポーツ一筋に打ち込んできたがために、狭い世界しか知らない。メンタル面でのアドバイスも多い。

─ 自分が本当にやりたい仕事や、本当に社会人として活躍できるのかなど、体育会ならではの不安も多い。

篠﨑 そこで実際に合うことで、まだ自分も知らない潜在的な能力を引き出して自信をつけていくことも大切です。1度だけでなく、何回も会うことも多い。

登録者数は2万人を突破 大都市圏から地方へ拠点を拡大

─現在「スポナビ」の登録者数は2万人を超えています。

篠﨑 年々増加し、現在は2万917人です。学生は1~3年生から体育会への直接訪問などによってアプローチしているほか、クチコミによって認知度が高まっています。

─登録者のうち企業紹介にまで至る数は限られるでしょう。

篠﨑 実は今抱えている課題はそこなのです。そのため、今後も積極的にスタッフを増やしてカバーするとともに、効率的な方法も考えていかなくてはなりません。また紹介先の企業はむやみに増やすのではなく、より学生に支持される企業を絞り込んでいく必要もあります。

─少子化によって登録者は頭打ちになりませんか。

篠﨑 逆にまだまだ学生の掘り起こしはできると考えています。体育会学生数を4学年合計で20~50万人とすれば、スポナビの登録者は1学年当たり16~40%程度です。より一層登録者を増やすためには、拠点とスタッフの拡充に力を入れていきたいと考えています。

─現在は全国に11拠点を展開しています。

篠﨑 大都市圏中心だったものをもっと、地方にも広げていきたい。地方にも大学はあるわけで、地元大学と密に連携していきたい。地方は他社が進出していないブルーオーシャンです。もちろん、収益性は担保にしつつ、多店舗化を進めていきたいと考えています。

─「デュアルキャリア」事業など新しいビジネスにも取り組んでいる。

篠﨑 事業領域を広げるために、3か月に1回新規事業提案会を実施しています。その中の一つ「デュアルキャリア」事業は、スポーツと仕事の両立をテーマに、アスリートのセカンドキャリア問題を解決するものとして考えています。スポーツによっては続けたいとしても、生計を立てられないものも多い。スポーツに打ち込みながら、派遣や紹介、紹介予定派遣で就労経験を積める就労先を案内し、引退後にビジネスの世界に円滑に移行できるサポートを積極的に行っていければと考えています。