矢野経済研究所
(画像=Lowpower/stock.adobe.com)

パッケージ印刷市場は拡大基調で推移

~ここ数年の市場の成長は総じて価格転嫁効果が下支え~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のパッケージ印刷市場の調査を実施し、各市場・各需要分野の動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。

パッケージ印刷市場規模推移

パッケージ印刷市場規模推移
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

2024年度のパッケージ印刷市場規模(事業者売上高ベース)は1兆5,204億2,700万円、前年度比2.2%増となった。物価高の影響から消費者の節約志向が高まり、買い控えが継続するなか、主力の食品分野の需要がなかなか上向かない一方で、セルフメディケーションが推進される中でOTC医薬品(一般用医薬品および指定医薬部外品)向けの需要は堅調に推移、また化粧品向けの需要もマスク着用機会の減少やセルフケア志向の高まりなどにより、引き続き伸長した。

医療用医薬品向けについても、政府のジェネリック医薬品拡大支援策として、2024年10月に「後発医薬品がある先発医薬品(長期収載品)の選定療養」制度※が開始されたことにより、ジェネリック医薬品向けの需要が復調、これにより下期から紙器の需要が急拡大した。これらに、原燃料費や物流費、人件費等の上昇を受けた各参入事業者が実施した価格転嫁の効果が加わり、市場規模は増加基調となっている。

※出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html)

2.注目トピック

ここ数年、パッケージの生産方式も環境負荷低減に向けた取り組みが進む

軟包装では、環境に配慮したパッケージを提供するだけでなく、パッケージの生産方式においても、環境負荷を低減する取り組みが進んでいる。その主な取り組みは無溶剤の生産設備の導入となる。現状多くの事業者において、ノンソルベントラミネート機の新規導入が進んでいる。まだ課題もあるが、VOC(揮発性有機化合物)を排出しない生産方式として、注目度は高まっている。

また印刷機においても、従来の溶剤系インキに比べてVOC排出量を大幅に抑制できる水性インキを使用した水性フレキソ印刷機のほか、EB(電子線)オフセット印刷機の導入事例も新たに出てきている。EBオフセット印刷機については、導入した事業者では、まだ本格稼働には至っていないものの、VOC排出量ゼロはもちろんのこと、主要な印刷方式であるグラビア印刷に比べて、二酸化炭素排出量が大幅に削減できると言われていることから、実用化が期待されている。

このほか、ここ数年、デジタル印刷機においても水性インクを使用した軟包装向け水性インクジェット印刷機の導入が進んでいる。一部の導入事業者では、既にこうした水性インクジェット印刷機で印刷する軟包装材の受注実績を積み上げている。今後、この水性インクジェット印刷機が軟包装材における新たなソリューションになれるのか、その動向が注目される。

3.将来展望

2025年度のパッケージ印刷市場規模(事業者売上高ベース)は1兆5,440億円、前年度比1.6%増を見込む。

2025年度は、ここ数年の消費者の買い控えの影響が落ち着いてくれば、主力の食品分野が上向き、需要環境はやや改善されるものと見られるが、現状は前年度と大きくは変わっていない。一方で、事業コストは引き続き上昇している。2025年度についても、各参入事業者において価格転嫁を実施する可能性も高まっている。その転嫁効果が再び市場を押し上げ、2025年度も市場規模は引き続き拡大する見通しである。

調査要綱

1.調査期間: 2025年5月~7月
2.調査対象: 軟包装印刷コンバータ、アルミニウム加工箔メーカー、紙器印刷コンバータ 、及び関連メーカー
3.調査方法: 当社専門研究員による面接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、郵送アンケート調査ならびに文献調査併用
<パッケージ印刷市場とは>
本調査におけるパッケージ印刷市場とは、軟包装分野と紙器分野を対象とし、これらの分野のコンバーティング(印刷加工)市場を指し、事業者売上高ベースで算出している。
軟包装は、プラスチックフィルム包装材を指し、アルミニウム加工箔包材も含む。
紙器は、主に外装用途で使われる紙製の箱を指し、紙コップや液体カートンなどの液体容器や紙袋は含まない。また、紙器の中でも板紙に印刷加工が施された紙箱を対象にしており、仕上げ紙(くるみ紙)で包み、貼り込んで作られる貼箱や印刷加工がされてない簡易箱、また段ボールについては対象外としている。但し、段ボールにおいて、用途が重なっているマイクロフルート(F段、G段)や一部の板紙との合紙品は含む。
<市場に含まれる商品・サービス>
軟包装、紙器

出典資料について

資料名2025年版 パッケージ印刷市場の展望と戦略
発刊日2025年07月25日
体裁A4 396ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

お問い合わせ先

部署マーケティング本部 広報チーム
住所〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress@yano.co.jp

©2025 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。