矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

5Gの普及により、アンテナやセンサー、伝送回路などで使用される高周波対応・低誘電の絶縁フィルム市場の成長が期待される

~FCCL用PIフィルムの2019年世界メーカー出荷量は、21,730万㎡(4,800t)の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、各種ディスプレイやFPCの部材及び副資材として使用されるエレクトロニクス関連フィルム世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、FCCL用PIフィルム世界市場規模、回路基板用の低誘電フィルムの将来展望について公表する。

FCCL用PIフィルム世界市場規模推移・予測

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1.市場概況

FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate:フレキシブル銅張積層板)用PI(Polyimide:ポリイミド)フィルムの2019年世界出荷量(メーカー出荷数量ベース)は、21,730万㎡、4,800t(面積ベースで前年比105.8%、重量ベースで同106.7%)の見込みである。

FPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブルプリント基板)やTAB、アンテナなどの基板として使用されるFCCL用絶縁フィルムには、超低温(-269℃)から超高温(400℃)までの広範囲な温度領域でも優れた機械的・電気的・化学的特性を有するPIフィルムが主に使用されてきたが、5G(第5世代移動体通信システム)関連の市場が立ち上がる中で、回路メーカーサイドでは従来以上に低吸湿で電気特性に優れた材料が求められ、LCP(液晶ポリマー)やフッ素などの採用検討が進んでいる。現時点では、いずれの材料も、電気特性や吸水性といった材料の特性・性能や、ハンドリング適性、供給体制、価格といった点で一長一短があり、デファクトスタンダードは決まっていない。

2.注目トピック

誘電正接、吸水率を LCP に近付けた改良 PI フィルムの採用始まる

PIフィルムはこれまでFCCL基板として幅広く採用され、FPC、TAB、COF(Chip on Flexible)などの用途で活用されてきた。 従来FPCなどの回路基板の絶縁層として使用されるPIフィルム(一般グレード)は、吸水率 1% 以上、誘電正接 0.01 程度(10~28GHz帯)程度で、4Gまでは問題なく使用できるものの、5Gレベルの高速・大容量通信では伝送損失による通信の速度・容量の低下が問題となる。

競合材料であるLCPフィルムは、吸水率が 0.02~0.04%程度と殆ど吸水せず、誘電正接は 0.002 が標準であるなど、5Gにも十分に対応するが、ユーザーであるFCCLメーカーでは、これまで絶縁材料のスタンダードであるPIフィルムの使用を前提として、設備や工程を最適化してきた経緯があり、設備・ 工程を変えずに5Gに対応したいという要望が大きい。

PIフィルムメーカーでは、これに応える形で原料のPI樹脂を分子設計から改良し、吸水率や誘電正接をLCPフィルムに近付けるためのPIフィルムの開発を推進している。これまでサンプルワークが進められてきたが、2019年に入り採用実績が上がってきている。

3.将来展望

FCCLに代表される回路基板用の低誘電フィルムでは、これまでは PI vs. LCP のように既存の材料競合の範囲で語られることが多かった。しかし、5G市場が立ち上がれば通信や自動車、家電、産業機器といった製品の進化にとどまらず、医療、交通、教育といった社会インフラの変革、働き方の改革、スマートシティの実現など、社会システム全体にかかわる一大産業になると予測され、アンテナやセンサー、伝送回路などで使用される高周波対応・低誘電の絶縁フィルム市場も従来にない規模での成長が期待される。

ここでのデファクトスタンダードを獲得するためには、誘電正接や比誘電率、吸水率、寸法安定性など伝送損失抑制にかかわる性能だけでなく、導電層である銅箔との密着性や金属層に合わせた熱膨張係数の調整、限られたスペースでの効率のよい配線を実現する折曲げ性など、回路製造工程の簡便化や回路の信頼性向上、ユーザーである回路メーカーの配線設計自由度の拡大を考慮し、回路基板トータルとしての性能バランスをいかにとっていけるかという視点が求められている。