
2033年の定置用ESS世界市場はメーカー出荷容量ベースで、家庭用ESSが53,740MWh、企業・業務用ESSは15,939MWhに成長を予測
~非常用電源や事業継続計画対策、ピークカット・ピークシフトニーズの高まり、政府や自治体などのインセンティブ制度が市場拡大を後押し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、2025年の家庭用及び企業・業務用の定置用蓄電池(ESS)世界市場を調査し、設置先別及び需要分野別、電池種別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
家庭用定置用蓄電池(ESS)の世界市場規模推移・予測

企業・業務用定置用蓄電池(ESS)の世界市場規模推移・予測

1.市場概況
2024年の定置用蓄電池(Energy Storage System、以下ESS)世界市場規模はメーカー出荷容量ベースで、家庭用ESSが13,687MWh、企業・業務用ESSが5,733MWhであったと推計する。
家庭用及び企業・業務用ともに、自然災害や異常気象に起因する停電リスクへ備えた非常用電源用途や、事業継続計画(BCP)対策としての導入に加え、系統電力料金の上昇に対応する電力の需要が低い時間帯に充電し、電力需要が高い時間帯に放電して電力の需給バランスを維持する電力負荷の移動(ピークカット・ピークシフト)需要、太陽光発電の売電単価下落を背景とした発電電力の自家消費ニーズの高まりにより、ESSの導入が拡大した。さらに、カーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギー発電設備およびESS導入に対する政府・自治体による各種インセンティブ制度も追い風となり、ESS市場の成長を後押しした。
このような状況は継続しており、2025年の定置用蓄電池世界市場規模は、家庭用ESSが前年比113.7%の15,557MWh 、企業・業務用ESSが同113.7%の6,520MWhを見込む。
2.注目トピック
家庭用、企業・業務用市場の動向
家庭用ESS市場においては、太陽光発電システム導入を支援するために、電力会社が余剰電力を一定の価格で買い取るネットメータリング制度や再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入された。その後、FITの買取価格の引き下げにより、自家消費の重要性が高まり、ESSの導入につながった。さらに、時間帯別料金の普及によりESSの経済性が向上し、電力料金負担の軽減を目的としたESS需要が増加している。
一方、企業・業務用ESS市場では、主要国政府による各種インセンティブ制度が成長の主要な推進要因となっている。加えて、AI技術の発展や暗号資産関連産業の拡大に伴い、データセンターの新設・増設に伴う電力安定供給ニーズがESS導入を促進する見込みで、企業・業務用ESS市場拡大を支える要因の一つになると予測する。
3.将来展望
家庭用ESS市場においては、売電価格の下落を背景に売電から自家消費への関心が高まり、ESS導入につながっている。日本、欧州、北米では戸建て住宅を主体とした居住形態が形成されており、かつ家庭用電気料金が比較的高水準にある地域で、家庭用ESSの導入が増加している。しかしながら、これらの地域におけるESSの普及率は太陽光発電システムを保有する家庭のうち少数に留まっており、今後のESS導入拡大に向けて大きな成長余地があると考えられる。
一方、企業・業務用ESS市場は、北米(特に米国)、欧州、中国を中心に拡大を続けている。市場成長の背景には、事業継続計画(BCP)対策としての需要に加え、系統電力料金の上昇に対応するピークカット・ピークシフトの需要がある。さらに、主要国政府による補助金や税制優遇措置などのインセンティブ制度が、成長を後押しする主要な要因となる見込みである。
このような背景から、2033年の定置用蓄電池世界市場規模はメーカー出荷容量ベースで、家庭用ESSが53,740MWh、企業・業務用ESSは15,939MWhになるものと予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2024年12月~2025年6月 2.調査対象: 日本及び海外の定置用蓄電池(ESS)関連メーカー 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<家庭用及び企業・業務用で用いられる定置用蓄電池(ESS)とは>
本調査では、家庭用および企業・業務用の定置用蓄電池(ESS:Energy Storage System)を対象とする。家庭用ESSについては、戸建て住宅やマンション・アパート等の集合住宅に導入される定置用蓄電池を対象とする。ただし、電力系統インフラが脆弱な開発途上国(インドやアフリカ諸国など)において使用される家庭向け鉛蓄電池は対象外とする。 企業・業務用ESSについては、公共施設やオフィスビル、医療・福祉・介護施設、工場、物流倉庫、データセンター、商業施設(ショッピングモール、コンビニエンスストア等)に設置される、非常用電源や事業継続計画(BCP)対策用設備、ならびに電力大口需要家(工場、ビル等)向けに導入される定置用蓄電池を対象とする。 定置用蓄電池の電池種別は、リチウムイオン電池(LiB)、鉛蓄電池、レドックスフロー電池、およびナトリウム基盤電池(ナトリウム・硫黄電池、ナトリウム塩化ニッケル電池、ナトリウムイオン電池(NIB)、ナトリウム亜鉛溶融塩電池等)といった化学的エネルギー貯蔵システムを含む。 ※関連資料 電力系統関連の定置用蓄電池(ESS)世界市場に関する調査を実施(2025年) https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3869 |
<市場に含まれる商品・サービス>
家庭用及び企業・業務用で用いられるESS(定置用蓄電システム)、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、レドックスフロー電池、ナトリウム基盤電池等 |
出典資料について
資料名 | 2025年版 定置用蓄電池(ESS)市場の現状と将来展望 ~家庭用及び企業・業務用編~ |
発刊日 | 2025年06月30日 |
体裁 | A4 313ページ |
価格(税込) | 220,000円 (本体価格 200,000円) |
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