
目次
- 1981年4月に北谷町で澤田組として創業 型枠工事一筋に技術を研鑽 2019年に株式会社化してさわだ建設に
- 2017年に本社を新築して北谷町からうるま市へ移転 本社ビル、別棟と従業員宿舎にはWi-Fiを完備
- 経営方針は「でーじ うむさよ」(沖縄県の方言で「とても面白い」) 人と人との結びつきを大切にしている
- ベトナム、インドネシア、スリランカから来日した技能実習や特定技能の人材が活躍 若い力が会社に活力を与える
- 従業員の資格取得を積極的に奨励 独立を志す人材には独自の制度で支援している
- 県内の16社で構成する協力会「沖縄型枠三水会」で中心的な役割 大型工事への参入や元請け企業への提案力強化につなげている
- 型枠工事を進める上でデジタル技術がもたらす効果に着目、3D‐CADシステム導入 同時に情報セキュリティー体制を構築
- 勤怠管理のスマートフォン入力により、現場の従業員の直帰と経理担当者の負担軽減で働きやすい環境を整える
- 建設技能者の実績を可視化する業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステムを運営当初から活用
- ホームページ作成システムを導入し、ホームページを自主運営 パンフレットの作成など多目的に活用している
- システムの連動性を高めることで業務効率の更なる向上を目指す 蓄積したデジタル技術の活用ノウハウを連携先に還元
コンクリートで造られた建造物の工事に欠かせない型枠工事を専業とする沖縄県うるま市のさわだ建設株式会社は、自社の垣根を超えて他社とアイデアや技術を交換する「オープンイノベーション」の発想を取り入れて、技術の研鑽(けんさん)と事業の拡大を図っている。海外人材の積極的な雇用を通じて会社組織の活性化に注力。建設業界向けのクラウドシステムである建設キャリアアップシステム(CCUS)や勤怠管理システムを導入し、連携先への還元を視野にデジタル技術活用のノウハウを蓄積している。(TOP写真:さわだ建設のホームページ)
1981年4月に北谷町で澤田組として創業 型枠工事一筋に技術を研鑽 2019年に株式会社化してさわだ建設に

「型枠工事は建物の基礎になる大事な工程です。私たちの仕事で建物が日に日に姿かたちを整えていく。その様子を見ることができる充実感は、何ものにも代え難いものがあります。作業には迅速さと正確さの両立が求められるので、常に技術を研鑽しています。経営体力を低下させる目先の価格競争に走ることなく、持続可能なビジネスモデルを作っていきたいと考えています」。沖縄本島中部のうるま市郊外にあるさわだ建設本社で、澤田博代表取締役は自らの思いを語った。
さわだ建設の歴史は、澤田社長の父親である澤田勝吉前代表取締役社長(現取締役)が1981年4月に北谷町で澤田組として創業。型枠工事一筋に技術を研鑽。2007年1月に澤田社長が20代後半で事業を承継した。社長就任直後にリーマン・ショックに見舞われ、経営は一時打撃を受けたが、古くからの取引先と連携しながら危機を乗り切り、業績を拡大。2019年、個人事業から株式会社化し、社名をさわだ建設に改めた。澤田社長が就任してから売上高は約10倍に拡大している。
2017年に本社を新築して北谷町からうるま市へ移転 本社ビル、別棟と従業員宿舎にはWi-Fiを完備

2017年、うるま市内に鉄筋コンクリート造2階建ての本社ビルを新築し、仮事務所の沖縄市から移転した。本社の敷地内には型枠の資材置き場や倉庫などを配置。本社ビル、図面作成部門を配置する別棟、従業員宿舎にWi-Fiネットワークを完備し、インターネットにスムーズに接続できる環境を整えている。本社の入り口には緊急時に備えて救命用医療機器であるAED(自動体外式除細動器)も配置している。
経営方針は「でーじ うむさよ」(沖縄県の方言で「とても面白い」) 人と人との結びつきを大切にしている

さわだ建設は沖縄の方言で「とても面白い」を意味する「でーじ うむさよ」を経営方針にしている。人の和と輪を大切にし、従業員一人ひとりが支え合いながら楽しく働ける環境をつくっている。人と人との結びつきを大切にする社風は、澤田勝吉前社長時代からの伝統だ。
「子どものころから建設の仕事に興味を持ち、従業員や取引先との人間関係を大事にする父親の姿を見て育ちました。学生時代に、取引先の人から『お父さんは本当に人間味のある人だ』との言葉をいただいて、本当にうれしく父を誇りに思ったことを今も覚えています。技術はもちろん大切ですが、それ以上に人と人との良好な関係やコミュニケーションは、質の高い仕事を成し遂げる上で欠かすことのできない要素と考えています。互いに支え合う文化を会社のDNAとして育み、次世代に伝えていきます」と澤田社長は話した。
ベトナム、インドネシア、スリランカから来日した技能実習や特定技能の人材が活躍 若い力が会社に活力を与える

さわだ建設の社風は、海外人材を受け入れる姿勢にも反映されている。さわだ建設では、ベトナム、インドネシア、スリランカから来日した技能実習や特定技能の人材が従業員の半数を占める。海外人材は、翻訳アプリをスマートフォンに取り込んで日本語でのコミュニケーションに活用。来日前から学んでいる日本語を日々の業務を通じてブラッシュアップしている。各国の大学などの高等教育機関で学んだ人材がそろい、仕事への意欲は高く、CADシステムを使った設計や現場管理といった業務も安心して任せられるという。
海外人材の年齢層は20代が中心。若い力は、会社に活力を与えている。インドネシアの実習生が同郷者で構成する県内のサッカーチームに加入し、会社も積極的にバックアップするといった動きも生まれている。「みんな温厚で真面目なので本当に助かっています。技術の習得だけでなく、日本を第二の故郷と思って日々の生活を楽しんでもらえたらうれしいですね」と澤田社長は目を細めた。
従業員の資格取得を積極的に奨励 独立を志す人材には独自の制度で支援している
さわだ建設は、国家資格の一級型枠施工技能士、民間資格の登録型枠基幹技能者に加え、建設業界でのキャリア形成に役立つ施工管理技士などの資格取得を従業員に奨励すると共に、資格を取得するために教習所に通う期間や試験を受ける日も給与支給の対象にしている。資格取得後は日給もアップしている。
また、独立して起業を志す人材に対し、独自の社内制度を設けてサポートしている。独立後、さわだ建設が仕事を依頼することで事業を軌道に乗せやすくするなど様々な支援の仕組みを整えている。「リスクと苦労はもちろんありますが、頑張れば頑張るほどやりがいを実感できるのが経営者の醍醐味です。起業を将来の選択肢の一つとするだけでも日々の仕事に対するモチベーションは確実にアップするので、若ければ若いほど、起業を検討するメリットは大きいと思っています」と澤田社長は話した。澤田社長自身、大学卒業後、県外で数年間、建設会社の従業員として勤めた経験を持っているので、会社勤めから経営者として独り立ちする上で必要なノウハウや心構えなどを具体的にアドバイスできるという。
県内の16社で構成する協力会「沖縄型枠三水会」で中心的な役割 大型工事への参入や元請け企業への提案力強化につなげている

さわだ建設は、外部の企業や団体とアイデアや技術を積極的に交換し、新しいビジネスやサービスの創造を目指す「オープンイノベーション」の発想を取り入れた連携活動に力を入れている。県内の16社(型枠13社、材料3社)で構成する協力会「沖縄型枠三水会」で中心的な役割を務め、数百人規模の団体として活動することで、大型工事への参入や元請け企業への提案力の強化につなげている。偶数月の第3水曜日に会合を設け、税制、社会保障制度、建設業の許可制度、型枠の技術、DXなどをテーマにした勉強会や情報交換会を開催。チャリティー活動も積極的に行っている。「今後、活動の輪を広げることで県内の型枠業界を明るく元気にしていきたい」と澤田社長は抱負を述べた。
型枠工事を進める上でデジタル技術がもたらす効果に着目、3D‐CADシステム導入 同時に情報セキュリティー体制を構築

さわだ建設は、働きやすい環境を整える上でデジタル技術がもたらす効果に着目し、型枠設計に欠かせない3D‐CADシステムや基幹業務の支援システムを積極的に活用している。同時に情報セキュリティー体制を整えるため、ファイアウォール、IPS(侵入防止システム)、Webフィルタリング、アンチウイルス、スパムメール対策、アプリケーション制御といった様々なセキュリティー機能を統合したUTM(統合脅威管理)機器を導入している。
勤怠管理のスマートフォン入力により、現場の従業員の直帰と経理担当者の負担軽減で働きやすい環境を整える

2023年2月には、それまで紙ベースで行っていた勤怠管理業務をデジタル化するために勤怠管理システムとスマートフォンから出退勤の打刻ができるアプリを導入した。以前は、従業員が、それぞれの1ヶ月間の勤務状況を用紙に記入し、月初めに本社に赴いて勤怠管理の担当者に提出していた。毎月、従業員全員の用紙がそろうまで3日から4日要し、それから日報と照合した上で給与計算システムに入力するため、勤怠管理担当者は仕事に追われている状態だったという。
システムの導入後は、従業員がそれぞれのIDを基にスマートフォンに取り入れたアプリから出勤時刻と退勤時刻を打ち込めばそのまま勤怠管理システムに反映できるようになったので月末には従業員全員の1ヶ月の勤務状況を把握できるようになった。そのまま時間を置かずに給与計算システムに入力できるので給料の支払日を1週間早めることができたという。従業員も月初めに本社に立ち寄る必要がなくなり、現場と自宅を直行直帰できるようになった。
建設技能者の実績を可視化する業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステムを運営当初から活用
これらのシステムに加え、従業員の将来を考えて2019年から活用しているのが、建設技能者の実績を蓄積し、可視化する業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム(CCUS)だ。CCUSは国土交通省の主導で一般財団法人建設業振興基金が運営し、2025年5月末の時点で、全国で約166万人の技能者、一人親方を含めて約30万の事業者が登録している。
「システムに登録することで、対象者は自らが積んだ経験や取得した資格をわかりやすく証明できるので、建設業界で働いていく上での将来の見通しを立てやすくなります。費用対効果が高いと思い、システムの運用開始と同時に導入を決断しました」と澤田社長は説明した。さわだ建設では、海外人材を含めて現場作業を担当する約20人の従業員がCCUSに登録。そのうち3人が最高位の技能レベルを示す「ゴールド」に認定されている。
ホームページ作成システムを導入し、ホームページを自主運営 パンフレットの作成など多目的に活用している

事業規模を拡大する中で、取引先だけでなく幅広い層に会社の取り組みや技術力を発信する必要性が高まったことから、2020年にホームページ作成システムを導入。同年8月からホームページの運営を始めた。ホームページ作成システムは豊富なテンプレートを搭載し、編集やプログラムの専門知識がなくてもコンテンツを機動的に更新できる機能を備えている。「専門業者に委託する必要がなく、コストを抑えてホームページの運営を内製化できるので非常に助かっています」と澤田社長。ホームページでは会社概要、施工事例、採用情報に加え、図面作成から型枠の加工、墨出し、型枠の建て込み、コンクリートの打設、型枠の解体、躯体の完成に至る仕事の流れを写真付きで詳しく紹介。沖縄型枠三水会についての情報も掲載している。
ホームページ作成システムはパンフレットの作成機能も備えている。ホームページの情報を基に社内の複合機でプリントアウトすることで質の高い会社案内のパンフレットができあがるので、展示会や求職者向けの会社説明会に出展する時に役立っているという。
システムの連動性を高めることで業務効率の更なる向上を目指す 蓄積したデジタル技術の活用ノウハウを連携先に還元

今後、3D-CADなど設計で使用しているシステムと積算、日報管理、会計など他のシステムとの連動性を高めることで、業務効率の更なる向上を図り、蓄積したデジタル技術の活用ノウハウを沖縄型枠三水会の会員企業にも還元していきたいという。「デジタル技術は進化が著しく、建設現場の仕事の進め方は今後、大きく変化していくことでしょう。建設業界のデジタル化の潮流にしっかり乗っていきたい」と澤田社長。オープンイノベーションを推進する上でデジタル技術が持つポテンシャルは大きい。型枠を次世代にとって持続可能性が高い産業として盛り立てるさわだ建設のこれからの取り組みに期待がかかる。
企業概要
会社名 | さわだ建設株式会社 |
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本社 | 沖縄県うるま市石川伊波1515番地15 |
HP | https://sawada-k.co.jp |
電話 | 098-965-0200 |
設立 | 2019年3月 |
従業員数 | 22人 |
事業内容 | 建設業(型枠工事業) |