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2025年7月、日本のブロックチェーンゲーム業界に激震が走りました。初日に30万ダウンロードを記録し、業界の大きな期待を背負ってローンチされた大型タイトル「TOKYO BEAST」が、わずか76日という短期間でサービス終了を発表したのです。
TOKYO BEAST
— TOKYO BEAST トライアルズ (@TOKYOBEAST_G_JP) July 22, 2025
サービス終了のお知らせ
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『TOKYO BEAST』は2025年8月24日(日) 17:00(JST)をもちまして、 サービスを終了させていただく運びとなりました。
突然のお知らせとなってしまい大変申し訳ございません。… pic.twitter.com/xAnWBaxdWE
この一件は、単なる一ゲームの終了に留まらず、現在のBCG業界が抱える「Play to Earn」モデルの限界や、収益性とゲーム性の両立の難しさといった構造的な課題を浮き彫りにする象徴的な出来事として、多くの議論を呼びました。
本記事では、公式発表と運営が実施したAMAの内容を一次情報として、終了に至った背景、USDCによる詳細な補填内容、今後のスケジュール、そしてユーザーが取るべき実務的な対応を整理します。
また、サービス終了に伴い発生する税務上の論点について、専門家である村上さんの解説をあわせてお届けします。
関連:TOKYO BEAST(東京ビースト)とは?ゲームの遊び方・稼ぎ方・違法性まで徹底解説
サービス終了に至った背景と今後の方針
TOKYO BEASTの運営チームはサービス終了に至った理由について、公式発表およびAMAの場で「運用コストとのバランスを取ることが困難になった」ためと説明しています。プロデューサーの言及によれば、ゲームの多機能性に加え、3Dを中心としたクリエイティブが高コスト構造を招き、ステークホルダーと協議を重ねた結果、サービス終了という苦渋の決断に至ったとのことです。
ゲーム本編はサービスを終了しますが、プロジェクトの基軸トークンである「TGT」と、その運営主体である「TOKYO GAMES Foundation」は今後も活動を継続します。
また、NFTはサービス終了後もユーザーのウォレットに残り、画像やメタデータは維持する方向で検討。 マーケットプレイスも運営手数料を0%にした上で開放を続ける方針です。 さらに、すでに第2弾以降のタイトル開発も進行中であると明かしており、今後の展開が注目されます。
補填内容について
運営は補填の基本方針として、USDCを基準通貨として用いることを発表しています。 これは、サービス終了アナウンス後のTGTトークンの価格変動リスクや、将来的な売り圧を避け、ユーザーへの補填価値を安定させるための判断であると説明されています。
補填の対象となる資産の判定は、 2025年7月22日(火) 17:00 (JST)時点 のスナップショットに基づいて行われ、対象者のウォレットへ順次USDCが送付されます。
BEAST NFTの補填
当初はランク別の補填が予定されていましたが、ユーザーからの意見が最も多かったことを受け、AMAを経て
熟練度 を基準とした方式に変更されました。 具体的な計算式は「
基本補填額(200ドル) + (熟練度 × 15.15732ドル) 」と定められています。 この基本補填額は、BEAST NFTのミント価格に相当します。
その他のNFT・ゲーム内資産の補填
その他の資産については、以下の通り区分され補填が実施されます。
- 全額補填の対象
・未使用の有償「GEM」
・一次販売で購入し、自身で保有している「LUCKY TICKETNFT」 (※エアドロップ等で無償取得した分は対象外 ) - 評価額に基づく補填の対象
・BEAST RAWDISK NFT:7月20日時点の二次流通市場のフロア価格を基準に評価されます。
・LUCKY TICKET NFT(二次流通分):流通量が最も多い「GOLD」の平均価格を基準に、種類別の補填単価が設定されています。
・PLAYER ICON NFT:ミント価格を基準に評価されます。
・TGT STAKING:7月20日時点の市場価格に加え、ステーキング期間に応じた長期保有ボーナスが加算されます。 また、アンステーク時に発生する手数料は、未クレームのTGTで満額補填されます。
補填の対象外となるもの
運営は、原則として「TRIALS」モードなどで既に
消費されたゲーム内通貨やアイテム は補填の対象外としています。 これは、一般的なオンラインゲームのサービス終了時の方針に準じたものと説明されています。
また、不具合により発生した「不正LUCKY TICKET NFT」も補填対象外ですが、これを知らずに指定期間内(7月13日17:00~7月14日23:00)にマーケットプレイスで購入したユーザーは、運営に申請することで購入額の全額補償を受けられる救済措置が取られています。
詳細はこちら:https://note.com/tokyobeast/n/n01c397dc1483
今後の終了スケジュール
公式発表によると、サービス終了に向けたゲーム内機能の停止や各種手続きは、以下のスケジュールで進行します。
- 2025年7月22日(火) 17:00
・TBストアでの販売終了
・チャンピオンシップのベッティングおよび上位賞金の廃止 - 2025年7月31日(木) 17:00
・「TOKYO BEAST BASE」のサービス終了 - 2025年8月22日(金) 17:00
・アリーナ終了 - 2025年8月24日(日)
・12:00:チャンピオンシップ最終回 実施
・17:00:「TOKYO BEAST TRIALS」および「マッチアップ」のサービス終了。これをもって全サービスが終了となります。 - 2025年8月25日(月) 17:00 (予定)
・有償ジュエルの払戻し申請 受付開始 - 2025年9月30日(火) 15:00
・アプリの配信停止払戻し申請の受付終了
7月31日の「BASE」サービス終了までの期間、GACHAやBREEDINGでのジェム消費などが無料化される一方、ステーキング機能などは報酬の受け取りやアンステークのみに制限されます。 また、有償ジュエルの払戻しを希望するユーザーは、手続きが完了するまでアプリをアンインストールしないよう注意が促されています。
トークンに関する税金周りを専門家に聞いてみた
今回、暗号資産領域の税務に精通する税理士の村上さんに、TOKYO BEASTのサービス終了に伴うUSDC補填に関する税務上の論点を一問一答形式で回答していただきました。
村上さんは「魔界の税理士」の愛称で知られ、YouTubeやSNSで暗号資産・NFT・ブロックチェーンゲームの税務について情報を発信しています。
Q.USDCを受領した場合、「受け取った瞬間」に課税されるのでしょうか、それとも日本円に換金した時点でしょうか。
A.はい。USDCを受け取った時点で課税対象となる利益が発生します。
Q.個人の場合、この所得区分は原則として雑所得に該当するのでしょうか。事業所得に該当し得る線引きは何でしょうか。
A.はい。雑所得に該当します。『ブロックチェーンゲームの報酬は、雑所得に区分され・・・』というのが国税庁から発表されている「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」に明記されており、今回のTOKYO BEASTのUSDC補てんについても、ブロックチェーンゲームから得られる報酬と理解できるため、雑所得となります。
暗号資産トレードなどを本業としている場合は、一定の要件を満たすことで事業所得として計上が可能ですが、ブロックチェーンゲームから得られる報酬については雑所得と明記があることから事業所得計上はできないと考えられます。
なお、暗号資産トレードを事業所得として計上する場合の要件は、
- 開業届などの税務署の届出書を提出すること
- 暗号資産にかかる収入が300万円以上であること
- 暗号資産取引に係る帳簿保存があること
- 本人にとって、暗号資産トレードが社会通念上の要件を満たすこと
となります。
社会通念上の要件というのは、要は「本気で暗号資産トレードをやっているかどうか?」であり、営利性や有償性、反復性など複数の面から検討されます。つまり、会社員が副業でやっている暗号資産トレードについては、社会通念上の要件を満たすのが難しく、事業所得計上が難しいのではないかと考えます。
Q.受領時の評価レートは、どの時点のどの相場を用いればよろしいでしょうか(取引所レート/時価、TTM相当など)
A.受領時点の暗号資産の時価で計上することになります。実務的には、クリプタクトなどの損益計算ツールを活用して、自動で時価を集計する方法か、エクセルなどの手計算でやる際は、Coinmarketcapなどの暗号資産の価格情報サイトから、取引時点の時間もしくはその日時の平均のレートなどを用いて計算します。
Q.受領後に価格が変動した場合、売却時の損益は「売却価額-受領時評価額」で計算する整理でよろしいでしょうか。
A.はい。その計算の通りです。
Q.雑所得として計上した損失は、他の所得や他の暗号資産損益と通算できるでしょうか。
A.はい。雑所得の総合課税のものとは相殺が可能です。
例えば、
- 暗号資産FX取引の損益
- 海外のFX取引所の損益
- (事業として行っていない)副業の収入
などは雑所得の総合課税となっており、相殺が可能となります。
Q.損失の繰越控除は認められるでしょうか。また、認められる場合の要件は何でしょうか。
A.いいえ、これは認められていません。
Q.USDC受領に源泉徴収は発生するでしょうか。発生しない前提で問題ないでしょうか。
A.いいえ、発生しません。
Q.発行体や運営が海外の場合でも、日本居住者は日本で申告が必要という認識です。国外財産調書や国外送金等調書の提出要否はあるでしょうか。
A.日本居住者は、暗号資産を保有しており、一定の要件を満たしている場合は、財産債務調書に暗号資産を記載しなければなりません。
ですが、国外財産調書の記載義務はありません。
財産債務調書は、年収2000万円以上かつ3億円以上の財産などの要件を満たした場合です。
Q.取引手数料やガス代は必要経費として控除できるでしょうか。どの時点のレートで計上するのでしょうか。
A.はい。TOKYO BEASTのプレイにかかる手数料やガス代は必要経費として計上可能です。手数料やガス代がかかった時点の暗号資産の時価で計上することになります。
実務的には、クリプタクトなどの損益計算ツールを活用して、自動で時価を集計する方法か、エクセルなどの手計算でやる際は、Coinmarketcapなどの暗号資産の価格情報サイトから、取引時点の時間もしくはその日時の平均のレートなどを用いて計算します。
以上が、村上さんによる回答になります。
暗号資産の税務に関するさらに詳しい情報や、村上さんへのご相談は、以下のリンクをご確認ください。
・村上裕一公認会計士事務所公式HP: https://crypto-cpa.jp/ ・魔界の税理士ちゃんねる: https://www.youtube.com/@makai-tax ・お問い合わせ用公式LINE: https://lin.ee/4gms8oB |
最後に
高いクオリティと大きな期待を集めて登場した「TOKYO BEAST」のサービス終了は、現在のブロックチェーンゲーム市場の難しさを再認識させる出来事となりました。 しかし、この挑戦は単なる失敗ではなく、大規模なWeb3ゲーム開発・運用の貴重な実践例として、業界に多くの示唆を与えたと言えるでしょう。
特に評価されるべきは、運営の事後対応です。市況が不安定な中でTGTではなくUSDCでの補填を選択し、ユーザー資産の価値を安定させたこと、そしてAMAを通じてコミュニティの声に耳を傾け、「BEAST NFT」の補填基準を熟練度へ変更したこと は、ユーザー本位の姿勢を示すものです。この規模のプロジェクトをゼロから立ち上げた挑戦とあわせ、その真摯な対応は次に繋がるポジティブな要素です。
ゲーム本編は一区切りとなりますが、基軸トークン「TGT」と「TOKYO GAMES Foundation」は活動を継続し、すでに第2弾タイトルの開発も進められています。 今回の挑戦で得られた多くの知見が、次のプロジェクト、ひいては日本全体のWeb3市場のさらなる成熟に活かされることを期待し、今後もその動向を注視していきます。