地元ファーストでインフラ整備に取り組む デジタル技術を活用して新しいワークスタイルへ 東建設(京都府)

目次

  1. 関西文化学術研究都市の一翼、京都府京田辺市で創業以来、60年を超える歴史 地域との共存共栄を重んじる
  2. 設計から施工まで一気通貫のサービスを提供 地元の活性化につながる事業の依頼も多い
  3. 2008年から2010年にかけて地元の業界の中で率先して施工管理システムと積算システムを導入
  4. 従業員の視点からのメリットを考えて2023年、業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録
  5. 企業向けのホームページ作成システムを導入して会社の情報を積極的に発信 将来の担い手にアピールしていく
  6. UTM機器を導入して重層的なネットワークの防御体制を構築 従業員のセキュリティー意識の向上も図る
  7. 建設機械へのICT機能の後付けやドローンの活用を視野に入れる
中小企業応援サイト 編集部
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「とんちの一休さん」で有名な室町時代の高僧、一休宗純(いっきゅう そうじゅん)ゆかりの地として知られる京都府南部の京田辺市。同市内に本社を構え、創業から約60年の歴史を持つ株式会社東(あずま)建設は、地域の道路、水道といったインフラ整備や民間の建築工事に取り組んできた地元ファーストの土木建築施工会社だ。建設業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用して業界内での新しいワークスタイルの確立を目指す一方、ホームページ作成システムを活用した情報発信にも力を注いでいる。(TOP写真:東建設が取り組む送水管改良工事)

関西文化学術研究都市の一翼、京都府京田辺市で創業以来、60年を超える歴史 地域との共存共栄を重んじる

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地域の暮らしに欠かせないインフラ工事も数多く手掛けている

「東建設が最も重視しているのは地域との共存共栄です。建設業の枠を超えて地域に貢献できる会社であることを常に心掛けています。責任感を持ってしっかりと筋を通す昭和時代の気質の良いところを大事にしながら、デジタル技術を活用して仕事の進め方や働き方を改革することで、令和時代に適応した会社にアップデートしていきたいと考えています」。取材に応じた中村秀岐取締役統括部長は穏やかな表情で話した。

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東建設のオフィス

東建設は1964年、京都府綴喜郡田辺町で地域密着の土木建築施工会社として創業した。当時、町内では大規模な住宅開発が進み、道路、水道といったインフラ整備の需要拡大に応えることで順調に業績を伸ばし、1984年に株式会社に移行した。1997年4月に田辺町は市制施行し、京田辺市になった。京都・大阪・奈良の三府県にまたがる西日本最大のサイエンスシティ、関西文化学術研究都市の一翼を占める市として今後も発展が期待されている。

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2024年にリノベーションした本社1階の応接室

京田辺市内の閑静な住宅街の中にある東建設の本社は2階建て。本社内では様々な場所に絵画が飾られている。2024年秋に本社1階の応接室をリノベーションした。

設計から施工まで一気通貫のサービスを提供 地元の活性化につながる事業の依頼も多い

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東建設の中村秀岐取締役・統括部長

東建設は30年以上前にコーポレートカラーを青と定め、現場ユニフォームなどに取り入れてきた。青色が見る人に安心感を与えるとされる効果に着目したという。国土交通省、京都府、京田辺市と連携し、地震や台風などの災害で道路、水道などのインフラが破損した際は、真っ先に出動して復旧作業に従事する体制を整えている。「いざという時は、日ごろお世話になっている地域のお役に立てるよう全力で対応します」と表情を引き締めて中村取締役は話した。

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東建設の本社に掲示されている感謝状

東建設は、確かな施工管理のもと、設計から施工まで一気通貫のサービスを提供している。2013年に環境マネジメントシステムに関する国際標準規格、ISO14001と品質マネジメントシステムに関する国際標準規格、ISO9001を取得した。公共工事を事業の中心にする一方、60年以上にわたる地元での施工実績から民間の住宅や店舗の建築依頼も多数寄せられている。ベテランの建設技能員をそろえていることが高い品質の維持と信頼の獲得につながっているという。地元の情報発信につながる事業の依頼も多く、一休宗純ゆかりの酬恩庵一休寺(しゅうおんあんいっきゅうじ)で毎年秋に行われる薪能(たきぎのう)では、仮設舞台の設置を一手に引き受けている。観光振興用看板のデザインの考案を行うことも。また、地域貢献に力を入れ、地元の建設業協会と連携した駅周辺の清掃にも取り組んでいる。

2008年から2010年にかけて地元の業界の中で率先して施工管理システムと積算システムを導入

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土木工事専用の積算システムを使って積算する様子

東建設は、地元で建設業界向けの業務支援システムを率先して導入した企業として知られている。土木工事専用の施工管理システムと積算システムを2008年から2010年にかけて相次いで導入した。図面の作成は、施工管理システムと連動したCADを使うと同時に依頼主の要望に合わせて手書きでも行っている。

施工管理システムは、施工計画から納品に至る工程での高い連動性を備え、管理業務の効率化に効果を発揮している。また、最適な単価や歩掛りなどのデータを豊富に搭載し、積算ミスを防ぐ機能を備えた積算システムは、迅速かつ正確に積算業務を行う上でなくてはならない存在になっている。従来の手作業(紙と電卓)と比べ、積算時間が約5分の1に短縮された。「人口減少による業界の人手不足はこれからますます深刻化していきます。業務効率化を可能にするデジタル技術の活用は課題解決の鍵の一つになると考えています」と中村取締役は話した。

従業員の視点からのメリットを考えて2023年、業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録

東建設は2023年、国土交通省の主導で一般財団法人建設業振興基金が運営する業界のクラウドシステム、CCUSに登録した。現場を担当する従業員に顔写真付きのICカードとIDを付与し、一人ひとりの就業履歴を記録・蓄積できるようにしている。システムに登録した建設技能者は、働く現場や会社が変わったとしても所有する資格や実績を雇い主に証明できるので、自らの能力にふさわしい待遇や賃金を交渉できる。若い人材を今後、採用・育成していく上で、キャリアを可視化できるメリットの大きさを従業員の視点から考えて登録を決断したという。

登録者が所有するICカードの帯の色には白、青、シルバー、ゴールドの種類があり、それぞれ初級、中級、職長、高度なマネジメント能力所有者の技能レベルを示している。東建設では中村取締役らが「ゴールドカード」を所有している。「ICカードの色の違いは、一目で自らのレベルをわかりやすく証明できるので、従業員が上のレベルを目指すモチベーションの向上に効果があるように思います」と中村取締役。現場からの出退勤時にICカードを使うことによって、勤怠管理業務を効率化することもできる。同じくCCUSを活用している取引先の大手建設会社からの評価も高まったという。

企業向けのホームページ作成システムを導入して会社の情報を積極的に発信 将来の担い手にアピールしていく

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ホームページ作成システムを活用して編集作業を行う様子

将来の会社の担い手となる世代に関心を持ってもらう上で重要な、会社の実績を情報発信する取り組みにも力を入れている。ホームページを活用して情報を機動的に発信していくために2023年10月に導入したのが、企業向けのホームページ作成システムだ。システムは豊富なテンプレートを搭載し、編集やプログラムの専門知識がなくても直感的な操作でホームページを編集できる機能を備えている。パソコン向けに作成したページをスマートフォンからの閲覧に適したサイズに自動変換する機能も備えているので、手間をかけずに更新作業ができる。

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東建設のホームページ

ホームページには、会社案内、事業案内に加え、施工実績や保有する建設機械を豊富な画像と共に掲載。採用専用のページも設け、雇用形態、職種、募集内容、給与、賞与、諸手当、勤務時間、休日・休暇、待遇・福利厚生などの情報を掲載している。ホームページを開設してから求人応募の件数の増加やこれまで取引のあった大手建設会社から新たな工種での依頼が寄せられるといった様々な効果が生まれているという。「情報発信のノウハウを蓄えた上で、地域の魅力をコンテンツ化するなど、ホームページの内容を更に充実することも検討しています。土木の仕事の大切さや魅力を発信できるよう頑張ります」と中村取締役は話した。

UTM機器を導入して重層的なネットワークの防御体制を構築 従業員のセキュリティー意識の向上も図る

インターネットを通じて扱う情報が急激に増加していることを受けて2024年11月には、ファイアウォール、IPS(侵入防止システム)、Webフィルタリング、アンチウイルス、スパムメール対策、アプリケーション制御といった様々なセキュリティー機能を統合したUTM機器(統合脅威管理)を導入した。以前は従業員一人ひとりのパソコンにセキュリティーソフトを搭載していたが、UTM機器を導入したことによってより重層的な防御体制を構築することができたという。「設備面での体制を整えるだけでなく、従業員一人ひとりに怪しいメールは開かないようにするなど情報管理に対する強い意識を持つよう常に呼びかけています」と中村取締役。

建設機械へのICT機能の後付けやドローンの活用を視野に入れる

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東建設の本社の外観
地元ファーストでインフラ整備に取り組む デジタル技術を活用して新しいワークスタイルへ 東建設(京都府)
敷地は自然豊かな竹林に囲まれている

東建設は今後、ICT施工を条件とした工事件数の増加が見込まれることからICT建設機械の活用にも目を向けている。ICT建設機械の新たな購入は大きなコストがかかることから現在はリースで対応しているが、今後は従来の建設機械にICT機能を後付けできる機器を導入することを考えている。また、ドローンを活用した三次元測量の導入も検討している。「高度経済成長期に整備したインフラの老朽化や農地の維持に必要な農道の整備など、地域の持続可能性を確保する上で取り組んでいかなければならない課題は山積しています。課題の解決に貢献できるように新しい技術の導入に積極的に取り組み、高品質の工事を通じて地域の暮らしをこれからも支えていきます」と中村取締役は力強く語った。

企業概要

会社名株式会社東建設
本社京都府京田辺市多々羅東平川原30
HPhttps://azuma-const.co.jp
電話0774-63-0405
設立1984年5月(創業1964年)
従業員数16人
事業内容  道路構築、造成、管渠(かんきょ)敷設の各種土木工事、上下水道給水、配水本管工事、上下水道施設工事他(指定給水装置業者、排水設備指定工事業者) 京田辺市、八幡市、久御山町公認